Interviewインタビュー

医師としての原点から、チーム医療を支える未来像まで

相生山ほのぼのメモリークリニック

院長 松永 慎史

地域に根ざした医療を提供し、認知症をはじめとする高齢者医療に力を注ぐ松永先生。勤務医として数多くの患者さんと向き合うなかで感じた課題や、ご家族との実体験をきっかけに「認知症、からだ、こころの悩みを総合的に相談できるクリニック」を目標に、開業を決意しました。現在はスタッフと共にチーム医療を実践し、地域に信頼されるクリニックづくりに取り組んでおり、2025年12月からは名古屋市の認知症疾患医療センターを開設する予定です。今回のインタビューでは、医師を志した原点から、開業への思い、そしてこれから描く未来像について伺いました。

地域に寄り添う認知症医療――松永先生が語る開業の想いとこれから

医師の道を選んだ原点

まずは、松永先生が医師を志されたきっかけについてお聞かせいただけますか?

実は、医師になろうと決めたのは、高校を卒業する頃でした。当時から医師として人の役に立ちたいという気持ちもありました。一方で、環境問題にも興味があり、研究者になりたいという気持ちもありました。最終的に医師の道を選んだのは、育ての親だった祖母からの「お医者さんになって、困った人を助けてほしい」という一言がきっかけでした。高齢になった祖母のためにも、高齢者医療に貢献できる医師になろうと決意しました。

親御さんも医師をされていたそうですが、ご自身の意志で決断されたのですね。

そうですね。両親が医師だったこともあり、医師という選択肢は常に頭の中にありました。開業医として働く父と、大学教授として働く母を見て育ったこともあり、自然と受け入れることができました。

開業という道を選ばれたのはなぜでしょうか?

勤務医として、認知症の専門医として多くの患者さんやそのご家族をサポートしてきました。その中で、認知症の治療には、医師だけでなく、看護師、心理士、精神保健福祉士、ケアマネジャー、訪問看護師、地域包括支援センターなど、多職種や他業種との連携が不可欠であることを経験しました。当時、大学病院に勤務していましたが、組織が大きすぎてフットワークが重く、患者さんやそのご家族により良い医療を提供することに限界を感じていました。そこで、もっとコンパクトで、患者さんとご家族のために自由な医療を提供できるクリニックを作りたいと考えました。

信頼されるクリニックへの歩み

開業されてから、クリニックの経営で苦労したことはありますか?

一番苦労したのは、スタッフの確保です。精神保健福祉士や心理士といった専門職は特に集まりにくいのですが、幸いにも開業当初、コンセプトに共感してくれた経験のあるスタッフが集まってくれました。現在も、本当に良いスタッフに恵まれ、とても感謝しています。

院内を拝見しましたが、温かみのある内装でとても驚きました。ウェブサイトも充実していて、集患にも力を入れている印象です。

ありがとうございます。内装はデザイナーさんに「ほのぼのとした雰囲気で」とお願いし、患者さんがリラックスできるような空間を目指しました。 集患については、ウェブサイトやリスティング広告など様々な媒体を活用しています。特に、認知症で困るのはご本人だけでなく、そのご家族のことも多いです。どの世代にも当院を知っていただけるように、ウェブサイトには力を入れています。初期投資は高額でしたが、その分、質の高いウェブサイトができたと自負しています。

認知症医療の拠点として果たす使命

認知症疾患医療センターとして、具体的にどのような活動をされていますか?

2025年7月に名古屋市の認知症疾患医療センターの公募・選定があり、名古屋市の審査・選定の結果、当院が契約候補者となりました。2025年12月から、認知症疾患医療センターを開設する予定です。現在は、そのための準備を進めている段階です。具体的な活動としては、地域の方々が気軽に相談できる認知症の医療相談窓口の設置や、認知症に関する啓発活動、そして地域の利用機関と連携して、より専門的な診断と治療を提供していく予定です。

地域包括支援センターやケアマネジャーとの連携はどのように行っていますか?

開業当初から、地区の医師会の計らいで、名古屋市緑区の認知症専門部会に所属させていただいています。これにより、地域包括支援センターやケアマネジャーの方々とのつながりができ、スムーズな連携が可能になりました。 当クリニックが認知症疾患医療センターを開設することで、地域の専門的な医療機関として、より密な連携を築いていきたいと考えています。

多職種が支えるチームづくりと人材育成

働くスタッフに求めることは何ですか?

当クリニックでは、患者さんやそのご家族を支える「チーム医療」を大切にしています。そのため、自分の専門分野だけでなく、他の職種の仕事にも理解を持ち、連携を深められる方を求めています。

スタッフの教育やモチベーション維持のために、どのような工夫をしていますか?

多職種のスタッフがいるため、全員がスムーズに連携できるよう、教育にも力を入れています。入職後2週間は、各セクションを回って業務内容を学んでもらう期間を設けています。心理士や精神保健福祉士など専門職の仕事内容を理解することで、お互いに協力しやすくなります。 また、電子カルテのシステムは現在も進化させており、将来的にはスタッフがより効率的に業務を行えるようなAIツールも導入していきたいと考えています。

地域の変化に応えるこれからの医療

多くの患者さんが来院されているとのことですが、どのような患者さんが多いのでしょうか?

当クリニックは、主に認知症や高齢者の精神疾患、内科の患者さんを診ています。ウェブサイトでも認知症に特化していることを前面に出しているため、自然と高齢の患者さんが多くなっています。

患者さんの診察において、先生が最も大切にされていることは何でしょうか?

患者さんご本人の病状だけでなく、ご家族の状況や生活環境全体を把握することを大切にしています。ご家族の中には、患者さんのために無理をして頑張りすぎて体調を崩される方も少なくありません。患者さんとご家族、双方が健康に過ごせるように、無理のないバランスを見つけることが重要だと考えています。 例えば、ご家族が全て介護しなくても、介護保険制度を上手に使えば、ご家族の介護負担を減らすことができます。ご家族が多忙で、患者さんの1日3回の服用が支援できない場合でも、症状によっては1日1回の服薬に減らすことや、介護サービスを導入して服薬管理を支援してもらうこともできます。

これから描く医療の未来像

先生の今後の展望についてお聞かせください。

高齢化が進み、多忙な現代において、誰でも気軽に相談できる、高齢者の包括的な窓口の必要性を感じています。おかげさまで、2025年12月からは名古屋市の認知症疾患医療センターを開設する予定です。今後も地域に密着し、地域の医療機関や介護事業所の皆様と連携して、患者さんやそのご家族に信頼される医療機関を目指して、質の高い医療を提供していきたいと考えています。また、将来的には、医療や介護など、高齢者やそのご家族が抱えるあらゆる悩みにワンストップで対応できるようなサービスを提供したいと考えています。

Profile

院長 松永 慎史

相生山ほのぼのメモリークリニックの院長・松永先生は、「地域に根ざし、認知症の方とそのご家族を支える医療を届けたい」という思いを胸に診療にあたっています。大学病院の勤務医として認知症医療に携わるなかで、医師だけでは認知症の方とそのご家族をサポートすることが難しく、多職種によるチーム医療の重要性を痛感しました。より認知症医療に特化した、多職種と連携したチーム医療を実践するために、2020年に「相生山ほのぼのメモリークリニック」を開院。2025年12月からは名古屋市の認知症疾患医療センターを開設する予定となっています。今回は、松永先生に医師を志した原点から開業への思い、そして未来に描くビジョンについてお話を伺いました。

会社情報

医院名

相生山ほのぼのメモリークリニック

設立

2020年