Interviewインタビュー

地域に寄り添う整形外科医が語る、超音波診療の可能性と未来

わだ整形外科クリニック

院長  和田 誠

大阪府枚方市で地域医療に貢献されている、わだ整形外科クリニックの院長、和田 誠 先生にお話を伺いました。地域の方々だけでなく、プロのアスリートからも信頼される、超音波を用いた先進的な診断と治療、そして新たな医療への挑戦について、熱い思いを語っていただきました。

常識を疑え。トップアスリートも頼る超音波診断の極意—わだ整形外科クリニック・和田誠院長が挑む次世代の痛み治療

医師を志した原点と地域医療への思い

まず、先生が医師を志されたきっかけについてお聞かせください?

高校生の頃、十二指腸潰瘍を患ったことがきっかけです。近所の開業医の先生に診ていただいた際、症状が改善しただけでなく、病状について丁寧で分かりやすい説明を受け、その姿勢に大きな感銘を受けました。その経験から、人の痛みを和らげ、地域に貢献できる医師という職業に強い憧れを抱きました。

地域に根ざした開業医を目指す思いは、当初からあったのでしょうか?

はい、最終的な目標は地域で開業することでした。勤務医では転勤などにより患者さんとの関わりが一時的になりがちです。そうではなく、地域で困っている方がいつでも頼れる存在として、長く寄り添いたいと考えてきました。この信念は現在も変わっておらず、35歳で開業してから22年間、一貫してその思いを大切にしています。

専門分野と診療スタイルのこだわり

先生の専門領域と、特に力を入れている診断・治療について教えてください。

専門は整形外科で、特にスポーツ障害と超音波(エコー)を用いた診断・治療に注力しています。多くの患者様は、痛みが長引き複数の病院を受診してから当院へ来られます。その背景には、痛みの原因が正しく評価されていないことが少なくありません。勤務医では多忙のため超音波検査を十分に行えない場合も多いのが現状です。私は時間を惜しまず、超音波で原因を丁寧に特定し、納得いただける診断と治療を心がけています。

具体的にはどのような治療を行っていますか?

超音波ガイド下でのピンポイント注射を用い、従来の治療で改善が難しかった症状にも取り組んでいます。ハイドロリリースやPRP(多血小板血漿)療法といった新しい手法も積極的に導入しています。単なる痛み止めの処方にとどまらず、「なぜ痛むのか」を明らかにし、根本にアプローチすることが当院の理念です。

診療の際に特に意識していることはありますか?

患者様の痛みを確実に取り除くために、妥協せず時間をかけて診察・治療を行うことです。超音波診断は集中力を要するため、どうしても時間がかかりますが、そこは譲れません。現在は予約体制を工夫し、待ち時間を抑えながら質の高い診療を維持できるよう努めています。

これまでの歩みとこれからの展望

クリニック経営で最も苦労されたことは何でしょうか?

やはりコロナ禍です。職員を抱える以上、収益が減っても給与などの責任は果たさなければなりません。その中で経営をどう維持するかが大きな課題でしたが、工夫を重ねて何とか乗り切ることができました。

逆に、医師としてやりがいを感じる瞬間はどんな時ですか?

プロ野球選手やJリーガーといったトップアスリートに頼っていただける時です。彼らが最高のパフォーマンスを取り戻すサポートができることは大きな喜びです。また、研究活動が評価された時もやりがいを感じます。肉離れの診断と分類法に関する研究で学会賞を受賞した際は、経験的な治療を超音波で客観的に評価し、再現性ある方法として確立できたことに大きな達成感がありました。その後は早稲田大学の研究員としても活動の場が広がりました。

それでは、今後2〜3年のビジョンを教えてください。

短期的には超音波の普及と新しい治療法の確立に力を注ぎたいと考えています。整形外科医が当たり前に超音波を使える環境を広げ、さらに応用的な手技や評価法を開発していきたいです。また、質の高い医療を実現するため、保険診療と自費診療の両立を図り、患者様に最適な治療を選んでいただける体制を整備したいと思います。

最後に、将来開業を目指す医師へメッセージをお願いします。

「手術だけにとらわれず、病態を正しく評価する技術を身につけてほしい」ということです。MRIなど静止画像だけでなく、超音波を用いて動的に病態を確認し診断する力が重要です。この技術と解釈を習得すれば、患者さんの痛みを根本から改善でき、医師として大きな達成感を得られるはずです。それが、開業を続けていく上での強いモチベーションにもなるでしょう。

Profile

院長  和田 誠

わだ整形外科クリニックの院長、和田誠先生は、平成6年に奈良県立医科大学医学部を修了。奈良県立医科大学および関連病院で研鑽を積み、平成16年に大阪府枚方市で開業しました。令和2年には同大学大学院で医学博士号を取得し、膝関節注射に関する研究論文が国際誌JBJSに掲載され、さらにEssenntial Surgical Techniqueに選出されるなど高い評価を受けています。また、筋損傷の超音波評価研究では、論文がスイスの医学雑誌の表紙に取り上げられるなど国際的にも注目されています。 学術活動として中之島運動器研究会を設立し、研究員(リサーチフェロー)として早稲田大学スポーツ科学研究科で活動、スポーツ医学研究センター招聘研究員を務められています。平成27年には日本臨床スポーツ医学会で学会賞を受賞し、大腿直筋肉離れに関する超音波診断と復帰時期に関する研究が高く評価されました。 社会活動としては、大阪マラソンや東京オリンピック自転車競技での医務活動、さらにJFL所属のFC TIAMO枚方のチームドクターとしてスポーツ現場を支え続けています。

会社情報

医院名

わだ整形外科クリニック

設立

2004年