Interviewインタビュー

医師を志した原点から、札幌での開業、そして予防医療への情熱

ひらた内科・内視鏡クリニック

院長 平田 幸司

ひらた内科・内視鏡クリニックは、札幌市にて消化器内科を中心に内視鏡検査や膵臓・胆道疾患の診療、さらに一般内科まで幅広く対応しているクリニックです。高精度な検査技術と、患者一人ひとりに丁寧に寄り添う診療姿勢は、地域の方々から大きな信頼を集めています。 今回のインタビューでは、同院を開業された平田幸司院長に、医師を志した原点から札幌での開業に至るまでの歩み、そして予防医療や早期発見に込める思いについてお話を伺いました。

ひらた内科・内視鏡クリニック 平田幸司院長インタビュー|札幌から挑む“膵臓疾患の早期発見”への想い

医師を志した原点と開業への道のり

さっそくですが、先生が医師を志すことになったきっかけを教えていただけますか?

私は子どもの頃に小児喘息を患っていて、よく近所のクリニックに通っていました。そこで出会った先生が本当に頼もしい存在で、苦しい時に助けてもらえたことが強く心に残っています。「人を支えられる仕事っていいな」と、その時に思ったんです。父も医師でしたので、医療はとても身近でしたし、自然と自分もこの道に進みたいと感じていました。学生時代にはサッカーや野球もしていましたが、医師になることを目標に勉学にも励んでおりました。

なるほど。では、開業を考えるようになったのはどうしてですか?

私は消化器内科を専門に、多くのがん患者さんを診てきました。特に膵臓がんは非常に発見が難しく、見つかった時には進行していることが多いんです。ただ、早期に見つけて治療につなげられた患者さんが元気に過ごされる姿を見て、大きなやりがいを感じました。「病気をひどくなる前に防ぎたい」「早く見つけて救いたい」という気持ちが強くなったんです。北日本では膵臓がんの早期発見の取り組みがまだ広がっていないと感じていましたので、自分で行動を起こそうと思いました。勤務医では限界がありましたから、思い切ってクリニックを立ち上げました。昨年10月15日に開院し、今は予防医療にも力を入れています。

ご自身の専門領域についても教えてください。

専門は消化器内科です。その中でも特に膵臓や胆道のがんを中心に診ています。

クリニックではどんな診療をされているんですか?

内視鏡検査や膵臓・胆道の専門診療に加えて、風邪や体調不良といった一般内科の患者さんも多く来られます。地域の皆さんが安心して立ち寄れるクリニックでありたいと思っています。

診療のときに大切にしていることはどんなことですか?

患者さん一人ひとりのリスクに合わせて診察することです。家族に胃がんの方がいれば胃を中心に、糖尿病や肥満、喫煙歴がある方や膵臓がんの家族歴がある方は膵臓をしっかり診ます。病気が進行する前に防ぎ、早く見つけて治すことを常に意識しています。また、必要性を理解していただくために最新の文献を提示することもあります。札幌には勉強熱心な患者さんが多いので、とても役立つ方法だと感じています。

スタッフとの歩みと開業後の挑戦

スタッフ採用は大変でしたか?

思っていたよりも順調でした。これまで退職した方は一人もいません。本当にありがたいことです。

どのように採用を進められたんですか?

知り合いやご縁を大切にしました。その人がどんな働き方をするか想像しやすいからです。今のスタッフの多くは大学時代からのつながりや、知人の看護師さんに紹介していただいた方々です。パートさんについてはハローワークを利用しました。札幌駅近くという立地が良く、応募が多かったので、勤務条件をしっかり設定することができ、理想的な人材に来ていただけました。

スタッフの教育についてはどうされていますか?

私が細かく指示を出すのではなく、常勤の看護師にお願いして、そこから他のスタッフに伝えてもらっています。看護師の仕事は看護師同士の方が伝わりやすいですし、接遇については私自身が正しい対応を示すことを意識しています。最低限の研修は行いましたが、日常の姿を見せることの方が大切だと思っています。口コミで星5をいただいているのは、スタッフの努力のおかげです。

開業して一番大変だったことは?

集患ですね。開業したばかりの頃は患者さんがなかなか来ず、焦りました。想定していた40〜60代の方よりも、20〜30代の若い方や風邪の患者さんが多く、ターゲットとのズレを感じました。SEO対策やポータルサイト掲載、ジムにチラシを置かせてもらうなど試しましたが、思うような結果は出ていません。今も新しい方法を探しています。

その中でも嬉しかった瞬間は?

やはり患者さんから感謝の言葉をいただいたときです。特に早期の膵臓がんを見つけて適切な医療機関におつなぎし、「おかげで助かりました」と言っていただけた時は、本当にやっていてよかったと思いました。予防医療の理念を実現できた瞬間でもあります。また、開業してからは家族との時間が増えました。勤務医時代は当直やオンコールで落ち着けませんでしたが、今は家族と夕食を囲み、一緒に過ごせるようになりました。

今も苦労していることはありますか?

集患とターゲット層とのミスマッチです。開業初期は患者数が少なく、給料やリース料、家賃など経費が大きな負担になりました。資金が減っていくのは本当に不安でした。1年経ってようやく収支は安定してきましたが、この経験から「開業資金は多めに借りるべきだ」と実感しました。

クリニック経営に込める考えと未来像

先生の経営に対する考え方を教えてください。

経営理念と呼べるほど立派なものはありませんが、常に「コストを下げること」と「単価の高い医療サービスを増やすこと」を意識しています。すべての支出を比較し、不透明なコストをなくすようにしています。

今後2〜3年でどんなクリニックにしたいですか?

一般内科の割合を少し減らし、内視鏡検査や膵臓疾患の患者さんをしっかり診られる体制を整えたいです。膵臓のフォローアップをしているクリニックは少ないですし、病院も患者さんでいっぱいなので、その役割を担える存在になりたいです。将来的にはMRIを導入して、いずれは札幌や北海道全体から患者さんが集まる膵臓専門施設を作ることが夢です。

経営者として大切にしていることはありますか?

「人の役に立ちながら収益を安定させる」ことです。ただし、医学的に根拠のない施術や流行に乗っただけのものには絶対に手を出しません。自由診療であっても、患者さんのためになる検診や膵臓ドックのようなサービスを適正な価格で提供することを大切にしています。

診療で出会いたい患者さんと今の状況

どんな患者さんに来ていただきたいですか?

内視鏡検査を必要とする40〜60代の方を中心に、膵臓や胆道にリスクを抱える患者さんに来ていただきたいです。定期的なフォローアップを通じて、大きな病気を防ぐお手伝いをしたいと考えています。

現状の患者さんはどういう方が多いですか?

今は一般内科の患者さんが多いです。もちろん大切に診療していますが、今後は内視鏡検査や膵臓疾患の患者さんを増やし、全体の患者数をさらに伸ばしていきたいです。

これから開業を目指す仲間へのメッセージ

これから開業を目指す先生にアドバイスをお願いします。

運転資金をしっかり準備することです。開業直後は患者さんがすぐには来ませんので、資金の余裕がなければ乗り越えられません。資金計画書の作成と銀行へのプレゼンテーションに力を入れることを惜しまず、可能な限りの運転資金を借りることをおすすめします。

逆に、やらない方がいいことはありますか?

コンサルタントにすべて任せきりにしないことです。癒着のある契約や不透明な見積もりを提示されることもありますから、自分の目で確認し、判断することが必要です。土地や物件選びも他人任せにせず、自分の診療スタイルに合うかどうかをしっかり考えるべきです。

これから開業を考えている先生や同じ立場の先生にメッセージをお願いします。

今の開業医の環境は決して楽ではありません。でも、「自分はこういう医療をしたい」という強い思いがあれば必ず乗り越えられます。私自身もその思いに支えられてきました。熱い志を持つ仲間が増えれば、地域医療はもっと良くなると信じています。

最後に、先生ご自身の夢を教えてください。

短期的にはMRIを導入して、より精密な診断ができる環境を整えたいです。長期的には、札幌や北海道全体から患者さんが集まり、膵臓の早期発見やフォローアップができる専門施設をつくることが夢です。まだ道半ばですが、一歩ずつ形にしていきたいと思っています。

Profile

院長 平田 幸司

ひらた内科・内視鏡クリニックの院長、平田幸司先生は、2012年3月に北海道大学医学部医学科を卒業後、苫小牧市立病院で研修をスタートしました。その後、網走厚生病院、JCHO札幌北辰病院、北海道大学病院、札幌北楡病院、市立函館病院など、北海道各地の基幹病院で豊富な臨床経験を積まれました。特に消化器内科領域において、内視鏡診療や膵臓・胆道疾患の診療に力を注ぎ、地域医療に尽力されています。2023年からは再びJCHO札幌北辰病院に勤務し、2024年4月には市立札幌病院でも診療に従事。さらに同年10月、「ひらた内科・内視鏡クリニック」を開業しました。長年の経験を活かし、患者一人ひとりに寄り添いながら、予防医療と早期発見に力を注ぐことを大切にされています。

会社情報

医院名

ひらた内科・内視鏡クリニック

設立

2024年