Interviewインタビュー

地域に根差した「町全体がひとつの病院」を目指す、こんどうファミリークリニック 近藤 啓介院長のビジョン

こんどうファミリークリニック

院長 近藤 啓介

愛媛県四国中央市に、地域との連携を大切にしているクリニックがあります。それが、2024年10月に開院した「こんどうファミリークリニック」です。院長の近藤 啓介先生は、総合診療医として、これまでに愛媛県立中央病院、徳島大学医学部附属病院、HITO病院、田岡病院、吉野川医療センターなど、様々な医療現場で経験を積んできました。地元での開業は、単なるクリニック運営に留まらず、地域全体の医療体制を強化するという強い思いから来ています。今回は、近藤先生の医師を志したきっかけから、先進的な医療システムの導入、そして地域に求められるクリニックを目指す熱い想いに迫ります。

地域医療への熱い想いと先進的な取り組み–こんどうファミリークリニック 近藤 啓介院長に聞く

ご家族から受け継いだ医療への想い

まずは、近藤先生が医師を志されたきっかけから教えていただけますか?

私は母が看護師だったり、親戚にも看護師や医療関係の者が多く、もともと医療が身近な環境で育ちました。そのため、医学の道に進むことは、私にとって自然なことだったように感じています。大病を患ったなどドラマのような大きな出来事があったわけではないです。体は極めて丈夫です(笑)。

ご家族の影響が大きかったのですね。高校生など、具体的な時期はありましたか?

物心ついた頃から、漠然と「人に関わる仕事、人のために何かをする仕事をするだろう」とは思っていました。その後、年齢を重ねるにつれて、具体的な職業として医師という道が明確になっていったという感じです。

地元での開院、その動機と継承の決断

地元である四国中央市でこんどうファミリークリニックを開院された経緯は?

地元で医療に貢献したいという思いは、医学部にいた頃からずっと心のどこかにありました。いつか人生のどこかのタイミングで実現したいと思っていました。 開院の直接的なきっかけはいくつかありますが、一つは、親が退職後にデイサービスの事業を始めたことですね。気づいたら、親のところに高齢者の方がたくさん集まってきていて、「息子さんお医者さんなの?いつ開業するの?」といった感じになっていました。病院が少ない地域でもあり、「よし、自分がやる!」という気持ちになっていきました。 もう一つは、クリニックがもともと「青野医院」という病院だったのですが、青野先生が引退されるということで、次の担い手を探されていたんです。私もいつかは開業という思いが漠然とありましたが、一から全てを始めるのは難しいと考えていました。そんな中、「近藤先生、自由に使ってください」というお話をいただきまして。これはすごいチャンスだと。一からすべてを自分で作るよりも、地域に根付いた場所を引き継ぎ、育てていく方が、地域にとって良いと考え、この機会を活かしたいと思いました。

開業されてから、まもなく1年(2024年10月現在)が経とうとしていますね。現在は先生を含め、10名程度のスタッフで診療にあたっていると伺いました。

はい、おかげさまでちょうど1年になります。スタッフは現在10名で、ハローワークで募集しました。良い方々が集まってくれて、運が良かったと思います。

診療におけるこだわりとAIサポートの導入

先生が日頃の診療で、特に意識されている点、患者様に対して注意されていることはありますか?

院長になったことで、患者様はもちろん、スタッフにも不要な緊張感を与えないようにこれまで以上に気をつけるようになりました。特に私は気がつくと早口になることが多く、意識的にゆっくり話すようにしています。もちろん待ち時間を少なくするためにテキパキと動く必要はありますから、迅速な対応と、柔らかい雰囲気のバランス感覚を大切にしています。

医療技術の進化はめざましいものがありますが、先生が導入されて良かったと感じているシステムやサービスはありますか?

はい、いくつかあります。一つは、電子カルテと、予約から決済までアプリ内で完結する予約アプリです。これらのシステムがスピーディな診療を支えてくれています。もう一つは、ビジネスチャットアプリの導入です。これは地域の訪問看護ステーションとの連携に役立っています。在宅医療は遠隔での指示が多いため、コミュニケーションの質が医療の質と直結します。在宅医療をするにあたって、どのように密な連絡を取り合うかが最初の課題でした。アプリだと電話では難しい画像の共有なども簡単にできます。診療面では、AIサポート付きのレントゲンを導入しています。最終的な診断は医師である私が行いますが、AIという「もう一人の医師」が隣にいるような感覚で、様々な角度から確認できるのは、非常に心強いです。今後は心電図やエコーなど様々な分野でもAIが活躍していくと思います。楽しみです。

地域に求められるクリニック、近藤院長のビジョン

開業されてから今日までで、最も「開業してよかった」と感じる瞬間はどんな時ですか?

やはり、地元で開業したことで、卒業以来の同級生や、お世話になった先生方が訪ねてきてくださったりすることですね。地域に根差して診療していることを実感できますし、そういった再会は本当に嬉しいです。

近藤先生が、クリニックの運営において大切にしている理念や、軸があれば教えてください。

患者様やご家族様がこの町で安心して過ごせるようになることです。特に最近は、「自宅で最後まで過ごしたい」という在宅医療へのニーズが高まっています。私もそのニーズに応えたいと在宅医療には力を入れています。がんセンターなどから終末期の患者様のご紹介をいただく機会も増えてきました。「今後は退院して、自宅での治療を希望されています」という内容の紹介です。ご自宅に訪問した時によく聞くのは、「やっぱり自宅はいい!」という言葉です。その気持ちを持ち続けられるように、また自宅で安心して良い時間を過ごせるように在宅医療の質を高めていきたいです。

最後に、今後2~3年後のクリニックのビジョンについてお聞かせください。

「町全体がひとつの病院」というイメージで地域医療に取り組んでいます。具体的には、クリニックは外来、薬局は薬剤部、訪問看護ステーションは病棟看護師、ケアマネは医療相談室、そして自宅が病室です。1人でできることには限界がありますが、多くの事業所と連携することで大きな力になります。特に医師は、チーム医療の中でリーダーとしての役割が期待されています。地域で求められている役割を果たしながら、少しでも良い未来に貢献できればと思います。

Profile

院長 近藤 啓介

こんどうファミリークリニックの院長、近藤 啓介先生は2017年3月に徳島大学医学部医学科を卒業後、愛媛県立中央病院で初期研修を積みます。その後も徳島大学医学部附属病院 総合診療部、HITO病院 総合診療科、田岡病院 救急科、吉野川医療センター 小児科・総合診療科など、多岐にわたる医療機関で経験を積み、総合診療医としてのキャリアを築いてきました。2024年10月、地元である四国中央市に「こんどうファミリークリニック」を開院。総合病院での勤務を通じて、地域の医療体制における課題を痛感し、自宅近くで質の高い医療を提供することで、患者様やそのご家族の負担を軽減したいという強い想いを抱いています。地域医療への深い愛情と、患者様の生活全体を支える医療の提供を理念として、日々診療にあたっています。

会社情報

医院名

こんどうファミリークリニック

設立

2024年