信頼の歯科技術と教育への情熱–さくら通りみなみ歯科医院 南 一郎 院長インタビュー
2025.11.18
信頼と安心、そして幸福な噛み合わせを追求する
さくら通りみなみ歯科医院
院長 南 一郎
さくら通りみなみ歯科医院は、千葉県浦安市堀江にある、患者様の安心と質の高い医療を追求する歯科医院です。院長の南一郎先生は、長年にわたり東京医科歯科大学で補綴(ほてつ)を専門に研究・教育・臨床に携わってこられた経験を活かし、「安心安全、質の高い医療の提供」を理念に地域医療に貢献されています。特に、失った歯の機能を回復させる補綴分野、中でも義歯(入れ歯)の専門家として、患者様が再び心から「食べられる」喜びを取り戻すための治療に力を注いでいます。今回は、南先生が歯科医師を目指されたきっかけから、開院に至るまでの経緯、そして先生が描く歯科医療の未来について、詳しくお話を伺いました。
—まずは、南先生が歯科医師を志すことになったきっかけと、補綴という専門領域を選ばれた理由をお聞かせください。
私は元々、医学部志望でした。しかし、ちょうどその頃、祖父が歯の具合を悪くして入れ歯で食べられなくなってしまい、あっという間に寝たきりになってしまったのです。親戚にいた入れ歯専門のおじが祖父の入れ歯を直して口に合うように調整したところ、祖父は再び食べられるようになり、みるみるうちに回復して寝たきりから起き上がって食事が取れるまでになったのです。この光景を目の当たりにして、「これからはやはり、歯科で食べられるということが大きなインパクトを出していくのではないか」と感じ、技術をもって明確な違いを出せる歯科医療を目指すようになりました。これが歯学部に進み、さらに部分入れ歯を専門に選んだスタートにもなっています。
—先生の専門領域である「補綴(ほてつ)」とは、どのような治療分野なのでしょうか?
私の専門は補綴(ほてつ)で、これは噛み合わせをつくることが専門です。具体的には、歯がないところに歯を入れて、正しい噛み合わせをつくっていくことを得意としています。先に申し上げた祖父の件もそうですが、「食べられる」「噛める」という機能の回復に直結する分野です。
—補綴の専門家として、診療時に特に意識されていることや、患者様とのコミュニケーションで大切にされている点はありますか?
当然ながら、当院は日本補綴歯科学会の専門医・指導医を育成する機関としても認定されていますので、その知識と技術をベースにした質の高い治療計画を実践しています。それに加えて、私個人としては、専門領域に偏った考え方で患者さんに治療を提案しないことを常に意識しています。患者さんの立場、考え方、そして経済状況も含めて、「自分だったらどうしてほしいか」という視点に立って提案すること。これが私のモットーです。
—東京医科歯科大学で18年間もの長い期間、臨床・研究・教育に携わられた中で、開院を決意されたのはなぜでしょうか?
大学では18年間にわたり、臨床・研究・教育のすべてに関わることができ、大きなやりがいと楽しさがありました。学生や若手の先生方を指導したり、研究を通じて国内外の方々と交流したりすることも充実しており、このまま大学でキャリアを積んでいく未来も考えていました。 一方で、歯科医療の世界では、CAD/CAMやCTを応用したデジタル技術が日進月歩で発展しています。ところが大学という組織では、最新の機器やシステムを迅速に導入することが難しい場合もあり、自分の臨床で取り入れたい技術と実際に使える環境との間にギャップを感じることが増えていきました。こうした点も、働き方を見直すきっかけになりました。
—その「制限」から解放され、開院を決意させた最も大きな要因は何だったのでしょうか?
やはり、自分の培ってきた技術や考え方を、より自由度の高い環境で実践したいという思いが強くなったことです。また、家族の教育環境や将来設計を考える中で、大学に残って新たなポジションを目指すよりも、自らの裁量で経営しながら診療の質を追求していく道の方が現実的であると感じました。さらに、開業に必要な資金調達をしやすい年代的なタイミングでもあったことが、決断を後押ししました。
—開院から現在までを振り返り、特に嬉しかったエピソードや、やりがいを感じる瞬間についてお聞かせください。
正直、苦労したというエピソードはあまり思い浮かびません。それよりも、今、患者さんに足を運んでいただき、信頼してお任せいただけていること自体が、この上ない幸せだと感じています。当院には歯科衛生士が7名、歯科助手、ドクターもいて、スタッフに恵まれていることにも日々感謝しています。患者さんにもスタッフにも「喜んで」もらうために何をするべきか考え、それを実行していくことが、私にとっての毎日の喜びです。
—さくら通りみなみ歯科医院様の基本的な経営理念についてお聞かせください。
当院の理念は、患者さんが大学病院に溢れている理由を考えた結果にあります。患者さんは、「安心安全で質の高い医療」を求めている。そのため、当院の目標は「安心安全、質の高い医療の提供」を第一とし、それを通じて「地域社会の発展に貢献する」ということを究極の目標としています。
—経営方針として、スタッフの皆様との連携で特に重視されている点はありますか?
最も重視しているのは、「スタッフの成長」、すなわち「接遇の向上」です。これはスタッフから患者さんに対してだけでなく、スタッフ間、そして私から皆へ、お互いに気遣いをし合える環境を一番大切にしています。質の高い医療は、チームワークから生まれると考えているからです。この理念と方針があるからこそ、スタッフは小さな判断であれば迷わず自分の裁量で行うことができ、それが良い循環を生んでいます。
—補綴治療におけるリスク管理について、患者様への責任としてどのように考え、対応されていますか?
患者さんへの責任を果たすため、特に大規模な治療でのリスク管理を徹底しています。例えば、被せ物(クラウン)を外すというシンプルな治療一つとっても、単に外して新しいものに変えるのではなく、リスクを徹底的に説明します。「虫歯を取ったら歯を抜く可能性が高くなるけれど、それでも進めますか?」など、起こりうる最悪の事態まで含めて情報提供した上で、患者さんと一緒に治療計画を進めていきます。こうすることで、患者さんとの間でトラブルになることがなく、質の高い医療を提供できているという実感を得ています。
—先生が描く、今後2、3年後のクリニックのビジョンや、先生にとっての「夢」についてお聞かせください。
私のビジョンは、大学で培ってきた経験を活かした補綴医の「人材育成」に尽きます。補綴の技術と知識を極めると、患者さんにとって本当に「幸せな方法」を提案し、実現できるようになります。その技術や、トラブルを回避できるリスク管理の手法を教え、実践できるドクターを育てたいのです。
—なぜそこまで人材育成に力を注がれるのでしょうか?
それは、「患者さんとトラブらない」医療を提供できるようになるからです。当院の治療方法を習得し、リスクを管理しながら高度な治療を提供できるドクターは、患者さんにも喜ばれ、自分自身も「患者さんのためになっている」という実感を持てます。この手法を極めれば、歯科医療に関しては無敵になれると信じているからです。この考えと技術を多くの人に伝え、実践できる医師を育てたいのです。
—厳しい開業環境の中で、これから開院を目指す先生方へ、南先生からアドバイスをいただけますでしょうか?
今の時代は、開院にかかる費用も高騰し、歯科医院の数も多いため、差別化が難しくなっています。開院するなら、まず「どういう武器をもってやるか」を明確にし、その武器を磨くことが一つ目のアドバイスです。そして二つ目は、「社会構造の変化」に対して敏感であることです。技術が優れていても、口コミで一つ評価を落とせば患者さんは来なくなります。このような社会であることを認識し、変化に対応する能力がないと、院長職は厳しいと言えるでしょう。
Profile
院長 南 一郎
南 一郎 先生は、2000年に東京医科歯科大学歯学部を卒業後、同大学大学院博士課程に進学され、2004年に博士(歯学)を取得されました。その後、同大学付属病院の義歯外来医員を経て、部分床義歯補綴学分野の助手、助教を歴任。その間、2010年4月にはオーストラリア・シドニー大学の客員研究員としても活躍されています。2013年には医局長、2016年には義歯外来医長を務めるなど、大学病院の中枢で長年にわたり臨床、研究、教育のすべてに尽力されました。そして、2018年4月に長年の経験と情熱を地域医療に還元すべく、さくら通りみなみ歯科医院を開院されました。大学病院で培われた高度な専門知識と技術を基盤に、患者様一人ひとりに寄り添った質の高い医療を提供し続けています。