Interviewインタビュー

病理診断の「あり方」を変える!LUMIPATH Clinic院長が描く、医師も患者も幸せになる医療システム

LUMIPATH Clinic

院長 四十物 絵理子

今回、札幌市中央区にクリニックを構えるLUMIPATH Clinic(ルミパス クリニック)の四十物 絵理子(あいもの えりこ)院長にインタビューを行いました。LUMIPATH Clinicは、これまで大病院や大学病院でしか専門的に行われてこなかった病理診断に特化したユニークなクリニックです。四十物院長は、自身の内科医としての経験と、その後の病理医としてのキャリアを通して、日本の医療が抱える構造的な課題、特に病理医不足と診断の質の格差に強く問題意識を抱かれてきました。 地域医療の現場で病理医が直面する過酷な状況、そして何よりも患者様にとって質の高い診断を確実に提供したいという強い使命感から、デジタルの力を活用した新しい形の病理診断ネットワークを構築するという大きなビジョンを掲げて、2024年にLUMIPATH Clinicを開業されました。本記事では、四十物院長が抱く医療への熱い思いや、開業に至るまでの道のり、そして日本の医療がより良くなるための未来図について、詳しくお話を伺いました。

医療の未来をデジタルで切り拓く!病理診断の課題に挑む熱い思い–【LUMIPATH Clinic】四十物 絵理子 院長インタビュー

内科医から病理医、そして開業へ

さっそくですが、医師を目指されたきっかけと、内科医から病理医への転向を決めた理由についてお聞かせください。

もともと、幼い頃にニュースで見た難民の方々の姿に心を動かされ、困っている人を助けたいという思いから医師を志しました。内科医として働いていた頃は、患者様の人生に深くのめり込みすぎてしまう自分に気づき、精神的に非常に辛くなりました。理想と現実のギャップを感じる中で、大学時代から興味を持っていた病理学を自分の専門として選択することを決めました。病理医は直接患者様と対話することはありませんが、検体を通して病気の根本的な診断を支えるという、非常にやりがいのある仕事だと感じています。

内科医を続けている中で「満たされていない」と感じていた点について、具体的にお聞かせください。

一番は、患者様の病気が治らない現実や、そのつらさに感情移入しすぎてしまうことでした。患者様の人生に寄り添うことは大切ですが、家にも帰れず、患者様の苦しさを自分ごとのように感じてしまう生活は、ずっと続けるのが難しいと感じていました。また、医療界の閉鎖的な環境の中で、自分自身が周りと「合っていない」という感覚もあって、このまま続けることに不安を感じていました。

病理医として活躍される中で、LUMIPATH Clinicの開業を決意されたのはなぜでしょうか?

日本の病理医の数が圧倒的に少なく、特に地方や地域の病院で偏在しているという構造的な課題に直面したことが大きな理由です。地方の病院では病理医が常駐せず、質の高い診断を維持することが困難な現状はサステナブルではないと感じました。この課題を解決するため、病理医という限られた資源を最大限に活用できるデジタルシステムを構築し、正式な「病理診断」を提供するための医療機関として、LUMIPATH Clinicの開業を決意しました。

質の高い病理診断とLUMIPATH Clinicの使命

LUMIPATH Clinicが提供する「病理診断」と、検査会社の「病理判断」にはどのような違いがあるのでしょうか?

日本の約7割の病理検体が送られる検査会社は医療機関ではないため、「病理判断」という位置づけになります。一方、LUMIPATH Clinicは、厚生労働省の「医療機関間連携」制度に基づく医療機関として、医療機関の責任を持って「病理診断」を提供します。当クリニックでは常勤の病理医2名以上によるダブルチェック体制を構築しており、診断に対する責任の所在を明確にし、質の高い診断を確実に提供しています。

LUMIPATH Clinicと依頼元の臨床医との連携において、どのようなメリットがありますか?

外部の検査会社を介さずに、当クリニックの病理医が直接、依頼元の臨床医と連携を取ることが最大のメリットです。検査会社を通すと、検体に関する質問や相談が「又聞き」のようになり、タイムロスや意思疎通のズレが生じがちでした。直接やり取りすることで、迅速なディスカッションが可能になり、臨床医との距離が近くなることで、診断の質がより向上します。

四十物院長の専門領域である「分子病理診断」について、どのような診断なのでしょうか?

分子病理診断は、従来の病理診断(形態学)に加え、ゲノム検査などを活用して、より分子レベルで病気の状態を分析する診断です。例えば、がんの検体で特定の遺伝子変異や異常なタンパク質の発現状況などを詳細に調べます。これにより、どのようなタイプの癌であるかを特定し、効果が期待できる分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤などの治療薬の選択に役立てます。一部の疾患では、この分子病理診断が主要な診断方法となっています。

開業後の挑戦と喜び

開業されてから現在までで、最もご苦労されたエピソードがあればお聞かせください。

開業を決意するまでのビジョン固めの期間が、最も精神的に大変でした。医療界の慣習的な側面に加え、ビジネス的な側面からくる「横槍」に思いがけず遭遇しました。しかし、この挑戦を通して、医療界とは異なる分野の知見、特に金融系の知識を持つ夫から厳しい指導を受け、ビジネスの基本的な考え方を学ぶ必要がありました。これは苦労でもありましたが、今となっては大きな財産です。

その中で、どのような時に「開業してよかった」あるいは「幸せだ」と感じる瞬間がありますか?

一番は、自由に「次に何をすべきか」を決められることです。今は、組織の方針に縛られることなく、自分たちが稼いだ収益を、診断の質をさらに高めるための新しいスキャナー導入やシステム構築といった、医療の未来のための投資に自由に使うことができます。この投資が「世のため、人のためになる」という確信があるため、純粋な喜びを感じ、大きなモチベーションとなっています。

現在、多忙を極める業務の中で、特にデジタル化を進めたい部分はどこでしょうか?

今は、依頼を断らないスタンスでいるため、私一人で毎月1,000件近くの検体を見ており、非常に多忙です。この負担を減らすため、業務のDX化をさらに進めたいと考えています。また、取引先とのやり取りにはまだアナログな部分が多く残っており、検体のやり取りや情報のデジタル管理において、双方にとって使いやすい、セキュリティも担保されたシステムを構築したいと考えています。

LUMIPATH Clinicが描く未来と医師へのメッセージ

2~3年後のLUMIPATH Clinicが目指す、具体的なビジョンについてお聞かせください。

ビジョンは二つあります。一つは、北海道の僻地にある病院が、少ないコストで質の高い病理診断を受けられるシステムを構築しきることです。地域偏在を解消し、どこでも標準以上の診断を提供できるようにしたいです。もう一つは、札幌などの都市部で疲弊している病理医や勤務医の負担を軽減するサポートシステムを作り上げ、病理医全体のワークライフバランス向上に貢献することです。

四十物院長が個人として大切にされている、組織や働き方に関する夢は何でしょうか?

「心から一緒に働きたいと思える人が集まる場所」を作り続けることです。家庭の事情などでフルタイムで働けない人や、従来の病院の働き方に窮屈さを感じていた人など、多様な背景を持つ病理医が、自分の能力を最大限に発揮できる柔軟な働き方を提供したいです。そうすることで、日本の病理診断を支える力になることができると信じています。

これから開業を目指す、あるいは同じような課題意識を持つ医師へのメッセージをお願いします。

大企業や大きな組織に所属することが美徳とされた時代から、時代は変わってきています。今はさまざまなツールが使え、個人でも大きなことに挑戦できる時代です。開業を考える医師には、より広い視野を持ち、「この小さな開業から何か大きなものを変えてやろう」ぐらいの気概を持って挑戦してほしいです。そうした開拓精神を持つ開業仲間が増えたら、きっと楽しいだろうと思っています。

Profile

院長 四十物 絵理子

LUMIPATH Clinicの院長である四十物 絵理子(あいもの えりこ)先生は、長年にわたり医療の最前線で活躍されてきたエキスパートです。2009年に河北総合病院で初期研修内科コースを研修中、臨床医としての限界や理想とのギャップを感じ、より根本的な課題解決を追求するため、病理学の道へ進むことを決意されました。内科研修修了後、埼玉医科大学国際医療センターや同総合医療センターで病理医としての第一歩を踏み出しました。 2018年からは慶應大学ゲノム医療ユニットで特任助教として、最先端の分子病理診断と研究に従事。さらに2024年には、中外製薬やCyberOmixなど多数の企業との共同研究及び製品開発に病理医として参画されています。病理医が地域偏在し、診断の質の格差が生まれている現状を深く憂慮し、デジタル技術を駆使して、質の高い病理診断を全国どこでも提供できるシステムを構築するために、LUMIPATH Clinicを開業されました。

会社情報

医院名

LUMIPATH Clinic

設立

2024年