気と医学をつなぐ医師──橋本和哉院長が語る“心とからだの診療”
2025.07.17
質の高い対話と確かな技術で、地域の健康を守る一番のパートナーへ
芦屋甲南クリニック
院長 白坂 知識
神戸市東灘区に位置し、地域住民から厚い信頼を寄せられている「芦屋甲南クリニック」。その陣頭指揮を執るのが、院長の白坂知識先生です。白坂先生は、心臓血管外科の最前線で高度な手術を数多く執刀してきた経歴を持ちながら、現在は「プライマリケア(総合診療)」と「在宅医療」を軸に、患者様一人ひとりの生活に寄り添う医療を実践されています。 今回のインタビューでは、白坂先生がなぜ心臓外科医から地域医療の道へと転身されたのか、その背景にある情熱や、クリニック経営において最も大切にしている「患者満足度」の秘訣について詳しくお話を伺いました。専門性を持ちつつも、決して敷居を高くしない。白坂先生の言葉からは、これからの地域医療が目指すべき温かな形が見えてきます。
—さっそくですが、白坂先生が医師を志したきっかけについて教えていただけますか?
実は、中学生の頃に格闘技で怪我をしてしまい、数年間通学もままならない時期があったんです。当時は田舎に住んでいたこともあり、適切な診断がつく病院が近くになく、無為に時間を過ごしてしまったという悔しい経験が根底にあります。また、あの時の「どこに行けば治るのかわからない」という不安を知っているからこそ、今の診療スタイルがあるのかもしれません。
—一度は別の道に進みながら、再び医学部を目指されたと伺いました。
はい。一度は別の大学に入りましたが、やはり医療の仕事に携わりたいという思いが消えず、22歳の時に再受験をして医学部に入りました。
—その後、心臓外科医としてキャリアを積まれますが、そこから現在のプライマリケアへ転身されたのはなぜでしょうか?
心臓外科医として最先端の現場で研鑽を積んできましたが、母がケアマネジャーをしていた影響もあり、次第に「自分の好きな街で、若い世代からお年寄りまでを総合的に診る町医者になりたい」と思うようになったんです。心臓外科のキャリアから一転、改めて家庭医療や総合診療を学び直しました。
—開業の地に、このエリアを選ばれた理由もそこにあるのでしょうか?
留学なども経験しましたが、開業するなら「自分が住みたい、愛着を持てる街」で、泥臭いほど人間味のある地域医療をやりたいと考えていました。この神戸市東灘区という場所で、10年、20年と腰を据えて取り組んでいきたいという思いが強かったんです。
—クリニックの診療において、最もこだわっているポイントは何ですか?
とにかく「診療の質を担保すること」です。今の保険診療は数をこなす方向に傾きがちですが、私は一人ひとりの患者様との対話を重視しています。診療の質を高めることが、結果として患者様の満足度や信頼につながると考えています。
—患者様一人ひとりに合わせた「アレンジ」をされていると伺いました。
お薬一つとっても、医師が一方的に出すのではなく、患者様の「なるべく飲みたくない」とか「細かく管理してほしい」といった意向を丁寧にヒアリングします。その方のライフスタイルに最適化(アレンジ)することを、何よりも大切にしています。
—専門である循環器以外にも、幅広く相談に乗っていただけるのでしょうか?
はい。「プライマリケア」という概念に基づき、糖尿病や喘息といった一般的な病気から、メンタルヘルスのアプローチ、さらには栄養学やスポーツ医学まで幅広く対応しています。何か困った時に、まず一番に相談していただける窓口でありたいと思っています。
—在宅医療(訪問診療)にも力を入れられているそうですね。
母からのアドバイスも受けつつ、生活介護の勉強も深めてきました。介護器具の選択からマットレス、インソールの選び方に至るまで、患者様が自宅でストレスなく過ごせるよう、多角的な視点からサポートを行うのが当院の特徴です。
—Googleの口コミなどでも非常に高い評価を得られていますが、その秘訣は何でしょうか?
病院に対する不満の多くは「待ち時間」と「説明の分かりにくさ」です。当院ではウェブ問診などのITツールを積極的に導入し、待ち時間を短縮する努力をしています。一方で、診察室ではITに頼りすぎず、患者様と向き合う時間を確保しています。
—診察中に先生がパソコンばかり見ている、という光景はなさそうですね。
患者様が一番嫌うのは「パソコンばかり見ている医師」です。そのため、音声変換テキストなどのシステムを活用し、キーボードを叩く時間を減らして、患者様の目を見て分かりやすく説明することに注力しています。
—他にも、他のクリニックに推奨したいようなシステムはありますか?
先ほども挙げた「ウェブ問診」は非常に有用ですね。また、患者様とのコミュニケーションを円滑にするために、SNS(Instagram)などを通じてクリニックの雰囲気や情報を発信し、来院前の不安を取り除く工夫もしています。
—スタッフの方々の教育や、経営者として意識されていることはありますか?
「三方よし」の考え方を大切にしています。患者様はもちろんですが、働くスタッフも守らなければ継続性は生まれません。スタッフや関わる業者の皆さんが「関わってよかった」と思える環境を作ることが、巡り巡って患者様への質の高いサービスにつながると確信しています。
—直近の2〜3年で、どのようなクリニックにしていきたいとお考えですか?
闇雲に規模を大きくしたり、フランチャイズのように広げたりすることは考えていません。まずはこの地域で、スピード感と分かりやすい説明において「一番」だと認識されるクリニックを目指したいです。
—白坂先生が描く、理想の「町医者」像を教えてください。
大きな病院にはできない「小回りの利く医療」を提供したいですね。最先端の機器が揃っていなくても、「あの先生に相談すれば安心だ」と言ってもらえるような、ヒューマンリソース(人間力)で満足度を提供できる場所でありたいです。
—最後に、開業を目指す先生方へのメッセージをお願いします。
クリニック経営において大切なのは、相手の「期待値」をどう超えていくかだと考えています。今はウェブでの評価が可視化される時代ですが、高い評価を得るためには、単に医学的に正しい治療をするだけでなく、患者様が抱える「説明の分かりにくさ」や「待ち時間」といった不満を一つずつ解消し、期待を上回る安心を提供することが不可欠です。 また、自分一人で頑張るのではなく、スタッフや関係業者が「このクリニックに関わってよかった」と思えるWin-Winの関係を築くことで、安定した経営と質の高い医療が両立できます。開業は大きな挑戦ですが、自分の理想とする医療を形にできる素晴らしい機会でもあります。自分自身が納得でき、地域の方々に心から信頼される場を、ぜひ作り上げていってください。
Profile
院長 白坂 知識
University of Hawaii等への留学を経て、大阪大学心臓外科やタイでの臨床留学により心臓血管外科・循環器の専門性を極める。数多くの心臓手術を執刀した後、地域医療の重要性を感じ、札幌渓仁会病院にて家庭医療を再修得。糖尿病などの慢性疾患からメンタルヘルス、スポーツ医学まで幅広く研鑽を積む。その後、在宅医療のリーダーとして数多くの複雑症例に携わり、生活介護の知識も深める。2025年、兵庫県神戸市に「芦屋甲南クリニック」を開院。専門医としての確かな技術と、患者の生活を丸ごと診る「家庭医」の視点を併せ持つ、地域医療の新たな旗手として注目を集めている。