「人に感謝されることが、やりがいになる」──横浜駅西口歯科・大橋豪院長が語る、信念ある診療と組織づくり
2025.07.15
大阪・寝屋川で地域に根ざす東デンタルクリニック──技術と想いがつなぐ“口の健康”と“生きる喜び”
東デンタルクリニック
院長 東 直矢
大阪・寝屋川市にある東デンタルクリニック。院長の東直矢先生は、医療一家に育ちながらも、かつて料理人を夢見たという異色の経歴を持つ歯科医師です。そんな東先生が大切にしているのは、「食べることの喜び」を守るという視点。インプラントや根管治療など専門的な分野において高い技術を追求しながらも、「食育」や「人との会話」といった人間味を重視した診療方針を貫いています。スタッフ教育への真摯な取り組み、患者さんとの心温まるエピソード、そして将来的な分院展開と飲食事業へのビジョンまで──柔らかな笑顔と真剣な眼差しを交えながら語ってくださった東先生の想いに迫ります。
—まず、東先生が医師を志されたきっかけについて教えてください。
そうですね、うちは身内や親戚を含めてだいたい医療関係に携わっている“医療一家”だったんです。逆にサラリーマンという働き方があまり想像できなくて(笑)。気がつけば自然と医療の道を選んでいました。
—他にやりたかった職業などはありませんでしたか?
小さい頃は料理人に憧れてましたね。作った料理を親に『美味しい!』って言ってもらえるのがすごく嬉しかったんです。でも、料理の道には大反対されてしまって……そこで“自分には医療しかないのかな”と考えるようになりました。
—では、開業されたきっかけはどのような経緯だったのでしょうか?
もともとは勤務医だったんですが、父が開業していた歯科医院を体調を崩して空けることになり、僕が1年半ほど仮院長として手伝いました。父が復帰した後、“この場所は父のものだ”という気持ちが強くなって、自分がここに居続けるのは違うなと。元の職場に戻る選択肢もありましたが、それも違和感があって。それなら新しく自分の道を作ろうと開業を決意しました。
—先生のご専門について教えていただけますか?
口腔外科出身で、現在は根管治療と抜歯を得意としています。口腔外科出身は“根管治療が苦手”と言われがちなんですけど、それがすごく悔しくて。徹底的に勉強して克服しました。
—どのように練習されたのでしょうか?
抜歯後の不要になった歯を使って練習させていただきました。そういう地道な積み重ねが今の自信につながっていると思います。
—診療時に意識されている点があれば教えてください。
初診で痛みを伴う処置が必要な場合は、しっかりと説明してから行うようにしています。不安を抱えたままでは信頼関係も築けませんからね。
—現在までに、一番苦労されたことはなんでしょうか?
近畿大学の口腔外科での2年間の研修医時代ですね。朝7時から入院患者の見回り、帰宅は深夜1時。それが毎日続いていました。半年は歯科以外の循環器や救急、精神科も回るんですが、それがすごく自分の糧になったと思っています。
—歯科でありながら他の診療科を学ばれた理由は?
高齢者や持病をお持ちの方に治療を行う際、体調変化はつきものです。血圧や呼吸など、歯科でも命に関わる判断が必要な場面がある。だから歯科だけでなく全身管理の知識も必要だと痛感しました。
—クリニック経営の中で、嬉しかった出来事があれば教えてください。
やっぱりスタッフの成長ですね。最初は何もできなかったスタッフが、今では患者さんにしっかり説明できたり、固定の患者さんがついたりしていて、そういう姿を見られるのが一番の喜びです。 あと、定期的に通院してくれている患者さんの虫歯のチェック中に舌の色に違和感があり、すぐ阪大病院を紹介したところ、ステージ1の舌がんでした。無事手術を終えてから初の検診の際に『先生に命を救ってもらった』って握手してくださって……あれは本当に嬉しかったですね。研修医時代の経験があったからこそ、気づけたのだと思います。
—では逆に、クリニックを経営する中で大変だと感じることはありますか?
正直、経営面での悩みはあまりないんですが……一番大変なのは“スタッフのマネジメント”ですね。これまでなら、自分一人で抱えて解決できていたことも、経営者になると“他人をどう動かすか”という問題になる。しかも、ただ厳しくするだけじゃダメで、言い方ひとつでハラスメントと取られる可能性もある時代ですし。
—スタッフ教育は、かなり神経を使われているのですね。
そうですね。僕は怒鳴ったりするタイプではないですが、あえて厳しく言うときもあります。『これは調べてきた方がいいよ』『この伝え方はちょっと違うね』って、気づいてもらうように意識しています。スタッフの成長にはつながっていると思いますが、やっぱり気は使いますよね。
—経営理念についてお聞かせください。
“食べる喜び、美しくある喜びを伝える”です。もともと料理人になりたかった自分と今の自分が、歯科という形で繋がっている感覚があります。食べることって、生きる楽しみそのものですから。それを守るのが自分の役割だと思っています。
—今後のクリニックの展望を教えてください。
今年9月に医療法人化して、まずは大阪を中心に分院展開を進める予定です。目標は5院です。そして、昔からの夢だった“飲食店”も形にしたいと考えています。具体的には、各クリニックの隣に飲食店を併設する構想です。ラーメン、うどん、イタリアンなど、各地域ごとに特色を持たせて、“◯◯院はラーメン屋、△△院はうどん屋”のように展開していけたらと思っています。 料理はもともと家庭料理からスタートしましたが、ジャンル問わず何でも作るのが好きなんです。ただ、たこ焼きのようなジャンク系よりも、患者さんが“ちょっといいな”と思ってもらえるような、美味しくて身体にも優しい食事を提供したい。クリニックと隣接した場所で、患者さんが“お口のトラブルなく、気持ちよく食事を楽しめる空間”をつくっていけたら最高ですね。医療と食を通じて、地域の人たちに“健康で幸せな暮らし”を届けたいと思っています。
—経営者として、大切にしている考え方やポリシーはありますか?
何より“スタッフを大切にすること”ですね。特にメンテナンスなどを担う歯科衛生士さんの存在は、クリニックにとってとても大きい。今はどこも衛生士さんの取り合いのような時代ですが、安定した収益を生むのも衛生士さんたち。だからこそ、辞めずに働き続けられるような環境づくりは常に意識しています。ただ、“わがままを聞く”という意味ではなくて、“気持ちよく働けるようにする”という意味です。
—具体的には、どのような工夫をされているのでしょうか?
良かった点をすぐメモして、それをボーナスや昇給の参考にしています。“この人の説明の仕方、すごく良かったな”というようなことですね。患者さんの症状ごとに記録しているノートに、僕が『ここ理解を深めておいた方がいいよ』と赤ペン先生のようにコメントするような形で。開業当初はスタッフ一人ひとりにノートをつけていて、それを半年に一回、ボーナスのタイミングで本人に見せていました。今は人数が増えてきたのでメモという形に変えましたが、根っこの部分は変わっていません
—中には“パフォーマンス”としてやっている人もいるかもしれませんが、それについてどう思われますか?
それも理解したうえで、開業当初の1年半〜2年ほどは全員にノートをつけていました。今は全員分となると難しいので形式を変えましたが、評価の軸としては今もきちんと持っています。
—最近導入して良かったと感じたシステムやサービスはありますか?
う〜ん、特に“これだ!”というものはないんですけど(笑)、強いて言えば“人と人との会話”を大事にしてるということでしょうか。DXや自動精算機などの効率化が進んでいる中で、うちは受付や衛生士とのちょっとした会話を何より重視しています。患者さんって、入口をくぐるときって意外と緊張してるんですよ。そのときに“いつも顔なじみの受付さんが話しかけてくれた”というだけで安心される。それが、結果的にクリニックの雰囲気や売上にもつながっていると感じています。
—かなりコミュニケーションが活発なクリニックなんですね。
そうですね、うちはたぶん沈黙のないクリニックです(笑)。僕自身、“喋れ、沈黙するな”って言ってますから(笑)。治療以外の会話も大切にしていて、“効率化”よりも“人間味”を重視しています。笑い声があって、子どももわちゃわちゃできるような環境。そういう空気感が伝わっているのか、ありがたいことに口コミでも高評価をいただくことが多いんです。
—開業当初の集患にはご苦労されましたか?
寝屋川市という人口の多くない地域で、最初は1日50~60名といったりきたりでした。ただ、開業の少し前から駅の看板広告を出していて、最寄りから5駅分くらいに掲出しました。そこから少しずつ患者さんが増えて、今では1日80〜90名ほどにまでなっています。
—集患における工夫や取り組みがあれば教えてください。
広告費は平均よりもしっかりかけていて、リスティング広告も代理店にお願いしています。また、問診票で家族構成を確認して、『ご家族も検診いかがですか?』と自然に声かけしています。地道ですが、それがしっかり結果につながっています。
—これから開業を目指す若い先生方へのメッセージをお願いします。
やっぱり、自分への投資は絶対に惜しまないことですね。お金だけじゃなくて、時間も労力も含めて。若いうちに努力して身につけた技術や経験って、一生自分のものになるんです。特に僕のような技術職は、誰にも奪われない“技”が財産になりますから。 僕自身も、開業するかしないかなんて何も考えていなかった若い頃から、“ちゃんと一人前になって、自分の判断で患者さんを救える医者になりたい”っていう気持ちはずっと持っていました。そういう想いがあるから、つらい研修時代も乗り越えられたんだと思います。開業してから“頑張ろう”では遅い。今の時間をどう使うかが、数年後にすごく大きな差になります。今成功できていない人がいるとすれば、それは過去に努力しなかった“しわ寄せ”が来ているだけ。ちょっと昭和っぽい考えかもしれませんけど(笑)、やっぱり本質は変わらないと思っています。
—最近の若い世代の傾向についてはどう思われますか?
休みや給与など条件面ばかりを重視する人が多い印象ですが、本当に優秀な人って、休みの時間にも何か学んでます。だから僕は“やる気にさせる”より、“最初からやる気のある人を採る”という考えで採用しています。
Profile
院長 東 直矢
インタビューを通じて印象的だったのは、東先生の視線が“技術”だけでなく“人”に深く向けられていること。診療の技術向上はもちろんのこと、スタッフの成長を喜び、患者さんの気持ちに寄り添う姿勢には、料理人を夢見た少年時代の“おいしい”へのまっすぐな情熱が今なお息づいています。「医療と食の両方から、地域の人を幸せにしたい」と語る東先生の言葉には、未来を見据える確かな力とあたたかさが感じられました。東デンタルクリニックのこれからの歩みに、さらなる注目が集まります。