Interviewインタビュー

地域に寄り添う医療のかたち いとう王子神谷内科外科クリニック・伊藤博道院長インタビュー

いとう王子神谷内科外科クリニック

院長 伊藤 博道

小学校二年生での長期入院をきっかけに医師の道を志し、外科医として研鑽を積んだ後、地域に根差したクリニックを開業した伊藤博道先生。現在は「いとう王子神谷内科外科クリニック」の院長として、内科・外科・呼吸器・消化器など幅広い診療に対応しながら、患者さんや地域の医療従事者に寄り添う日々を送っています。 今回のインタビューでは、医師を志した原点、開業に至るまでの道のり、そして今後のクリニックの展望や先生の描く夢についてお話を伺いました。

医師を志した原点から、地域に根差すクリニック開業までの歩み

医師を志したきっかけと開業に至るまでの歩み

まずは医師を志すことになったきっかけを教えていただけますでしょうか?

小学校二年生の頃、長期間の入院生活を経験しました。大きな病気で一か月半も学校に行けず、当時は自分は体が強いと思っていたのに、初めて「自分は体が弱いんだ」と実感しました。ひとりで入院しながら「このまま治らないのではないか」「死んでしまうのではないか」と不安でいっぱいでした。その経験を通して、生きることや生命について深く考えるようになりました。そして生命をもっと知りたいと思い、その学びに最も近いのが医学だと感じたことが、医師を志したきっかけです。

次に、開業することになったきっかけや経緯について教えていただけますでしょうか?

もともとはブラックジャックのように奇跡を起こすスーパードクターに憧れ、外科医としてキャリアを積みました。手術が大好きで、腕を磨く日々を重ねていましたが、2013年の春までに左腕に過度な負担がかかり、筋に疲労が溜まり、腕の痛みで力が手先に十分に出せなくなり、長い外科手術を続けられなくなりました。 そこで第二の医師人生として、昔、幼いころころ、何度も熱を出したりして、お世話になった開業医の先生への憧れを思い出し、開業医としての道を選びました。開腹での大きな手術は難しくなりましたが、それ以外の手術や内視鏡、診療は可能です。副院長である妻は乳腺外科医で、万が一私が倒れた場合も診療をつなげられるのではないかと思い、2人でクリニックを立ち上げました。2016年11月に正式に開業しました。

それでは、先生の専門領域について教えていただけますでしょうか?

私は内科と外科が中心になります。脂質異常症・高血圧・軽~中等度の糖尿病など生活習慣病全般です。臓器で言えば呼吸器と消化器ですね。また、呼吸器や消化器を中心に、小児科も対応しています。必要に応じて皮膚科・泌尿器の初期治療に対応しております。

開業後に直面した苦労と、医師としての喜び

開業してから現在までの間で最も苦労したエピソードがあれば教えてください。

開業して感じたのは、診療以外の業務も多いということですね。無料サービスや人材紹介など外部からの営業や誘いが非常に多く、情報の取捨選択に苦労しました。開業医は治療だけでなく経営も担うため、断る力や取捨選択の目が必要です。慣れるまでは煩わしさを感じることもありました(笑)

逆に、クリニック経営をしていて、どんな時に嬉しさや幸せを感じますか?

土日に診療していて「土日なのに見ていただけて良かったです!」と感謝の言葉をいただくときです。土日は混雑し、予約外の患者様も診察するためお待たせしてしまうこともありますが、それでも感謝していただけるのは本当に励みになります。 また、コロナが落ち着いた後に、地域の看護師さんが「資格を活かして地域に貢献したいのでここで働きたい」と応募してくれたことも嬉しかったです。患者さんだけでなく、地域の医療従事者にも選んでもらえるクリニックになれたと感じ、心強く思いました。

地域に根差したクリニック経営と今後の展望

改めて、先生の経営理念があれば教えていただけますでしょうか?

お世話になった開業医の先生から教わった「各部門でプラスにする」という考え方を大切にしています。何かで利益が出て別の部門で赤字を出し、トータルでプラスであれば良いというのではなく、すべての部門で黒字化を目指すこと。各セクションがしっかりプラスになれば、経営は安定しますし、無駄な部分も自然と見えてきます。「採算の合わないものは買わない」ですね。

2〜3年後のクリニックのビジョンを教えてください

クリニックを大きくすることよりも、今の建物が古いので、乳腺外科と内視鏡を主体としたクリニックとして、建て替えや移転ができるといいですね(笑)。将来的には、患者さんもスタッフも年を重ねても、ゆったりと過ごしやすいクリニックにしたいと思っています。

伊藤先生が描く未来の夢とメッセージ

先生にとっての夢を教えていただきたいです。

夢は……総理大臣になることですかね(笑)。医療だけを見ても、無駄なお金の使われ方など改善すべき点がたくさんあります。良い医療を実現するために、多くの課題を改善していきたいですね。今は医療しかできませんが、いつか医療以外の視点からも社会の問題解決に関わることができたら面白いと思っています。

最後に、これから開業医を目指す先生や、同じような境遇の先生に向けてメッセージをお願いします。

今は5年前、10年前と違って誰でもどこでも開業が成功する時代ではありません。しかし、密にシミュレーションしてチャンスと思ったら前にふみ出す、厳しいと思ったら無理せず、待つ、他を探す、という冷静な判断が大切だと思います。

Profile

院長 伊藤 博道

筑波大学医学部を1998年に卒業後、約15年間にわたり茨城県で地域医療・内科外科・救急医療に従事。2013年より帝京大学肝胆膵外科にて高難度手術や高度な内視鏡診療を学び、感染対策委員に医師として携わった。また、地域連携委員長である恩師 佐野圭二教授の元で「2人主治医制」にも携わるなど、病院と診療所の橋渡し役を担ってきた。 医学部卒後約20年を経て、43歳で、地域に根差しながら外科医の研鑽を積み育った東京都北区に「いとう王子神谷内科外科クリニック」を開業。乳腺外科・内視鏡内科を特色として、生活習慣病や消化器・呼吸器疾患、がんの予防・早期発見、感染症治療や予防にも力を注ぐ。地域に根差した医療を提供し、患者とその家族が安心して暮らせる街づくりに貢献している。

会社情報

医院名

いとう王子神谷内科外科クリニック

設立

2016年11月

従業員数

30名