Interviewインタビュー

「患者は誰かの宝物」五感と対話で挑む、坂東ハートクリニック・坂東正章院長の真心の医療

坂東ハートクリニック

院長 坂東 正章

徳島市三軒屋町に位置する坂東ハートクリニック。心臓血管外科の第一線で数多くの命を救ってきた坂東正章院長が、なぜ地域医療の現場に身を置くことを決めたのか。そこには、一つの尊い命が失われたことへの悔恨と、医師としての揺るぎない覚悟がありました。高血圧治療において「薬を減らす・止める」という成果を上げ続ける独自の診療スタイルは、現代医療が見失いがちな「人と人の絆」に満ちています。今回は、坂東院長の歩みと、患者一人ひとりを「誰かの宝物」として慈しむその情熱的な志に迫ります。

「地域医療への情熱と挑戦」坂東ハートクリニック・坂東 正章院長インタビュー

医師としての原点と情熱

先生が医師という職業を志したきっかけを教えてください。

中学生の頃、シュバイツァー博士の伝記を読んだのが始まりです。アフリカの地で無償の愛を捧げ、病に苦しむ人々を救う姿に強烈な感銘を受けました。「自分もいつか、こんな風に誰かの役に立ちたい」という純粋な憧れが、今日まで私を突き動かしている原動力ですね。

なぜ、数ある科の中から「心臓血管外科」を選ばれたのでしょうか。

心臓は命の象徴です。その繊細でダイナミックな臓器を自分の手で治療し、止まりかけた命を再び動かすことができる外科の世界に強く惹かれました。非常に責任の重い分野ですが、その分、患者さんが元気になった時の喜びもひとしおです。

米国留学時代の経験で、今に活きていることはありますか?

テキサス・ハート・インスティチュートでの経験は宝物です。その当時全米一の心臓手術件数を誇る施設でした。7名の執刀医が一日に25例前後の心臓大血管手術をし、私のような若手の心臓血管外科医が世界中から20名ほど集まっていました。執刀医たちから素晴らしい技術を教わり、手術を最善化し続ける姿勢を学びました。今のクリニックでも、患者さんの状態を更によくする方法を探る姿勢につながっています。

地域医療への転身と開業の決意

大病院の外科医から、地域医療の道へ進もうと思われたのはなぜですか?

ある患者さんとの別れがきっかけでした。勤務医の時、制度変更で外来患者数を削減するよう指示があり、逆紹介をしはじめました。しかし、ある方が紹介先での管理不良のため脳梗塞で亡くなりました。その娘さんから「先生がずっと診てくれていたら、父は死ななかったと思います」と電話をいただいた時、制度変更に唯々諾々と従ってはならないと考えました。病院には一年半の猶予をもらい、後輩医師を執刀医に育てて開業準備をし、50歳で開業して術後の患者さんを診ることにしました。

その経験が、今のクリニックのあり方に繋がっているのですね。

はい。「手術して終わり」ではなく、その後の人生を一生涯見守る場所が必要だと確信しました。大きな病院ではできない、一人ひとりの顔が見える細やかなアフターケアを提供するために、坂東ハートクリニックを開きました。

患者さんと接する際に、意識されていることはありますか?

患者さんは医師には遠慮しても看護師には忌憚なく訴えるため、診察前に看護師が問診するシステムを開業時から導入しました。その内容を確認して診察しますが、看護師の問診で患者さんの心は軽くなり、問診内容から治療のヒントが見つかることが多々あります。なお、現在看護師は6名在籍し、四か所の個室看護室で問診しています。

「減薬」に挑む独自の治療アプローチ

先生は高血圧治療において「減薬」や「休薬」を推奨されていますね。

多くの患者さんは「一度薬を飲み始めたら一生やめられない」と諦めています。しかし、高血圧の原因の多くは生活習慣にあります。私は、安易に薬を増やすのではなく、根本原因を解決することで、薬を減らせる可能性を常に模索しています。

具体的にはどのような方法で減薬を進めるのでしょうか。

当院では管理栄養士が常勤勤務しており、患者さんの塩分制限や食事のバランスを、具体的かつ実践可能な方法でアドバイスしています。例えば、120kgあった方が食事改善と運動で90kgまで減量し、結果として長年飲んでいた降圧剤が必要なくなる、といったケースも珍しくありません。また、健康運動指導士の看護師が効果的な有酸素運動の方法を教えています。

薬を減らすことで、患者さんにはどのような変化が見られますか?

皆さん、表情がとても明るくなりますね。「薬に頼らなくても健康でいられる」という自信が、その方の人生全体に活力を与えるようです。その笑顔を見ることが、医師として何よりの報酬です。

未来へ繋ぐ医療の信念

先生の座右の銘とも言える理念を教えてください。

「みんな誰かの宝物」目の前の患者さんは、誰かにとっての大切な親であり、子であり、パートナーです。そう考えれば、決しておろそかな対応などできません。患者さんは私の宝物ではありませんが、誰かの大切な宝物なのです。診療に際してそんな気持ちが常にあります。

今後のクリニックの展望についてお聞かせください。

特別なことをするつもりはありません。ただ、地域の方々が「あそこに行けば安心だ」と思える場所であり続けたい。心臓や血圧だけでなく、人生の悩みも相談できるような、温かいクリニックでありたいと思っています。

最後に、これから医師を目指す若い世代に、伝えたいことはありますか?

医学は進歩しますが、最後に人を救うのは「人の心」です。知識や技術を磨くのは当然ですが、それ以上に患者さんの痛みに共感できる感性を磨いてほしい。誠実に接すれば、患者さんは必ず応えてくれます。

Profile

院長 坂東 正章

1953年生まれ。徳島大学医学部医学科を卒業後、徳島大学第二外科に入局。心臓血管外科のスペシャリストとして小松島赤十字病院(現・徳島赤十字病院)で数多くの手術を執刀。勤務中、世界最高峰の心臓治療施設である米国テキサス・ハート・インスティチュート(Texas Heart Institute Division of Cardiovascular Surgery)へ客員外科医として留学し、最先端の技術を習得。2003年、「最後まで責任を持って患者を診る」という信念のもと、徳島市に坂東ハートクリニックを開院。食事と運動を軸にした独自の生活習慣指導により、数多くの高血圧患者の減薬・中止を成功させている。その真摯な診療スタイルは地域から厚い信頼を寄せられている。

会社情報

医院名

坂東ハートクリニック

設立

2003年9月