なぜ、訪問診療という形で地域医療に貢献するのか?仙台みやぎの訪問クリニック 院長 川村 雄剛 先生に聞く、医師としての信念と挑戦
2025.10.01
「一方的な医療ではなく、対話から始まる選択肢を」西小山とうや内科・糖尿病循環器クリニック・東谷紀和子院長が、患者様と共に歩む安心のチーム医療
西小山とうや内科・糖尿病循環器クリニック
院長 東谷 紀和子
東京都品川区に位置する「西小山とうや内科・糖尿病循環器クリニック」。2025年10月の開院以来、地域に根差した丁寧な診療で多くの患者様から厚い信頼を寄せられています。今回は、同クリニックの院長を務める東谷紀和子先生にインタビューを実施しました。東谷先生が医師を志した原点から、大学病院での最先端医療の経験、長年温めてこられた「患者様に寄り添う医療」への熱い想いまで、じっくりとお話を伺いました。専門性を活かした循環器内科との連携や、近年注目されている肥満症治療への取り組みなど、地域医療の未来を見据えた貴重な対談をお届けします。
—先生が医師を志したきっかけや、その原点について教えていただけますか。
私の父も祖父も医師であり、その影響はとても大きかったと思います。祖父は自宅で医院を開業していて、二世代住宅で一緒に暮らしていたので、幼い頃から医療というものがとても身近にありました。当時は天びんと分銅を使って小児用の粉薬を量り、薬包紙に包んでお渡ししたり、レントゲン写真は暗室で独特の匂いの薬液に浸して現像したりと、そうした診療の風景を間近で見ながら育ちました。
—幼少期からお父様やお祖父様の背中を見てこられたのですね。
はい。それに、自分が風邪を引いたときにすごく心細くなる性質があったのですが、そういうときに寄り添ってくれた父や祖父の姿が、子供心にとても大きく見えたんです。大病をしたわけではありませんが、そうした日常の積み重ねがあって、かなり小さい頃から「将来は私も小児科の先生になりたいな」と、夢を抱いていました。
—幼稚園の卒園文集などにも、すでに将来の夢として書かれていたそうですね。
そうなんです、後から当時の文集などが出てきて、医師になりたいと書いてあったのを見つけました。ですので、他の職業とどちらにしようかと迷う時期はほとんどありませんでした。ただ、周囲に大々的に公言して口に出すタイプではなく、「なれないかもしれないから……」と、心の中で静かに思いを温め続けていた子供でした。
—大学病院の糖尿病センターなどで長く勤務される中で、どのような経験をされたのですか。
東京女子医科大学病院の糖尿病センターは、国内でも有数の規模の糖尿病診療施設です。そこで、網膜症や腎症などの合併症が進行してしまった患者様を数多く診てきました。足を切断しなければならないような厳しい状況の方もいらっしゃいましたし、私自身は糖尿病による腎臓の合併症のため透析が必要となる腎病態の研究に携わっていたため、透析室で過ごす時間も長くありました。
—合併症が進行してしまった患者様と向き合う中で、どのような想いが芽生えたのでしょうか。
当時は重症化した患者様が低血糖を原因に突然亡くなってしまうようなことや、合併症が手遅れになるケースも経験しました。そうした過酷な現場を間近で見る中で、「ここまで合併症が進んでしまう手前の段階で、なんとか食い止めることはできないだろうか」という思いが、大学病院時代からずっと私の心の中に強くありました。
—そこから、現在のクリニックを開業するまでの経緯を教えてください。
夫の米国留学に伴って一度大学病院を離れた後、帰国してからは様々なクリニックや総合病院で外来を担当させていただきました。しかし、大きな組織の限られた時間の中では、どうしても患者様と「細切れ」でしか接することができないな、というもどかしさがありました。手術をして終わる科ではないので、患者様のライフイベントに寄り添いながら、ずっと長く一緒に歩んでいける場所を自分で作りたいと思い、開業を決意しました。
—診療の大きな柱として「共同意思決定」(Shared Decision Making)を掲げられていますね。
これは、夫の留学先であったアメリカのメイヨークリニックで学んだ考え方が原点になっています。現地では糖尿病研究室に出入りする機会をいただきましたが、そこでは共同意思決定(Shared Decision Making:SDM)に関するミーティングが活発に行われており、多くの研究成果も発表されていました。その姿勢に触れ、「これこそが目指すべき医療のあり方だ」と強く感銘を受けました。 共同意思決定とは、患者さんの価値観や生活環境、大切にしていることを十分に理解したうえで、医療者がエビデンスに基づく治療選択肢をわかりやすく提示し、患者さんと対話を重ねながら一緒に最適な治療方針を考えていくアプローチです。
—具体的には、どのような対話を大切にされているのですか。
例えば糖尿病治療でも現在は食事療法や運動療法に加え、内服薬や注射薬、持続血糖測定(CGM)など、さまざまな治療の選択肢があります。単に血糖値を下げることだけではなく、仕事や家庭の状況、趣味や生活スタイルなど、一人ひとりの人生に合わせて治療やそのタイミングを選ぶことが重要だと考えています。正解は決して一つではありません。「去年はこんなことで困っていましたね」「以前はここまで頑張っていましたね」と、その方の歩みを振り返りながら、一緒に無理なく続けられる治療を考えていきたいと思っています。
—その理想を形にするため、スタッフの皆様とはどのような連携をされているのでしょうか。
当院には受付、看護師、臨床検査技師、管理栄養士がいますが、皆さん非常に経験豊富で、むしろ私の方が支えてもらっていると感じることも多いですね。採用の際には、患者様が安心して相談できるような「笑顔」と「穏やかさ」を特に大切にしました。毎日朝礼と終礼を行い、都度スタッフ全員で情報を共有し、「もっと分かりやすくご案内できないか」「よりスムーズな動線はないか」と意見を出し合いながら改善を重ねています。 クリニックづくりに完成形はないと思っているので、スタッフ全員で日々アップデートを続けています。
—夫である副院長先生との連携について、強みを教えてください。
金曜午後と土曜日は、夫が循環器の専門外来を担当しています。糖尿病の患者様は循環器の病気を合併されている方が非常に多いですし、逆に循環器の持病がありながら実は糖尿病も隠れている、という方もたくさんいらっしゃいます。糖尿病だけを良くしても、合併症に気づけなければ意味がありません。
—お二人の専門領域が合わさることで、患者様にはどのようなメリットがありますか。
夫の勤務する東京医療センターなどとも密に連携していますので、夫の病院でカテーテル手術をして、こちらで継続してフォローするといった体制がスムーズに取れます。患者様にわざわざ遠くの病院へ行ってもらわなくても、当院の中で、多角的な目で合併症のリスク管理ができることが大きな強みだと考えています。また、近年注目されている肥満症治療に対しても積極的なアプローチをしていきたいと考えています。
—最後に、これから開業を目指す若い先生方へアドバイスをお願いします。
私自身の後悔でもあるのですが、開業を思い立ってから実現するまでの約2年間、時間はたくさんあったはずなのに、いざ決断する時にならないと本気で勉強ができなかったんです。ですので、まだ時間がある勤務医のうちに、実際の先輩方のクリニックへ行って話を聞かせてもらうことをお勧めします。開業してからでは見られない視点がたくさんありますので、ぜひ恐れずに多くのことを吸収してください。
Profile
院長 東谷 紀和子
西小山とうや内科・糖尿病循環器クリニック 院長。医学博士。 2004年に東京女子医科大学医学部を卒業後、同大学の初期研修医を経て、2006年より東京女子医科大学病院 糖尿病センターに勤務。2007年には至誠会第二病院での勤務を経験し、翌年再び東京女子医科大学病院 糖尿病センターへ帰任。2014年に同大学にて医学博士号を取得。2016年から2025年まで同センターの非常勤医師を務める。その後、独立行政法人国立病院機構 東京医療センター、横浜新緑総合病院、渋谷済生クリニックなどの糖尿病代謝外来非常勤を経て、西小山とうや内科・糖尿病循環器クリニックを開院。大学病院や基幹病院での豊富な臨床・研究経験を活かし、糖尿病・代謝疾患を中心とした地域医療の発展と、患者一人ひとりの人生に寄り添う温和で丁寧な診療に尽力している。