なぜ、訪問診療という形で地域医療に貢献するのか?仙台みやぎの訪問クリニック 院長 川村 雄剛 先生に聞く、医師としての信念と挑戦
2025.10.01
「こころ」を学び、時代に合わせ、患者さまと共に歩む。こころとからだ横浜クリニック・安藤泰善院長が実践する真摯な医療の姿
こころとからだ横浜クリニック
院長 安藤 泰善
神奈川県横浜市中区に位置する「こころとからだ横浜クリニック」。日常のちょっとした生きづらさから、深く深刻な悩みまで、患者さま一人ひとりの声にじっくりと耳を傾けるクリニックです。今回は、同院の院長である安藤泰善先生にお話を伺いました。麻酔科、内科、商社や県立医療センターなどの精神科という多彩なバックグラウンドを持つ安藤先生。日々アップデートを怠らず、患者さまと真摯に向き合うその診療方針や、地域医療にかける熱い想いについて語っていただきました。
—まず、安藤先生が医師を志したきっかけについて教えていただけますでしょうか。
実は、親が医師だったわけでもなく、私の家は自営業だったんです。高校生の頃、進路を考える中で周りの勧めや、当時の成績などからなんとなく医学部を目指すことになりました。「誰かを救いたい」といった明確なドラマがあったわけではないのですが、父親も「医者はいいぞ」と応援してくれましたね。
—生まれ育った横浜の地で開業されたのには、やはり思い入れがあるのでしょうか。
そうですね。地元ですし、実家もすぐ近くにあります。やはり自分に縁がある土地、慣れ親しんだ横浜の地域のみなさんの力になりたいという気持ちが根底にありました。
—さまざまな悩みを抱える患者さまが来院されると思いますが、診療の際に意識している点はありますか。
精神科や心療内科というのは、「その人を知ること」が何よりも大切です。病名だけで「うつ病だからこの薬」と画一的に決めるような、チェーン店のような診療にはしたくないと考えています。うつ状態と言ってもその背景や度合いは人それぞれですし、精神医学にはまだ解明されていない部分も多くあります。だからこそ、相手がどんな人で、どんな工夫が必要なのかを深く知る努力をしています。
—当院では高校生の診療や予約にも力を入れていますが、これにはどのような背景があるのでしょうか。
大人の患者さまを診ていると、「もっと若い頃に適切なアドバイスを受けたり、自分の特性を知ることができていれば、ここまでこじれずに済んだのではないか」と感じることが非常に多いのです。20代後半になって引きこもってしまってからでは、回復までにどうしても時間がかかってしまいます。だからこそ、思春期や高校生といった早い段階での「早期介入」が重要だと考えています。
—高校生のうちに心療内科に関わることで、具体的にどのようなメリットがあるのですか。
自分なりの特性を知り、それに合った進路や環境を選ぶアドバイスができる点です。自分の特性に合わない場所で無理を続けてしまうと、自己肯定感がものすごく落ちてしまいます。早い段階で介入できれば、こじらせずに次のステップへ進むことができます。
—クリニック全体ではどのようにアプローチしているのでしょうか。
当院では、日々たくさんの高校生の患者さまをお迎えしています。そこで得た「今の高校生がどのような問題を抱えているのか」というリアルな情報は、医師だけでなく受付や心理士も含めたスタッフ全員でしっかりと共有しています。クリニック全体で思春期の特性を理解し、お迎えできる体制を整えています。
—実際の治療を進めるにあたって、患者さまにはどのような姿勢を求められますか。
治療は、医師と患者さまの「共同作業」です。ただ当院に来て「あとは全部お任せします」という丸投げの姿勢では、なかなか良くなりません。ご自身でも「生活を直そう、整えよう」という意識を持っていただくことが、回復への第一歩になります。
—精神科の「薬」に対して不安や偏見を持つ方もまだ多いですが、先生はどのようにお考えですか。
薬は脳という臓器を休ませ、思考を健やかにするための大切なツールです。例えば抗うつ薬などを使うと、脳内のセロトニンが調整され、それまで深く悩んでいたことが「まあ、いっか」と思えるようになる。薬が思考の癖を楽にしてくれるんです。医療機関である以上、必要な時にはしっかりと薬を用いた正しい治療を行うのが当院の方針です。そのため、「薬を一切使わずにカウンセリングだけで治したい」というご要望は、原則的にお断りしています。
—薬のほかに、アプローチとして取り入れている療法はありますか。
私たちは患者さまの環境を直接変えることはできません。職場の人間関係や家族の状況を、私たちが変えるのは不可能です。しかし、「患者さま自身の考え方や捉え方」を変える手助けはできます。それが認知行動療法や、過去のトラウマに対する心理療法です。お薬というベースを作った上で、これらの心理療法をプラスアルファとして組み合わせることで、より効果的な治療を目指しています。
—日々のストレスをお酒で紛らわせようとする方も多いかと思いますが、その点について先生はどうお考えですか。
ストレスや辛い記憶を忘れるために、お酒をガブガブ飲んでしまう方は、中高年のサラリーマンを中心にたくさんいらっしゃいます。ですが、お酒は脳にダメージを与えてしまいますし、根本的な解決にはなりません。もしお酒に「現実を忘れる」「リラックスする」という効果を求めているのであれば、私はそれを「安全な精神科の薬」に置き換えることを提案しています。当院にも、お酒を飲む代わりに月1〜2回、薬を取りに来られる男性の患者さまが多くいらっしゃいます。「お酒を飲まなくて済むようになり、体も頭も楽になった」と、大変喜ばれていますね。
—今後のクリニックの展望や、先生ご自身の目標についてお聞かせください。
「2年後、3年後にこうなりたい」という大固まりのビジョンがあるわけではありません。それよりも「時代や患者さまのニーズに合わせて変化していくこと」が大切だと思っています。例えば最近では、女性のPMDD(月経前不快気分障害)のご相談が増えています。これも薬による治療で劇的に改善することが多いのですが、まだあまり知られていません。こうした時代のニーズに、柔軟に、そして迅速に対応していきたいですね。
—最後に、これから開業医を目指す先生方へメッセージをお願いいたします。
開業にあたって「スタッフが集まるだろうか」「集患はうまくいくか」と、さまざまな不安を抱えている先生方も多いかと思います。ですが、最初から完璧な大きなビジョンを掲げる必要はないと私は思っています。 大切なのは、目の前にある課題や患者さまのニーズに対して、日々コツコツと実直にベストを尽くし、解決していくことです。時代の変化に合わせてクリニックをアップデートしていけば、自ずと良い医療、良い経営に繋がっていきます。当院のホームページでもこれまでの工夫や取り組みを発信していますので、ぜひ一つの参考にしていただければ幸いです。先生方の新たな一歩を、心から応援しています。
Profile
院長 安藤 泰善
昭和52年、横浜市中区生まれ。平成8年に栄光学園高校を卒業後、平成14年に信州大学医学部を卒業。その後、東京大学附属病院やNTT東日本関東病院の麻酔科で経験を積み、平成18年からは関東労災病院や新潟労災病院、湘南クリニックの内科に勤務。平成26年からはみくるべ病院、県立こども医療センター、福井記念病院の精神科にて、多くの子どもから大人までの心のケアに従事する。令和2年、生まれ育った横浜の地に「こころとからだ横浜クリニック」を開院し、院長に就任。豊富な経験をもとに、こころとからだの両面から地域住民を支えている。