医師を志した原点から、地域に根差すクリニック開業までの歩み
2025.08.01
足と歩行の専門医が挑む、新たな医療のカタチ
足と歩行のクリニック 荻窪院
院長 村井 峻悟
現代社会において「足や歩行」に関する悩みは尽きることがありません。しかし、その専門的な治療を受けられる医療機関は残念ながらまだ少ないのが現状です。そんな「足」と「歩行」に特化した医療を提供するため、2021年4月、東京都杉並区に開院したのが「足と歩行のクリニック 荻窪院」です。 院長を務めるのは、熱意と明確なビジョンを持つ村井 峻悟先生です。関西での研修を経て上京し、東京科学大学整形外科での研鑽を積んだ後「日本にもっと足の専門医療を普及させたい」という想いから開業に至りました。整形外科医でありながら足病医学(Podiatry)の概念を取り入れ、歩行分析から手術、そして術後のリハビリテーションまでを一貫して提供する、このクリニック独自の医療スタイルは多くの患者様を救っています。 今回は、村井先生の医師を志したきっかけから開業への道のり、そして今後の夢について詳しくお話を伺いました。地域医療の現場で新たな挑戦を続ける足と歩行のクリニック 荻窪院院長、村井峻悟先生の情熱に迫ります。
—医師を志されたきっかけについてお聞かせいただけますでしょうか?
幼い頃から生き物の世話をすることが大好きでした。なので、獣医師の道か人の命を救う医師の道かで心が揺れ動く時期がありました。悩んだ末に「動物を介して人を癒やすよりも人の命と心に直接寄り添う方が、より多くの方の力になれるのではないか」と考えました。そうして医学の道を志すことに決めました。
—多くの先生が苦労されるという、学生時代の勉強は順調でしたか?
高校受験くらいまではかなり上位の成績を保っていました。しかし高校に入ってからは目標を見失い、学年で下から数えるほどの順位でギリギリの学生だったので順調ではなかったと思います。
—先生の専門領域である「足と歩行」について、詳しくお聞かせください。
当クリニック名にもある通り「足と歩行」が専門領域です。整形外科の中でも足は特に「取り残された分野」だと感じています。足の関節疾患だけでなく、巻き爪・魚の目・タコ・皮膚科的な疾患など、足に関するあらゆる悩みを総合的に診ています。どちらか一方だけを見ていては根本的な解決にならないため、足の疾患と歩行の異常までトータルで見ていくのが当院の強みです。
—勤務医から開業医へとキャリアを転換された決め手は何でしたか?
専門医取得後、サブスペシャリティを決める時にアメリカの足専門病院の足病医(Podiatrist)の先生と出会ったことがきっかけです。彼らとの交流を通し、日本にもっと足の専門医療を広めたいという思いが強くなりました。本当に足の治療を極めるなら「自分で開業するかアメリカで医師になるかだ」と言われ、日本で分野を開拓しようと決意しました。
—経営者としての村井先生の「経営理念」があればお聞かせください。
経営理念としては「家族に勧められる医療」を提供することです。自分の身内が安心して通える「信頼できるクリニック」でありたいと思っています。
—クリニックの患者様の集客は、どのような方法でされていらっしゃいますか?
駅の出口などクリニックに最も近い場所に看板を一つ置いています。それ以外は特に大規模な集客はしていません。地域の測定会などでフットプリントや歩行動画を無料で提供し、そこから集客に繋がっている部分はあります。口コミやご紹介、特にご家族で来てくださる方が非常に多いです。
—開業されてから、特に人材の採用については苦労されていますか?
受付スタッフの採用と定着が非常に難しいです。医療資格を持たないスタッフ、つまり受付担当の離職率が高いのが現状です。求人サイトなどを活用して採用していますが「思っていたのと違った」「忙しすぎる」といった理由で辞めてしまう方が多いです。
—人材教育の面で、意識されている点はありますか?
クリニックのコンセプトは必ず共有し、月に一度のミーティングで意識を統一しています。またマニュアルは作成していますが、全てを暗記させるのではなく、困った時に参照できるよう整備しています。接遇研修に時間をかけすぎると離職につながる可能性があるため、受付の様子をこまめにチェックしながら指導しています。
—開業から現在までで、一番苦労されたエピソードがあればお聞かせください。
やはり人材に関する苦労が一番大きいです。受付スタッフがゼロになりそうになった時期もありました。そうなるとクリニックのパフォーマンスが著しく低下してしまうため、今は受付スタッフをもう一人増やして安定化させたいと思っています。
—先生のクリニックでは、給与面や福利厚生でスタッフの定着を図る工夫をされていますか?
はい、クリニック全体の給与水準を丁寧に引き上げる努力を続けています。やはり給与が低いと志の高い人材との出会いが難しくなってしまうからです。また、福利厚生の面でもスタッフが安心して働けるよう改善に努めています。 しかし、面接や履歴書だけでは実際に一緒に働いてくれる方が、私たちのクリニックに長く定着してくれるかどうかを見極めるのは、本当に難しい課題だと感じています。だからこそ私たちは、出会った一人ひとりのスタッフを大切に育てていきたいです。
—先生が治療において大切にされているポリシーや考え方はありますか?
「まず痛みを軽減し成功体験を増やす」ことです。初診の患者様にはできる限り積極的な治療を行い、痛みを取り除くことで治療へのモチベーションを向上させます。痛みが取れたという成功体験が増えれば、治療意欲が高まると考えています。
—開業されて、特に嬉しかったり、幸せを感じる瞬間はどんな時でしょうか?
やはり笑顔で帰っていただける瞬間はやはり嬉しいです。特に、他の病院で不十分な対応をされた方が当院に来て症状が改善し「こんなところまでしっかり診てくれるんですね」と感謝してくださるのを見ると、心から良かったと感じます。
—今後の5年間のビジョンとして、具体的な目標があればお聞かせください。
患者さんの待ち時間を増やしすぎないよう予約枠を細かく設定していますが、このまま患者数が増え続ければ分院展開が必要です。5年スパンでクリニックを5つほどに増やし、その中心に手術専門のオペセンターを作りたいと考えています。
—最後に、これから開業を志す先生方へメッセージをお願いします。
今後、開業に対する規制が厳しくなる傾向にありますので、開業を検討されている方はぜひ前向きに「早めに」動かれることをおすすめします。私は31歳で開業しましたが、地域との連携や周囲の先生方との繋がりを大切にしていれば必ず道は開けます。整形外科の開業医であっても、メスを置かずに手術も継続しながら充実した日々を送ることは可能ですので、やりたいことは全てやってみるという前向きな姿勢で臨んでいただきたいです。
Profile
院長 村井 峻悟
滋賀医科大学を卒業後、東京科学大学整形外科に入局し研鑽を積まれました。スポーツ整形外科を専門とし日本整形外科学会、日本足の外科学会、JOSKAS(日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会)、人工関節学会、東日本手外科研究会、東日本整形災害外科学会、関東整形災害外科学会といった多数の学会に所属。特に重度外傷や手・指の再生医療、そして足の変形疾患の治療に深い知見を持ち、スポーツ障害、スポーツ外傷に対する診断と治療に尽力されています。アメリカの足病医との出会いをきっかけに、日本における足の専門医療の遅れを痛感。この分野を日本に普及させるという強い使命感から「足と歩行のクリニック 荻窪院」を開院されました。単なる治療に留まらず、足全体と歩行の機能回復を目指す包括的なアプローチを実践されています。