こころに寄り添い続ける医療を–こころサポートクリニック 平山 貴敏 院長インタビュー
2025.10.29
脈々と受け継がれる医療への情熱と挑戦--「千葉静脈瘤・循環器クリニック」院長の医療哲学
千葉静脈瘤・循環器クリニック
院長 河瀬 勇
千葉県千葉市に位置する「千葉静脈瘤・循環器クリニック」は、下肢静脈瘤治療のスペシャリストとして地域医療を支え続けています。2015年の開設以来、院長の河瀬 勇先生は、患者様一人ひとりに合わせたテーラーメイドの医療を提供することに情熱を注いできました。約30年にわたる心臓血管外科医としての豊富な経験と、患者様の声に真摯に耳を傾ける姿勢は、多くの信頼を集めています。本日は、クリニックの開設に至った経緯から、医療にかける想い、そして今後の展望について、河瀬先生にお話を伺いました。医療の道を目指した原点から、専門とする下肢静脈瘤治療へのこだわり、そして多岐にわたる循環器疾患の診療を始めた背景まで、先生の挑戦し続ける医療哲学に迫ります。
—先生が医師を志された、原点となるきっかけについてお聞かせいただけますでしょうか?
正直なところ、医師を志すきっかけというのはあまり褒められたものではないんです。もともとは工学部の志望だったのですが、大学受験の際に、防衛医科大学校にご縁があって合格し、様々な状況からそちらに進学させていただいた、というのが正直な経緯です。ただ、医療の現場というのは、母が看護師であったこともあり、幼少の頃から身近に感じていました。
—看護師であるお母様から受けた影響は大きかったですか?
そうですね、母は私が幼い頃から70歳を過ぎるまで現役で働いていました。小学校の頃から時々母の職場に行ったり、職場の慰安旅行や行事に参加したりしていたので、医療というものが近くにある環境では育ちました。母がよく働く人でしたので、その献身的な姿を見て、医療という仕事には抵抗がなかったのかもしれません。
—現在、診療される上で、患者様とのコミュニケーションや向き合い方で最も重視されていることは何でしょうか?
私が主に取り扱っている下肢静脈瘤は良性疾患です。そのため、患者様ご本人の「意向」や「お悩み」を丁寧に汲み取り、患者様に寄り添いながら治療を進めていく必要があります。患者様の話をよく聞き、お互いが納得した上で治療方針を決定していくテーラーメイドの医療を提供したいと考えています。
—2015年のクリニック開設から10年を迎えられましたが、この間、経営面で特に苦労された点や大変だった時期についてお聞かせください。
この10年間は、途中にコロナ禍がありましたし、2年ごとの診療報酬改定によって下肢静脈瘤の手術点数が大幅に減額されるという出来事もありました。特にコロナ禍では、良性疾患である下肢静脈瘤の患者さんは激減し、予約をキャンセルせざるを得ない時期もあり、2020年頃は恥ずかしながら赤字でした。この先どうなるかと思いましたが、借り入れなども行いながらなんとか続けてこられたという状況です。
—そのような厳しい状況の中で、2020年6月には診療科目を増やし「千葉静脈瘤・循環器クリニック」に改称されました。この決断の背景には何があったのでしょうか?
下肢静脈瘤だけの診療では経営的に厳しいという判断もありましたが、心臓血管外科医だった私が静脈瘤だけを診るということに、医師としてどうなのだろうかという思いもありました。コロナ禍で手術をストップせざるを得ない時期があったことも機に、幅広い循環器疾患の診療も行うことにしました。
—診療の幅を広げたことで、患者様の層にはどのような変化がありましたか?
改称後、内科的な患者さんも含めて、今では下肢静脈瘤の患者さんと循環器内科系の患者さんが半々くらいの割合で増えてきています。当初は静脈瘤の患者さんばかりでしたが、診療の幅を広げたことで、より多くの患者様に貢献できるようになりました。
—採用や教育といった人材に関する課題は、クリニック運営においていかがでしたか?
これがクリニックの経営をやっていく上で、一番の悩みでした。特に女性中心の職場となるため、少人数ながらもスタッフ間で意見の対立が起きたり、退職者が出たりということがありました。職員の入れ替わりが多かった時期もあり、その都度、話を聞くなどして対応していますが、今だにそこが難しいと感じています。
—クリニックでの診療を通して、先生が最も喜びや達成感を感じる瞬間はどのような時ですか?
下肢静脈瘤の治療では、行ったことと結果が目に見えるので、患者様が喜んでくださり、「足がきれいになった」「足が軽くなった」といった声をいただく時は、心から嬉しく思います。また、循環器疾患では、クリニックで診察した結果、重症だと判断してすぐに病院に搬送した患者様が、その後回復されたという報告を受けると、緊急性の高い病気を未然に防げた達成感や「見させていただいてよかった」という気持ちになりますね。
—クリニックの安定的な継続を目指す上で、現在取り組まれている具体的な経営戦略や施策はありますか?
特別な大掛かりな施策は正直ありませんが、巡回診療を一部始めたり、扱っている下肢静脈瘤の治療法も新しいものを積極的に取り入れたりしています。また、駅チカの利便性を活かして、睡眠時無呼吸症候群などの診療も始めています。これらによって、患者さんが少しずつ増え、定着してきているのは確かです。
—広告宣伝費や経費削減について、先生のお考えをお聞かせください。
下肢静脈瘤の診療は、治ってしまうと終わりで、新しい患者さんが継続的に来なければ続かないという特性があります。ある程度の認知度アップは必要ですが、過度な広告宣伝費への出費は抑え、その分を医療の質を高めるために使うべきだと考えています。患者様のためになる範囲での経費削減と、無駄のない運営を心がけています。
—今後もクリニックを継続していく上での、先生の揺るぎない信念について教えてください。
今後も、丁寧な診療を続けていくことが何よりも大切だと考えています。患者様を大勢診るために診療時間を短くするようなことはせず、お一人お一人に十分な時間をかけて向き合っていきたいです。これは、私が譲れない部分であり、この姿勢を続けていけば、必ず安定していくと信じています。
—今後2〜3年で、クリニックとしてどのような姿を目指していきたいとお考えでしょうか?
大げさなビジョンは正直ありません。この10年を乗り越えられたので、次の目標は15年、20年とクリニックを継続していくことです。
—下肢静脈瘤の診療における専門性については、今後どのように高めていかれますか?
今後も下肢静脈瘤の最新の治療法を取り入れながら、国内外の学会での発表や指導に携わるなど、最先端の医療を追求し続けます。循環器内科の診療も行いますが、下肢静脈瘤の専門性を疎かにすることは決してありません。常に最新のエビデンスに基づいた、どこに出ても恥ずかしくないレベルの診療を提供し続けるつもりです。
—これから開業を志す医師の方々へ、場所選びや準備の面でアドバイスをお願いいたします。
私自身、今となって思うのは、ご自身の診療に自信と軸があれば、必ずしも駅チカで高い家賃のテナントである必要はないということです。テナント契約は、退去時にも高額な費用がかかるなど、後々の負担も大きくなります。特にテナントで開業される場合は、ご自身の事業計画に合わせて、無理のない場所設定を具体的に計画されるのが良いかと思います。
Profile
院長 河瀬 勇
「千葉静脈瘤・循環器クリニック」院長。1989年3月に防衛医科大学校を卒業後、海上自衛隊幹部候補生学校を経て、亀田総合病院で研修医としてのキャリアをスタート。心臓血管外科を専門とし、北里研究所病院、東京船員保険病院(現:東京高輪病院)などで研鑽を積まれました。また、1998年9月より米国クリーブランドクリニック、米国ミシガン小児病院などでのクリニカルフェローを経験するなど、国内外で高い専門性を磨き上げました。帰国後も、防衛医科大学校 第二外科 助手、三重ハートセンター 心臓血管外科部長、苑田第一病院 心臓血管外科 部長など、要職を歴任。2015年9月に「千葉静脈瘤クリニック」を開設(2020年6月に「千葉静脈瘤・循環器クリニック」と改称)。現在も亀田メディカルセンターの心臓血管外科非常勤医師として勤務されています。心臓血管外科医としての長年の経験と知識を活かし、患者様一人ひとりに寄り添う医療を追求し続けている先生です。