Interviewインタビュー

妥協しない情熱が創り出す、患者さんと二人三脚の「まっとうな医療」

茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック

院長 浅井 偉信

神奈川県茅ヶ崎市にある「茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック」は、地域に根差した内科・呼吸器内科として、特に長引く咳や喘息、アレルギー疾患の診療に力を入れています。今回は、そんなクリニックを率いる浅井 偉信院長に、医師を志したきっかけから、継承という形でクリニックを開院した経緯、そして医療人として大切にされている理念まで、様々なお話を伺いました。地域医療への熱い思いと、患者さんの生活の質(QOL)向上にかける真摯な情熱が伝わるインタビューとなりました。先生の経験から導かれた深い洞察は、これからの医療業界を目指す方々にとっても貴重な示唆に富んでいます。このインタビューを通じて、浅井先生が目指す「まっとうな医療」の真髄に迫ります。

苦しむ患者さんに「まっとうな医療」を届けたい。茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 浅井院長が語る「呼吸器内科医」としてのこだわり

医師を志したきっかけと呼吸器内科医としての道

まずは、医師を志すことになったきっかけについてお聞かせいただけますでしょうか?

医師になった明確なきっかけはありませんが、親族に医師がいた影響で、幼い頃から自然と医療の道を意識していました。 しかし、原動力は「医師になりたい」というより「医学部に入りたい」という強い思いでした。現役時に学力不足で不合格となった悔しさから、高い目標に負けたくないという負けず嫌いな気持ちが芽生え、 三浪して国立の医学部に進学しました。 「一度決めた目標は必ず達成するまでやり遂げる」という強い意志と、高い壁を乗り越えたいという純粋なチャレンジ精神が、私の医師としての出発点となっています。

当初は整形外科に進むことを考えていらっしゃったそうですが、呼吸器内科を選ばれたのはなぜでしょうか?

そうですね、元々は野球をやっていたこともあり、肩などに興味があって、大学時代は整形外科に進むつもりでいました。しかし、研修医になってスーパーローテーションで内科を回る中で考えが変わりました。整形外科以外の分野も深く学びたいと考えた時に、最も視野が広く、手広く診療できるのが呼吸器内科だと感じたんです。研修期間を呼吸器内科で長く取って研鑽を積むうちに、その分野の魅力に気づきました。結果として、2年間の初期研修の間に気持ちが変わり、呼吸器内科医の道を選びました。

浅井先生が診療において特に大切にされていることは何でしょうか?

呼吸器内科、特に咳の診断は検査だけでは難しいため、患者さんとのコミュニケーションを最も重視しています。 決め手となるのは、普段の生活や咳が出る状況など、患者さんの詳細なバックグラウンド情報です。私は患者さんが話しやすい雰囲気を作り、広く深く話を伺います。オープンクエスチョンで情報を引き出し、時にはメンタル面や職業にまで切り込みます。 こうして信頼関係を築き、「この先生になら話せる」と思ってもらうことが、正確な診断と治療の実現に不可欠だと考えています。

継承から発展へ。クリニック経営と「まっとうな医療」へのこだわり

クリニックはご自身で開院されたのではなく、継承されたとのことですが、その経緯についてお聞かせください。

元々は自分で開業するつもりで、実際にテナントの仮予約までしていたんです。しかし、たまたまそのタイミングで、継承のお話をいただきました。これは私と先代の間に血のつながりがない、第三者継承という形です。先代の体調の問題に加え、継承者がいらっしゃらず、クリニックの存続が宙に浮いてしまった状況でした。私自身が開業志向で、まさに新しいクリニックの仮予約をしていたタイミングだったため、お声がけいただき、お話を伺うことに。クリニックを見学して「ここなら良い」と感じ、自分で用意していた開業の申し込みを取り消して、継承に切り替えました。

経営者として大切にされている考え方やポリシーについてお聞かせください。

私の経営ポリシーは「まっとうな医療」の提供です。不必要な検査や自由診療を増やさず、患者さんを最優先に考えた、病院レベルの医療を提供します。お金は二の次で、その結果が自然と集患と利益につながれば良いと考えています。 また、職員が誇りを持てる職場環境作りも重要視しています。職員を大切にし、当院に誇りを持ってもらえれば、忙しくても楽しく働けます。そのため、福利厚生による還元に力を入れています。隣接整骨院の無料利用や、会員制リゾートホテル「エクシブ」の利用補助(正規職員は最大5万円/回)、Netflixの無料提供など、他院にはない手厚い還元を行っています。

ブログと組織運営。発展の裏側にある努力と展望

クリニックを継承されてから現在までで、最もご苦労されたエピソードは何でしょうか?

クリニックの継承自体はスムーズでしたが、職員の人間関係の扱いに最も苦労しました。組織拡大に伴い、派閥や軋轢が生じ、管理職の中裁も虚しく離職につながるケースが何度か発生しました。 この改善のため、現在は定期的なミーティングや、半年に一度の院長面談を実施しています。面談では事前に質問シートで不満を拾い上げ、改善に努めています。また、管理職を含む人間関係のスキル向上研修も行いました。雰囲気は改善傾向ですが、離職はいつ起こるかわからないため、引き続き努力を続ける必要があると考えています。

クリニックを経営されていて、最も「嬉しい」と感じる瞬間はどんな時でしょうか?

私が最も嬉しく感じるのは、他院で改善しなかった方の症状が良くなった時です。呼吸器疾患、特に 咳は仕事や日常生活に大きく影響しますが、命に関わらないケースも多いため、他の医療機関で「我慢して」とないがしろにされがちです。 そうした患者さんが「何年もダメだったけど、ここに来て元の生活を取り戻せた」と言ってくださる時、医師としての存在意義を感じます。当院には、市外や県外など遠方からも患者さんが多く来られます。これは、私のブログを見て「ここなら助けてくれる」と信頼してくださっている証だと感じています。

2〜3年後のビジョンについてお聞かせください。

最大の目標は、2026年4月に平塚に分院を開設することです。この分院は、本院よりも規模の大きい、駅ビル内のテナントにCTを導入するなど、より手広く診療できる施設にする予定です。まずはここをしっかりと立ち上げ、現在茅ヶ崎で実践している医療と全く同じ質の高い医療を、より多くの人に届けたいと考えています。 今後も、むやみに東京や横浜といった遠方に展開するのではなく、湘南地域を中心に、地域内でのドミナントな展開を考えています。私たちがやっている「まっとうな医療」のやり方は変えずに、地域に求められる医療機関として、規模を大きくしていきたいと考えています。

開業医を目指す方へ。未来を切り拓くメッセージ

最後に、これから医師の道を志す方や、開業を目指す先生方に向けて、メッセージやアドバイスをお願いいたします。

これから医師を目指す方、特に開業を考えている先生方へ。まず「自分のスキルを徹底的に磨き上げる」ことが最も重要です。また、今の時代、「薬を出すだけ」の医療は認められなくなり、開業医にはサービス業としての意識が必須です。 患者さんの高い要求に応え、生き残る鍵は「患者さん目線でのサービス設計」にあります。具体的には、質の高い診療を限られた時間で実現するためのWeb問診の導入・作り込み、そして患者さんの負担を減らす予約・支払いシステムの連携による動線整理が不可欠です。 「質の高い医療」を「患者さんに負担をかけない形」で提供できるシステムを組み込むことこそ、これからの時代に必須の条件です。お金儲けのためではなく、自分のスキルとクリニックを磨き上げ、「まっとうな医療」を追求することが、最も楽しく、やりがいのある開業医の道だと信じています。

Profile

院長 浅井 偉信

浅井 偉信(あさい いのぶ)先生は、茅ヶ崎内科と呼吸のクリニックの院長として、地域の呼吸器疾患に悩む方々の診療に尽力されています。秋田大学医学部を卒業後、秋田組合総合病院、横浜市立大学附属市民総合医療センター呼吸器病センター、藤沢市民病院呼吸器内科、横須賀市立市民病院呼吸器内科、茅ヶ崎市立病院呼吸器内科といった多様な医療機関で研鑽を積まれました。この豊富な経験から、特に診断が難しいとされる「長引く咳」の診療において高い専門性を発揮し、遠方からも多くの患者さんが訪れています。先生が大切にするのは、患者さんの背景に深く切り込む丁寧な診療と、「まっとうな医療」を実践すること。患者さんと二人三脚で症状の改善を目指すその姿勢は、地域医療における信頼を築いています。

会社情報

医院名

茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック

設立

2020年(継承)