「最高の人生」をサポートする在宅医療のスペシャリスト–HOME CARE CLINIC N-CONCEPT 宮下 直洋 院長インタビュー
2025.12.11
地域医療の常識を変える!藤沢内科・腎クリニック院長の情熱と挑戦
藤沢内科・腎クリニック
院長 藤澤 宏亘
福岡県糸島市に2024年12月に開業した「藤沢内科・腎クリニック」。地域に根差しながらも、専門性の高い「腎臓内科」を標榜し、特に透析導入患者を減らすという明確なビジョンを掲げるクリニックです. 院長の藤澤 宏亘先生は、ご自身の経験から腎臓病患者が直面する課題を深く理解し、病気の早期発見と予防啓発に強い情熱を持たれています. 本記事では、藤澤先生が医師を志したきっかけから、開業に至るまでの経緯、クリニックの運営における哲学、そして目指す未来について、詳しくお話を伺いました. 先生の患者目線に立った温かい医療と、医療経営への新しい視点に迫ります。
—まず、先生が医師を志されたきっかけをお聞かせいただけますでしょうか?
きっかけは、私自身が生まれつき腎臓が悪かったことです。子どもの頃から「成人になったら透析をすることになるだろう」と言われて育ちました。また、両親も医師だったこともあり、「それならもう医師になろう」と、漠然と小学生の頃から考えていました。本気になったのは高校生の頃ですね。
—ご自身の病気の経験が、医師を目指す原点にあったのですね。ご両親は消化器内科がご専門とのことでしたが、なぜ腎臓内科を選ばれたのですか?
両親が消化器内科だったのですが、正直に言って、消化器内科では腎臓のことは専門的にわからないんです。腎臓病の患者さんは、医師から「他の病院の専門の先生に聞いてください」と言われることが多く、それが私自身の経験からも大きな課題だと感じていました。そのため、「それなら自分が腎臓の専門になろう」と考え、腎臓内科を選びました。
—医師としてキャリアを積まれる中で、開業に至った経緯について教えてください。
医師になる前から、いつかは地元に戻って腎臓内科のクリニックを開業しようと考えていました。勤務医としてずっと働くつもりはなく、故郷で地域医療に貢献したいという思いが元々強くありました。勤務していた大学病院などへある程度の恩返しをしてからという手順を踏み、できるだけ早く開業したかったんです。
—早く開業されたかったのには、どのような理由があったのでしょうか?
勤務医として大きな病院に勤めていたとき、透析直前になって初めて腎臓病だと知る患者さんが非常に多かったことに問題意識を感じていました。これは良くないと感じ、早期から啓発できるようにと、なるべく早く開業したいと考えました。
—先生のご専門である腎臓内科について、どのような患者さんを診療されていますか?
私の専門は腎臓内科で、腎臓が悪くなると薬の調整が必要など、他の診療科からも頼られることが多い分野です。救急外来や入院中のコンサルテーションも多く経験したため、内科全般も広く診ています。腎臓病がない方や、高血圧などで来られる一般内科の患者さんも診ていますが、基本的には腎臓病の患者さんを全員拾い上げていきたいと考えています。
—診療する上で、特に意識している点や、注意されている点はありますか?
患者さんとのコミュニケーションにおいて、「伝えたことが伝わっていない」ということが非常に多いため、意識して取り組んでいます。医師が「わかるだろう」と思って使った医療用語が、実は患者さんには全く理解されていないということもあります。そのため、「おしっこがどうの」というように、できるだけ専門用語を使わずにわかりやすい言葉で説明することを心がけています。
—スタッフ教育では、どのような点を意識されていますか?
新しいクリニックなので、まだ決め事を作っている最中です。私はスタッフと個別に1on1(ワンオンワン)の面談を2〜3ヶ月に一度は実施しています。1on1で上がってきた意見を検討し、「次の1ヶ月、これで試してみよう」という形で、積極的に業務改善に取り組んでいます。特に「無駄な作業をなくそう」ということを強く意識しています。
—無駄な作業をなくすために、具体的にどう取り組まれているのでしょうか?
医療の現場はミスをしてはいけないというプレッシャーから、どんどん決め事が増え、手間が増えがちです。私はスタッフに、「ミスをしても大したことが起こらないミスはしてもいいよ」と伝えています。例えば、透析前後の体重測定の誤差などは許容します。重要なのは、アレルギー対応など、絶対にミスしてはいけない重要な点についてはダブルチェックを徹底するなど、メリハリをつけることです。若いスタッフが多いので、こうした柔軟な姿勢で業務改善がしやすい環境だと感じています。
—クリニックの経営理念として「四方よし」を掲げられているとのことですが、その考えについて詳しく教えてください。
はい、当院では「四方よし」という理念を掲げています。患者さんも良い、スタッフも良い、地域のためにもなる、そして経営としても健全である、という四つの要素すべてが満たされることを目指しています。どれか一つが犠牲になるようなことはしない、Win-Winな関係性だけを築いていくということです。
—システムの導入で、業務効率化に役立っているものはありますか?
電子カルテにはコストをかけ、他の病院よりも高価なものを導入しましたが、これは良かったと思っています。導入費用は1,000万円ほどかかっていますが、すごく使いやすくて、スタッフの負荷も減っています。透析に特化した電子カルテで、スタッフ間の伝達やスケジュールの管理、透析のデータがリアルタイムで飛ぶ機能などがあり、手入力がほとんどいらないため、スタッフの負担が減りました。
—これから開業を目指す先生方へのアドバイスをお願いします。
開業される前に、「自分が開業したときに、何の加算が取れるのか」、そして「その加算を取るために何が必要なのか」を、早い段階で徹底的に調べておくことをお勧めします。加算の中には、資格取得が必要で年に1回しか取得の機会がないものもあります。勤務医時代の方が、休みの時間を取りやすいため、その間に必要なリハビリの資格など、加算に関連する要件を満たしておくことが非常に重要です。
—「四方よし」の理念のもと、今後のクリニックのビジョンについてお聞かせください。
私の地元である糸島市では、腎臓病を専門に見られるクリニックが、ほぼ当院だけという状況です。まずは2~3年で、糸島市の腎臓病患者さん全員に「腎臓のことならこのクリニックだ」と周知してもらうことが最初の目標です。そして、その先の大きな目標として掲げているのは、透析患者を減らすことです。
—透析患者を減らすという目標は、具体的にどのようなことでしょうか?
経営という観点で見れば、透析は収益の柱になりますが、腎臓内科医としての本質的な仕事は、透析をさせないことにあります。そのため、当院の究極的な目標は、透析導入患者数を半減させることです。地域住民の人口あたりで透析導入数が減ることを目指し、日々診療に取り組んでいます。
—透析患者さんを減らすために、地域の医療機関との連携はどのようにされていますか?
他の開業医の先生方と連携し、「こういう患者さんは早めにうちに送ってください」とお願いしています。そして、お送りいただいた患者さんは、状態が落ち着けば半年ごとなどでまた元の先生にお返しするという形で、地域全体で腎臓病対策を進められるようにしています。
—先生ご自身の夢についてお聞かせください。
私は、Win-Winの関係性のところで満足していくことが一番良いと考えています。自分自身が腎臓病で、透析や移植の経験があり、その病気に一番詳しいという強みがあります。全国的に有名になりたいというのではなく、糸島市の地域で自分ができること、つまりWin-Winな範囲で糸島の人たちを助けられたら、という思いでやっています。
Profile
院長 藤澤 宏亘
藤沢内科・腎クリニック 院長の藤澤 宏亘先生は、生まれ育った糸島市の地域医療に貢献するため、腎臓内科の専門医として開業されました. 2010年に久留米大学医学部医学科を卒業後、2012年に久留米大学病院腎臓内科に入局. 久留米大学病院、聖マリア病院、公立八女総合病院、大牟田市立病院などで医員や指導医として勤務され、地域の中核病院で多くの経験を積まれました. 特に2019年から2022年までは大分県済生会日田病院で腎臓内科部長を務めるなど、専門分野でのキャリアを深く追求されています. 2022年からは九州大学病院第二内科に入局され、九州医療センターや白十字病院での勤務を経て、2024年12月に念願の藤沢内科・腎クリニックを開業されました. ご自身の透析・腎移植の経験から、患者様の立場に寄り添った医療を提供されています。