医師を志した原点から、地域に根差すクリニック開業までの歩み
2025.08.01
医師としての歩みと、地域に根ざしたクリニックの未来
ゲートタワー黒松泌尿器科
院長 黒松 功
名古屋市にある「ゲートタワー黒松泌尿器科」。名古屋市街を一望できる開放的なクリニックを経営する黒松院長は、60歳での開業という異例のキャリアを歩んでいます。長年の勤務医経験で培った確かな技術と、新たな挑戦を続ける情熱。人生100年時代を体現する黒松院長に、これまでの歩みと、医師としての信念を伺いました。
—さっそくですが、先生が医師を志されたきっかけについて教えていただけますか?
もともと親戚に医師はいましたが、両親は全く医療に関係ない仕事をしていました。大学受験の時点では医学部は考えていなかったんです。ただ、浪人中に自分の将来を深く考える時間があり、「人の体の仕組み」や「なぜ病気になるのか」という興味を思い出しました。その時、友人に相談したら「医師に向いているのでは」と言われ、それをきっかけに医学の道を選びました。
—開業という道を選ばれたのはどうしてですか?
正直、開業は全く考えていませんでした。勤務医として定年まで働くつもりだったんです。ただ、定年前に今後のキャリアを見直した時、新しいことに挑戦したい気持ちが強くなりました。体力面を考えると手術を続けるのも難しいですし、「やってみようかな」と思ったのが開業のきっかけです。60歳で開業は珍しいですが、人生100年時代だからこそ新たな挑戦も価値があると思っています。
—開業して一番苦労された点はどこでしょうか?
やはり経営ですね。診療自体は経験があるので問題ないのですが、経営やスタッフ教育は難しいです。患者さんのためにはスタッフの存在が不可欠ですから。
—スタッフの教育では、どんなことを意識されていますか?
医療知識はもちろんですが、患者さんへの対応の仕方も大切です。ただ、開業したばかりで忙しく、十分な時間が取れないのが現状です。私自身、他の先生がどう工夫されているのか知りたいくらいです。
—スタッフの採用についてはいかがでしょうか?
これも大変です。どの医療機関も同じだと思いますが、人材が集まりにくいですね。幸い今はスタッフに恵まれていますが、常に人材については考え続けています。
—先生のご専門について教えてください。
泌尿器科です。特に排尿障害に対する手術を長年行ってきました。前立腺肥大症の治療でPVPというレーザー手術を、日本で初めて導入したのもその一つです。開業後は手術は行っていませんが、培った経験を活かして排尿障害で困っている方を支えています。都会のクリニックですので、若者の性病や女性の膀胱炎など、これまで大病院であまり診なかった患者さんにも多く来ていただいています。
—導入して良かった設備やシステムはありますか?
CTスキャンは特に役立っています。結石の診断が正確にでき、検尿や採血の自動分析装置も導入しました。前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAも院内で測れるようになり、診断がスムーズです。また、予約システムを導入したのも良かった点ですね。事前に患者さんの情報を把握できるので効率的に診療できます。
—勤務医と比べて、開業医としてのやりがいはどこにありますか?
頑張った分がそのまま成果に反映されることですね。患者さんに選んでいただき、有効な治療をすることで収益に直結するのは経営者として面白いです。
—最後に、今後の夢や目標をお聞かせください。
法人化して、医師やスタッフを増やし、自分がいなくても回る体制を作ることです。大量に診るのではなく、一人ひとりと向き合えるクリニックを目指しています。60歳から開業した私の経験が、若い医師のモデルになれば嬉しいですね。
Profile
院長 黒松 功
ゲートタワー黒松泌尿器科の院長、黒松功先生は、1992年に三重大学医学部を卒業後、腎泌尿器科外科学教室に入局。済生会松阪総合病院や伊勢赤十字病院で経験を積み、名古屋セントラル病院では20年間にわたり診療に従事しました。専門は泌尿器科全般で、とくに前立腺肥大症に対するレーザー手術(PVP)の普及に尽力。日本泌尿器科学会専門医・指導医、医学博士であり、ロボット支援手術のプロクターも務めています。学会イノベーションアワードの受賞歴も持ち、確かな技術と豊富な経験を活かし、地域の患者さんに寄り添った診療を行っています。