医療の未来をデジタルで切り拓く!病理診断の課題に挑む熱い思い–【LUMIPATH Clinic】四十物 絵理子 院長インタビュー
2026.04.01
小児科と児童精神科の架け橋に。はせがわこどもクリニック・長谷川雅文院長が語る「地域で育む子どものこころとからだ」
はせがわこどもクリニック
院長 長谷川 雅文
京都市中京区に位置する「はせがわこどもクリニック」。ここでは一般的な小児科診療に加え、子どもの発達やこころのケア、その保護者のケアまで含めた専門的かつ包括的な診療が行われています。院長を務める長谷川雅文先生は、小児科領域(小児科専門医)・精神科領域(精神保健指定医)・児童精神科領域(子どものこころ専門医/指導医)など、子どものこころとからだの成長を支えるために必要な専門領域の資格を併せ持つ、全国でも数少ない医師の一人です。「病院の中だけで完結する医療ではなく、社会全体で子どもを支えたい」と語る長谷川院長。今回のインタビューでは、先生が医師を志したきっかけから専門領域へのこだわり、スタッフ教育、そして地域と共に築き上げたい未来のビジョンなどお話を伺いました。
—まずは、長谷川先生が医師を志したきっかけについて教えてください。
学生時代、私自身がよく怪我をして保健室にお世話になっていたこともあり、もともと医療は身近な存在でした。ただ、保健室に通う中で印象的だったのは、怪我だけでなく本当にさまざまな理由で訪れる同級生や先輩・後輩たちの姿でした。からだの不調だけでなく、いろんな原因で「しんどい思い」を抱えている人がいるのだと知ったんです。その時の気づきが原体験となり、子どもたちの心身に一番近い立場で寄り添える「小児科」の道へと自然に進んでいきました。
—小児科医として歩まれる中で、なぜ「児童精神科」という専門性をプラスされたのでしょうか?
実習などを通じて、小児科には非常に幅広い専門領域があることを改めて実感しました。その中で、発達に課題を抱えるお子さんや、「こころ」の問題で悩むご家族の多さに驚き、より専門的なケアの必要性を痛感したんです。 この時、かつて保健室で、怪我だけでなく様々な理由でしんどさを抱えていた同級生たちの姿が、当時の記憶と鮮明にリンクしました。「からだ」と「こころ」は切り離せないものだと、原体験を通じて感じていたからです。 しかし、20年ほど前の当時は、「からだ」を診る小児科と、「こころ」を診る児童精神科が今よりも分断されている状況にありました。「どちらも一人の子どものことなのに、なぜバラバラなのだろう」という当時の疑問が、「からだ」と「こころ」の両方の領域をイチから専門的に学ぶ原動力となりました。
—実際に「からだ」と「こころ」の両方を診ることができる強みは何ですか?
例えばこころの不調からくる症状だと思っていたことが実は身体的な疾患が原因であったり、 その逆だったりすることは少なくなく、片方のみの視点だけだと診断や適切な治療にたどり着くまでに時間を要してしまうこともあります。小児科・児童精神科の両方の専門性を併せ持つことによって、より精度の高い診療を目指せると考えています。
—多くの経験を積まれた後、勤務医ではなく「開業」という道を選んだ理由を教えてください。
病院勤務ではどうしても「診療報酬」や「組織のルール」という枠組みの中で動かざるを得ない場面があります。例えば、「この子にはもっと個別での関わりの時間が必要だ」と思っても、病院で定められた基準の範囲外の対応が難しいことが多いのです。自分の理想とする「柔軟で質の高いケア」を実現するには、自らクリニックを運営し、たとえ時には採算に見合わない部分があったとしても、独自の判断でプログラムを組める環境が必要だと決断しました。
—「医療機関の中だけで完結しない医療」を目指されているそうですね。
はい。子どもの発達や「こころ」の課題は、医療機関が直接関わることができる時間以外の残りの99%以上、つまり学校や家庭、地域の中で生じています。そうした中で、 医療機関という限られた環境で、短時間の指導や処方で可能な支援には限界があります。医療として適切な対応ができたとしても、それだけで「その子に必要な支援」を十分に提供することは難しいと考えています。
—開業時期はコロナ禍の真っ只中でしたが、苦労された点はありますか?
開院時はまさにコロナのピークで内覧会すら満足にできない状況でした。でも逆に言えば「そんな時だからこそ物件の条件をじっくり選べた」という側面もあります。当院には24時間稼働できる貸しスタジオを併設していますが、そうした特殊な設計が可能だったのもこの時期にこだわって準備を進めた結果だと思っています。
—クリニックのスタッフ教育において、長谷川先生が大切にされていることは何ですか?
大切にしているのは、スタッフ一人ひとりの「個人のキャリア」を尊重することです。当院では年に一度、全員と1対1で面談を行います。例えば心理スタッフの場合「将来自分のカウンセリングルームを持ちたい」といった夢があるなら、その実現のために当院でどんな実績を積み、どんな技術を学ぶべきかを一緒に考え、具体的な業務に落とし込んで伝えます。 全く同じ「クリニックとして必要な業務」をお願いするにしても、個人の成長に繋がるビジョンを共有しているかどうかで向き合い方は変わります。スタッフ自身が成長を実感しやすい環境下で仕事に取り組めるよう、常に意識しています。
—非常に専門性の高い職場ですが、採用についてはどのようにお考えですか?
実は、最初から児童精神科の経験がある人はほとんどいません。一般的な小児科の経験のみであったり、医療機関での勤務自体が未経験という方も少なくありません。ですから、採用の段階ではこれまでの経験よりも、「この分野に興味があるか」「学びたいか」という意欲を何より重視しています。
—院内の連携で工夫されている点はありますか?
大切にしているのは、医師・看護師・心理士・精神保健福祉士・ショートケアスタッフ・受付事務など全てのスタッフがチームとして同じ目線で患者さんに向き合うことです。それぞれの専門性や役割を活かしつつ、現場で個人の判断で動ける「遊び(柔軟性)」を持たせています。私がすべてを決めるのではなく、スタッフ自身が現場で感じたことをフィードバックし、一緒にプログラムを改善していく。そんな風に「みんなで作り上げている感覚」を共有することを大切にしています。
—今後、クリニックとして新しく取り組もうとしていることはありますか?
この4月から院内からの訪問看護の開始や「健診後のフォローアップに特化した外来」を本格始動させます。自治体の健診で「発達について気になることがある」と指摘されたものの、どこに相談すればいいかがわかりにくく、療育の開始までも数ヵ月以上待たされる…という現状を改善したいと考えています。
—地域社会との連携において、どのようなビジョンをお持ちですか?
社会全体の「子育ての底上げ」をしたいと思っています。2025年からは自ら支援者向けのセミナー企画もスタートさせており、今後は企業向けのセミナーや、保育園・学校への情報共有にもさらに積極的に取り組んでいく予定です。 医療機関の中だけで完結するのではなく、子どもを取り巻くすべての大人たちが、発達や「こころ」の課題について正しく理解していれば、子どもたちはもっと生きやすくなるはずです。「からだ」と「こころ」の両面を診てきた20年ほどの経験があり、そして自らの理想とするケアを形にできる現在の環境(クリニック)があるからこそ、私にしかできない形での地域貢献を形にしていきたい。そうした活動を通じて、地域全体で子どもたちを見守る意識を少しずつ変えていければと思っています。
—最後に、これから開業を目指す先生へメッセージをお願いします。
勤務医時代は、外来業務・病棟業務・当直業務が主な業務であり、月に10数回の当直も行っていて肉体的には負担はありましたが診療に専念することができていました。開業後は、診療に加えて、経営・人事・経理・仕入れ・SNS運用など全てを1人で行っており、勤務医時代とは比べものにならないほど大変になりました。しかし、その分「自分が必要だと感じていること」をダイレクトに形にできる喜びがあります。もし日々の診療の中で「こうすればもっと質の高い医療が提供できるが、現在の環境では難しい」と感じる部分があるのであれば、ぜひ勇気を持って一歩踏み出してみてください。もし小児科・児童精神科領域の先生方で当院の取り組みや理念に共感をしていただける先生がいれば、ぜひ情報共有や連携させていただきたいと思っています。 同じ志を持つ仲間が増えれば、日本の「子どもの未来」はもっと明るくなると信じています。
Profile
院長 長谷川 雅文
平成20年に鳥取大学医学部医学科を卒業。京都第二赤十字病院での研修を経て、小児科医としてのキャリアをスタートしました。同病院で小児科専門医を取得し、救急医療の最前線に携わり続けながらも、日々多くの親子と向き合う中で、発達や「こころ」の課題に対するより深い専門的支援の必要性を痛感。 そこで小児科診療を継続しながら、平成25年より医療法人杏和会 阪南病院にて精神科・児童精神科を専攻。臨床経験を積み重ね、精神保健指定医、および子どものこころ専門医を取得しました。 また、病院での勤務医の傍ら、東大阪子ども家庭センターや堺市立北こどもリハビリテーションセンターの嘱託医も歴任。「からだ」と「こころ」の両面から子どもと家族を包括的に支える経験を積み、令和3年6月、京都市中京区に「はせがわこどもクリニック」を開院いたしました。現在は、特定の専門枠にとらわれず、これまでの研鑽を活かした質の高い子育て支援を目指し、日々診療に当たっています。