Interviewインタビュー

「血液内科専門医」の知見と「がん緩和ケア」で患者様の人生をサポート

HOME CARE CLINIC N-CONCEPT

院長 宮下 直洋

在宅医療がますます注目される現代において、HOME CARE CLINIC N-CONCEPTの宮下 直洋院長は、地域に根差した医療を提供するだけでなく、血液内科医としての高度な専門性とがん緩和ケアへの深い知見を持つ、非常に稀有な存在です。高校生の時に直面したお母様の難病という経験が、宮下院長を医師の道へと進ませました。大学病院での研鑽を経て在宅医療の道を選び、特に病院では難易度が高いとされる血液疾患やがんの患者様に対して、自宅での質の高い医療と「最高の人生」を送るためのサポートを提供されています。患者様一人ひとりの人生に寄り添い、最期までその人らしく生きるための選択肢を提示し続ける宮下院長の医療への熱い思いと、これからの在宅医療の未来について、詳しくお話を伺いました。

「最高の人生」をサポートする在宅医療のスペシャリスト–HOME CARE CLINIC N-CONCEPT 宮下 直洋 院長インタビュー

医師を志した原点と専門性への想い

まずは、宮下先生が医師を志された、その原点となるきっかけについてお聞かせいただけますでしょうか?

私が医師を志したのは、中学2年生の時に、私の母親が「多発性骨髄腫」という血液の癌に罹患したことがきっかけです。母の病気を治したい、母を助けたいという一心で医師を目指すようになりました。

その後、高校1年生の時に、お母様は残念ながら亡くなられたとお伺いしました。その時の心境の変化などはありましたか?

そうですね、骨髄腫という病気は、当時も今も「治る病気」ではないのですが、当時は特に治療が厳しく、宣告されてから約2年で亡くなってしまいました。正直なところ、母を助けたいという具体的な目標がなくなってしまい、「一度は医師の道を諦めようかな」と考えた時期もありました。しかし、最終的には、この経験を通じて得た「誰かを助けたい」という気持ちを大切にしたい、そして、このきっかけを与えてくれた母に報いたいという思いから、再び医師を目指すことを決意しました。

お母様の病気が血液の癌であったことから、最初から血液内科医を目指されていたのでしょうか?

医師になる前から、血液内科医になりたいという思いは強く持っていました。骨髄腫という病気と闘いたいという意志があったので、研修医を終えた後も、最初から血液内科に進むことは決めていました。

在宅医療への転身とクリニックの独自性

大学病院や関連病院で血液内科医としてご活躍されていた中で、在宅医療、そして開業という道を選ばれたのは、何か特別な出来事や思いがあったのでしょうか?

元々、私の医師としての目的は「病気を治す」ことでしたので、大学病院などの施設で研鑽を積むこと自体は自然な流れでした。しかし、大学院で研究業務に専念していた時期に、臨床現場を少し引いた視点から見る機会があったんです。その際に、大学病院では治すことに重点を置きがちですが、「治す治療をしない」という選択、つまり、自宅で病気と付き合いながら、残りの人生を自分らしく送るという選択肢も、患者様にとって重要なのではないかと考えるようになりました。

病院では治すことに重きが置かれる分、在宅での緩和ケアのような選択肢が少ないと感じられたのですね。

その通りです。特に血液疾患の場合、輸血や特殊な抗がん剤治療が必要なケースが多く、一般的な内科よりも在宅での対応が難しいとされていました。そのため、他の内科分野では「治らないなら家に帰る」という選択肢があっても、血液疾患の分野では在宅医療の道筋がほとんどなかったんです。

その道筋を、ご自身で作りたいという思いが、在宅医療への転身につながったのですね。

はい。在宅医療を行う診療所に勤務した後、「この分野こそ、自分の専門性と経験を活かして、新たな道筋を作れるのではないか」という思いが強くなり、勤務医という立場では方針や自由度に限界があると感じたため、自分で理想とする医療の形を追求したいと決意し、開業に至りました。

HOME CARE CLINIC N-CONCEPT様では、「内科」「血液内科」「緩和ケア内科」の3つの診療科目を掲げていらっしゃいますが、特に力を入れている分野について教えてください。

当院では、私の専門である血液内科と、がん緩和ケアに特に重点を置いています。訪問診療を通じて、血液疾患やがんの患者様に対して、自宅での質の高い医療を提供し、患者様の「最高の人生」をサポートしたいと考えています。

患者様の人生に寄り添う診療ポリシー

先生のクリニックは、特に血液疾患やがんの患者様にとって、在宅での生活を可能にする大きな選択肢を提供されているのですね。

もちろんです。「治せる病気は治したい」という思いは今も変わりません。しかし、治療のメリット・デメリット、そして患者様ご自身の「どう生きたいか」という希望を尊重し、リスクを負ってまで治療をしないという選択も含め、複数の選択肢を提示することが大切だと考えています。

治療をするかしないかの判断において、患者様本人やご家族の意向を最優先されているのですね。

はい。当院では、訪問診療を通じて、患者様ご本人やご家族とアドバンス・ケア・プランニング(ACP:人生会議)を重ね、その方の人生の目標や価値観に沿った最良のサポートを「伴走者」として提供することを常に意識しています。医療はあくまで、その人の人生の一部分として関わらせていただくサポート役であるというスタンスです。

先生のクリニックでは、患者様やご家族から感謝の気持ちがこもったお言葉や、お礼のお手紙などをいただくこともあるとお伺いしました。どのような瞬間にやりがいや喜びを感じられますか?

そうですね、やはり、病院では難しいとされた、自宅での輸血や抗がん剤治療といった取り組みを私たちが実現したことで、「最期まで自宅で過ごすことができました。ありがとう」といったお言葉をいただく時が、最も嬉しく、この仕事の意義を実感する瞬間です。私たちの取り組みが、患者様にとって「最高の人生」をサポートすることにつながっているという実感が、何よりの喜びです。

先生が、患者様とのコミュニケーションにおいて特に意識されていることはありますか?

患者様やご家族と接する際は、相手を人として敬うことを大切にしています。特に医療者側が専門知識を持っているからといって、上から目線で接したり、ため口になったりしないよう、人生の先輩として尊重する姿勢を意識しています。また、職員にも、レスポンスの速さや、的確で分かりやすい伝え方を指導しています。

チーム・地域との連携と未来への展望

今後、クリニックをどのような組織にしていきたいか、短期的なビジョンをお聞かせください。

まずは、同じ熱い思いと志を共有する「仲間」を増やしていくことです。医師一人が全てを担うには限界があり、地域の医療インフラとして持続可能な形で在宅医療を提供していくためには、医師だけでなく、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなど、様々な職種の仲間が必要です。

診療以外の活動として、教育や研究にも力を入れたいと仰っていましたね。

はい。診療だけでなく、教育と研究にも力を入れ、この三本柱で組織を強固にしていきたいと考えています。研究面では、学会発表や論文を通じて、直接会うことのない全国・全世界の患者様に貢献したいと考えています。

教育面では、どのような取り組みを考えていますか?

教育面では、地域の訪問看護ステーションや薬局と協働して勉強会を開いたり、YouTubeなどのメディアを活用した情報発信を通じて、在宅医療の底上げに貢献したいと考えています。札幌発で全国・全世界に貢献できるような組織を目指したいです。

最後に、これから開業医を目指す、あるいは在宅医療に興味を持つ医師に向けて、宮下先生から一言メッセージをいただけますでしょうか?

在宅医療の分野は、ますます競争が激化しています。生き残るためには、ただ一般的な診療を行うだけでなく、「自分ならではの専門性や強み」を明確に打ち出し、差別化を図ることが重要だと思います。そして、自分一人で抱え込まず、頼れるところは頼り、チーム全体で地域を支えていくという意識を持って、多くの仲間と連携しながら、このやりがいのある在宅医療の道に進んでくれる方が増えることを心から願っています。

Profile

院長 宮下 直洋

HOME CARE CLINIC N-CONCEPT 院長の宮下 直洋先生は、2009年に北海道大学医学部を卒業後、札幌東徳洲会病院にて研修医としてのキャリアをスタートされました。その後、市立函館病院および札幌厚生病院の血液内科で経験を積み、2014年からはご自身の出身である北海道大学病院 血液内科にて医員、2018年からは特任助教として診療・研究に携わられました。この間、北海道大学大学院医学研究科博士課程を修了されています。2019年には同病院の客員研究員、小樽協会病院の非常勤医師として勤務し、そして2020年、ご自身の信念に基づき、HOME CARE CLINIC N-CONCEPTを開業し、院長に就任されました。また、2021年からはNPO血液在宅ねっとの理事も務められ、在宅医療の質の向上と普及にも尽力されています。特に血液内科専門医としての知識を活かし、病院では対応が難しいとされる血液疾患を持つ患者様への在宅医療に力を入れています。

会社情報

医院名

HOME CARE CLINIC N-CONCEPT

設立

2020年