地域に根差した「医療完結型」クリニックへの挑戦–田中整形外科まりこ眼科 田中 稔一郎インタビュー
2026.03.04
「入り口は広く、出口は専門的に」地域に寄り添う誠実な医療のカタチ
乾小児科内科医院
院長 乾 恵輔
群馬県高崎市の中心部に位置し,長年地域住民の健康を支え続けてきた「乾小児科内科医院」。4代目としてそのタスキを受け継いだのが、院長の乾恵輔先生です。乾先生は日本医科大学を卒業後、循環器内科の最前線で研鑽を積み、糖尿病と循環器という現代病において切っても切り離せない二つの専門領域を併せ持つ稀有な医師でもあります。 「医者は人助けの仕事」と語る乾先生の背中には、代々続く医師家系の伝統と最先端医療現場で培った確かな技術、そして何より患者一人ひとりと真摯に向き合う実直な姿勢が宿っています。今回のインタビューでは、専門医としてのこだわりから経営者として直面するリアルな苦労など伺いしました。
—さっそくですが、先生が医師を志したきっかけについて教えてください。
両親が医師だったことが最大の理由です。親族にも医者が多く、物心ついた時から医療は非常に身近な存在でした。人のために汗をかく仕事や、困っている方の役に立てる仕事に就きたいと考えたのがこの道の始まりです。
—医師になることは、かなり早い段階で決めていたのでしょうか?
明確に決めたのは高校生になってからですが、長男ということもあり周囲からは幼少期から期待されて育ちました。
—他の職業に興味を持たれた時期はありましたか?
実は一時期、ロボット工学に惹かれたこともありました。当時はソニーのAIBOなどが流行っていた頃で、最先端の技術開発も面白いかなと思っていました。ただ「一部の特別な才能が主役になる世界」よりも「コツコツと努力を積み重ねて誰かを支える世界」の方が自分に合っていると感じ、医師を目指しました。
—4代目として医院を継承することに、迷いはありませんでしたか?
自分にとっての医師像の原点は常にこの場所で働く両親の背中にあったので、継承すること自体に迷いは全くありませんでした。そして、大学病院等での勤務を経て自然な流れでここに戻ってきました。
—先生の専門領域である「糖尿病」と「循環器」について、強みを教えてください。
一人の医師が糖尿病と循環器の両方の専門医資格を持っているケースは、比較的珍しいかもしれません。糖尿病の恐ろしい点は様々な合併症にありますが、中でも命に直結するのが心臓の病気です。
—二つの専門性を持つことで、患者さんにはどのようなメリットがありますか?
病気の「入り口」である生活習慣病としての糖尿病から、その「出口」である深刻な心疾患まで、一貫した視点を持って診ることが可能です。
—勤務医時代と現在のような地域医療では、どのような違いを感じますか?
大学病院での高度な治療も充実していましたが、街のクリニックは患者さんとの距離が圧倒的に近いのが魅力です。毎日外来に立ち続けることで、ちょっとした体調の変化や生活背景についても患者さんの方から気軽に相談していただけるようになります
—診療において、特に心がけていることは何でしょうか?
窓口としての「入り口」は広く構え、それでいて実際の診療内容は高度に専門的である、というバランスを大切にしています。近隣の方々がどんな些細なことでも安心して相談できる場所でありたいですね。
—勤務医から経営者という立場になり、お気持ちの変化はありますか?
全く別物ですね。勤務医は病院の看板に守られていますが、開業すれば自分自身が看板になります。いかにして信頼を勝ち取り、足を運んでいただくかという経営の重みを日々感じています。
—経営者として、特に苦労されている点はどこでしょうか?
やはり「人のマネジメント」ですね。自分一人で完結する診察とは異なり、スタッフ全員が前向きに楽しく働ける環境を整えることは想像以上に難しい課題です。
—採用や集客など、工夫されていることはありますか?
一時期、患者さんが少ない時期があり、その頃は検索ワードを意識したブログを必死に書き溜めていました。すぐには結果が出ませんでしたが、時間が経つにつれて「ブログを見て来ました」という方が増えて今では大切な集客の財産となっています。
—デジタルトランスフォーメーション(DX)の導入も進められていると伺いました。
発熱対応などでマイナンバーカードのモバイル読み取りを導入したり、デジタル問診票を活用したりしています。一見、医療とは無関係に見える設備投資も、患者さんの利便性と安全性を高めるために欠かせないことだと考えています。
—「理念」について伺いたいのですが、先生が大切にしている軸は何ですか?
綺麗な理念を掲げるよりも、目の前の患者さんに対して「誠実」であること・決して嘘をつかないこと。それが一番の軸です。誠実さこそが私の揺るぎないポリシーですね。
—次世代への想いをお聞かせください。
子供には本人の意思を尊重したいと伝えています。なりたければ継げばいいし、そうでなければ自分の道を行けばいい。私自身もそうだったように、自分の人生は自分で決めるべきですから。ただ、私はこの地で頼りにされる「町のお医者さん」を全うし続けたいと思っています。
—最後に、これから開業を目指す先生方へメッセージをお願いします。
開業医は自分が動かなければ収入に繋がらないというシビアな世界です。しかし、患者さんと深く関わりその方の人生の一部に寄り添える喜びは、何物にも代えがたいものがあります。
Profile
院長 乾 恵輔
2006年日本医科大学卒業。同大学付属病院での初期臨床研修を経て、循環器内科(第一内科)へ入局。神栖済生会病院、博慈会記念総合病院、国立病院機構静岡医療センターなどで循環器内科医として研鑽を積む。その後、日本医科大学付属病院循環器内科助教、博慈会記念総合病院小児科勤務を経て、現在は乾小児科内科医院の4代目院長を務める。地域に密着した医療を提供し、糖尿病と循環器の双方の専門性を活かした診療に定評がある。