こころに寄り添い続ける医療を–こころサポートクリニック 平山 貴敏 院長インタビュー
2025.10.29
川里院長が目指す、最高レベルの歯科医療とスタッフが活躍できる環境づくり
かわさと歯科・矯正歯科
院長 川里 邦夫
日本の歯科医院はコンビニの数よりも多いと言われるほど増加の一途をたどっています。その中で、患者様から「選ばれる」歯科医院であるためには、どのような理念と技術が必要なのでしょうか。 今回ご紹介するのは、大阪府大阪市北区梅田にクリニックを構えるかわさと歯科・矯正歯科の川里邦夫院長です。院長は、日本歯周病学会歯周病専門医の資格をお持ちで、高度な知識と経験を駆使した総合的な歯科治療「包括歯科診療」を提供されています。 若き日の原体験から生まれたという歯科医師としての熱い思い、そして、開業から現在に至るまでの挑戦や苦労、さらに、ご自身の経験から生まれた人材育成への考え方など、様々なお話を伺いました。地域に根差したクリニックとして、患者様からの信頼が厚いかわさと歯科・矯正歯科の川里邦夫院長のビジョンに迫ります。
—さっそくですが、先生が歯科医師を志されたきっかけや、開業に至るまでの経緯をお聞かせください。
歯科医師になりたいという明確な目標は、中学1年生の頃に芽生えました。当時は虫歯が多く歯医者に通っていたのですが、そこでの経験が原点になっています。 当時は今ほど予約システムが発達しておらず、歯医者の待合室はいつも患者さんでいっぱいでした。しかし、実際の診察は2〜3分で終わり、「10時間待ちの2分診療」という状況でしたね。
—10時間待ちの2分診療とは、現代では考えられない状況ですね。
はい。そんな中で、自分自身も虫歯を治したいという思いがあり、歯医者という職業に興味を持つようになりました。ただ、私が中学生だった当時と今とでは、職業選択の幅が大きく異なります。当時は、勉強するか、スポーツで成功するか、医師・歯科医師になるか、といった選択肢が主で、高校卒業と同時に進路を決める必要がありました。
—その中で、どのような経緯で開業を決められたのでしょうか?
私は会社員になる気が全くなかったんです。会社の上司に理不尽なことを言われ、「イエス」か「はい」しか言えない環境で働くのが嫌でした。自分で仕事をして、自分のやりたいことを実現したいという思いがあったんです。それは、体育会系の部活で先輩に理不尽なことを言われていた延長のような感覚でしたね。
—なるほど。将来像をはっきりと見据えておられたのですね。
はい。卒業して最初に勤めた歯科医院が、たまたま日本でもトップクラスの「SJCD」というスタディグループの中心的な存在で、そこで包括歯科診療のコンセプトや治療法を徹底的に学ぶことができました。この最高水準の治療を、いつか自分のクリニックで実践したいと強く思うようになったんです。これが、開業を決めた大きな理由ですね。
—包括歯科診療とは、具体的にどのような治療を指すのでしょうか?
総合歯科診療とも呼ばれますが、虫歯や歯周病、矯正治療など、すべての分野の治療を一つの口の中の28本の歯すべてに対して、総合的に見て治療していくということです。質の高い治療を提供するためには、当然ですが、それに見合ったコストもかかります。しかし、私は「一番良いものを患者さんに提供し、それに合った対価をいただく」という信念で、現在も診療にあたっています。
—開業されてから、現在に至るまでで、最も苦労されたエピソードがあればお聞かせください。
一番苦労したのは、開業当初の「お金」です。最初に開業した場所は、賃料が140万円と高額で、人件費なども含めると損益分岐点が850万円ほどでした。開業には2億円の費用がかかり、当初は運転資金も確保していたのですが、開業から半年で手元に残ったのは200万円しかありませんでした。
—そこからどのように乗り越えられたのでしょうか?
毎月1,000万円以上の売上を上げなければ、すぐに資金がショートしてしまう状況でした。自転車操業のような状態で、とにかく「来月も1,000万円を達成しなければ終わりだ」という危機感で、必死に診療を続けました。 この状態が9ヶ月間続いたのですが、10ヶ月目にたまたま自費診療で大きな治療が必要な患者さんが3人続けて来院されたんです。その方々のおかげで、一気に運転資金が1,200万円まで増え、なんとか持ちこたえることができました。あの時の3人の患者さんには、本当に感謝しています。
—まさに九死に一生を得た状況ですね。その状況で、先生がブレずに診療を続けられたのは、どのような思いからでしょうか?
「正しいこと、一番良い治療をやる」という信念があったからだと思います。だからこそ、質の高い治療を求めている患者さんが来てくださった。それが、結果的にクリニックの経営を救ってくれたんです。
—先生は現在、ご自身の診療理念や技術を継承するために、スタッフの教育で意識されていることはありますか?
今は、私自身が直接教えることはほとんどありません。上にいるスタッフが、新しく入ってきたスタッフに教育をしてくれるシステムが整っています。 教育において私が気をつけているのは、「余計なことは言わない」ということです。例えば、仕事ができない人に対して「頑張れ」と言うのは、現代ではパワハラになってしまう可能性もありますよね。だから、私はスタッフに「教えろ」とは言わず、「今、この子がこれができていないみたいだから、教えてあげてくれない?」という形で、上のスタッフに教えさせるようにしています。
—スタッフの採用について、何か工夫されている点はありますか?
私は「素直で打たれ強い人」を採用するようにしています。中途採用でプライドが高く、自己中心的な考え方を持つ人は、たとえ技術があっても、うちの理念に合わないことが多いんです。 それよりも、「できは悪くても、言われたことを素直に聞いて、努力できる人」のほうが、時間をかければ必ず成長してくれます。特に新卒の歯科医師や歯科衛生士は、素直な人が多いので積極的に採用しています。当クリニックでは、歯科衛生士が売上の半分を稼いでくれるほど活躍しているので、スタッフには本当に助けられています。
—先生にとって、理想のスタッフ像とはどのような方でしょうか?
プライドの高い人よりも、「覚えは悪いけど根性がある人」ですね。彼らは時間が経てば必ずできるようになります。当クリニックで働く人たちが、「ここで働けて良かった」「このクリニックを支えていきたい」と思ってくれるような、優しい環境を作ることが私の目標です。
—先生は現在、ご自身の評価として120点とおっしゃっていましたが、今後は何点を目指していきたいですか?
150点を目指したいですね。そのためには、私一人ではできない、より高度な分野に挑戦する必要があります。例えば、歯科医療は日々進化しているので、私自身が学んだことをさらにアップデートし、それを実践できる外部の優秀な人材とタッグを組むことが必要だと考えています。 そうすることで、治療のレベルも上がり、経営的にもさらに安定すると考えています。常に新しい技術を取り入れ、患者さんに最高水準の歯科医療を提供し続けること、これが私の変わらない目標です。
—最後に、これから開業を目指す歯科医師や、同じ境遇の先生方に向けて、メッセージをお願いします。
「嘘偽りはよくない」ということです。特に、今は広告やホームページで集客する時代です。実際にはできないのに「最高の治療」だと偽ったり、「一生保証」のような不確実なことを謳ったりするのは、患者さんや業界にとってマイナスでしかありません。 正しいことを正しく伝え、自分がやっていることに自信を持つことが大切です。私の経験上、正しい方法で努力すれば、必ず結果はついてきます。 そして、私自身の最終的な夢は、「老後を周りの人たちが優しく支えてくれる場所」を作ることです。体が動かなくなっても、スタッフや後輩たちがクリニックを運営してくれ、私に少しばかりの給料をくれる。そんな「持続可能な歯科医療」の形を、周りの人たちに支えられながら実現していきたいと思っています。
Profile
院長 川里 邦夫
ご自身の経験から歯科医師という職業に興味を持たれ、大学卒業後、一流の先生方が集うスタディグループ「SJCD」のコンセプトや治療法を徹底的に学び、実践されてきました。その学びへの探求心はとどまることなく、2007年の開業後も研鑽を続けられています。 保有されている日本歯周病学会歯周病専門医の資格は、歯周病の専門知識と高い臨床能力が認められた証であり、患者様に対して質の高い治療を提供する裏付けとなっています。 「今できる最高レベルの歯科医療を提供する」という強い信念のもと、患者様一人ひとりに合わせた「包括歯科診療」を実践し、口腔全体の健康維持に貢献されています。かわさと歯科・矯正歯科は、確かな技術と温かい心遣いで、患者様にとって最良のパートナーとなることを目指しています。