Interviewインタビュー

「女性の美と健康、その先の未来へ。女性医療クリニックLUNA・関口由紀が切り拓く、新時代の医療経営スタイル」

女性医療クリニックLUNA

理事長 関口 由紀

「女性医療クリニックLUNA」を率いる関口由紀理事長は、まだ日本に“女性泌尿器科”という概念が浸透していなかった時代から、いち早くその必要性を唱え、現場に立ち続けてきた女性医療のパイオニアです。泌尿器科を志した背景にある時代性や、幾多の苦難を乗り越えて独自のクリニック経営を確立してきた歩みには、医療従事者のみならず多くの現代人を勇気づけるヒントが詰まっています。今回は、開院から20年以上にわたり第一線で走り続けてきた関口先生に、これまでの採用やマーケティングの試行錯誤、そして未来に向けた新たな「夢」について、お話を伺いました。

女性医療クリニックLUNA 理事長・関口由紀先生が語る。女性医療のパイオニアが激動の20年で掴んだ「理想のクリニック経営」と「これからの夢」

医師としての原点と「女性医療」への目覚め

まずは関口先生が医師を志したきっかけからお聞かせいただけますか。

私が今60代前半なのですが、私たちの若い頃というのは、女性が男性に頼らずに社会で自立して生きていくためには、何かしらの「資格」をしっかりと取るしかない、という時代の最後の方だったんです。だからすごく小さな頃から「資格を取って自分の力で生きていくんだ」という強い自覚があって、その選択肢として医学部を選びました。もしあと20年遅く生まれていたら、また全然違う選択をしていたかもしれませんね。

その中で、当時はまだ少なかった「泌尿器科」を選ばれたのはなぜでしょう。

医師になってからどの科を選ぶかって、その後の人生を大きく左右しますよね。私は昔から、王道を行くよりも「隙間」とか「マイナー」なところに行った方が、自分という存在をニッチに活かせるんじゃないかという直感があったんです。当時の女性の泌尿器科医は全国でも300人くらいしかいない、まさにマイナーな分野でした。だからこそ、そこに挑戦する価値があると感じたんです。

泌尿器科医として経験を積む中で、現在の「女性医療クリニック」への想いはどのように芽生えたのですか。

しばらく勤務医として10年以上働いているうちに、アメリカなどの動向も含めて「女性医療」という新しい概念に出会ったんです。それまでは単に“泌尿器科の病院に来た女性の患者さん”を診ていたのですが、視点をガラリと変えて「女性医療という大きな枠組みの中で、特徴のある泌尿器科を展開していく」というアプローチを思いつきました。この広がりを持つ経験がとても新鮮で、自分で理想のクリニックをやってみたいというイメージが膨らんでいきました。

開業の危機と「クリニック体制」への最適化

勤務医からご自身のクリニックを開設するにあたっては、かなりご苦労もあったと伺いました。

そうですね、振り返っても私の人生の中で開業の時が一番のストレスだったと思います。実は当初は、すべて自分の資金で開業するつもりはなくて、資金を出してくれるという投資家の方がいたんです。ですが、私が理想とする総合的な女性医療のあり方と、その投資家の方が考えているビジネスとしての女性医療との間にギャップが生まれてしまって、結局そのお話は解消することになりました。

開業直前でそれは大変な危機ですね。どのように乗り越えられたのですか。

その時はすでにテナントも借りていましたし、私を信じて「一緒にやりたい」と言ってくれた婦人科や内科の女医さん、看護師さん、臨床検査技師さんなど、8人ほどの素晴らしいチームが出来上がっていたんです。みんなの人生を預かっている以上、もう後戻りはできない、「じゃあ、私が主になってやるしかない」と覚悟を決めました。

その後、グループは大阪へも進出するなどかなり拡大されましたが、現在の規模に落ち着いた経緯を教えてください。

一時は5クリニック・7フロアまで広げました。ただ、規模を拡大するほど、どうしても私自身の目が届きにくくなり、医療の効率や密度が落ちてしまう。私たちの医療が一番高いレベルを維持できて、コストパフォーマンスも良かったのは「1つのクリニックに3人の医師」で回している時だったんです。そこで現在は、あえて規模を3つのクリニックに縮小し、それぞれの特徴を深めるスタイルに落ち着かせています。

医療現場における人材採用と組織づくりの秘訣

医療業界全体で「人材採用」に悩む声が多いですが、LUNAグループはいかがですか。

おかげさまで、なんとかやっています。特に最近の方が順調ですね。やはり20年近くこの分野をやっていると、私やクリニックの評判が伝わって、「LUNAで女性泌尿器を学びたい、働きたい」と言ってくれる女医さんたちが自然と集まってくれるようになりました。現在、女性泌尿器科の医師に関しては、十分に足りている状態です。

採用やスタッフの定着に関して、経営者として意識されていることはありますか。

もしスタッフから「辞めたい」と言われたら、たとえその時どんなに現場が回らなくなって困る状況であっても、本人の希望通りに速やかに辞めてもらう、ということです。「半年待って」などと引き留めると、そのスタッフの不満が周囲に伝染して、結果的にクリニックの経営や雰囲気に大きなマイナスを与えてしまいます。人がいない時はいないなりに回す工夫をする。それが結果的に、一番傷が浅く済みます。

人材の「教育」という面で、先生が工夫されていることはありますか。

実は、私は自分で人を手取り足取り教育するのが、あまり得意ではないんです。私は「起業家タイプ」なので、失敗を恐れずに新しい場所へ切り込んでいくのは得意ですが、そこから組織をきっちり構築して育てるのは不向きで。 ですから今は、私がこれまでの長い時間の中で少しずつ集めてきた、優秀で良き人材(事務長やベテランスタッフ)たちが、私の代わりに初期研修や動画マニュアルを使った教育システムをしっかりと作って、回してくれています。私は作られたシステムに文句を言わず、信頼して任せることに徹しています。

時代に合わせたマーケティングと未来への挑戦

クリニックの認知度を高めるための「集客・マーケティング」について、昔と今での変化はありますか。

ここも10年前とは完全に変わりましたね。昔は、私が本を出版したり、テレビなどのメディアに少し露出したりすれば、それだけで十分すぎるほど患者さんが集まる時代が10年くらい続きました。でも今のWEB社会では、そんな方法だけでは全く通用しません。今は、自分のエネルギーやクリニックの資本の「半分」はマーケティングに費やさないと、患者さんに認知すらしてもらえない時代になったと感じています。

未来のビジョンとして、新しく開設された沖縄のクリニックや、今後の展望について教えてください。

中高年の女性の美と健康を突き詰めていくと、最終的には「パートナー」も健康でなければ彼女たちは幸せになれない、という結論に至ったんです。そこで沖縄のクリニックは、あえて規模を小さくして「パートナーシップ・トラブル専門」という新しいコンセプトを掲げました。また、私自身がもうすぐバブル世代としての終活を意識する年齢ですので、自分が退いた後も、次の世代の女医さんたちがこの「女性泌尿器科の老舗」としての看板をしっかりと継承していけるよう、事業承継の準備も色々と考えながら動いています。

最後に、これから開業を目指す若い先生方や、人生の転換期を迎える女性たちへメッセージをお願いします。

人間、本当に好きでやりたいことじゃないと長続きしませんし、無理をすると病気になってしまいます。特に女性は、生理が始まると「生殖」のための遺伝子に支配されて、自分が本当にやりたかったことを見失いがちです。でも、40代や50代になって更年期や閉経を迎えると、ある意味でその支配から解放されて、子供の頃にピュアに「楽しい」と感じていた自分に戻れるチャンスが来ます。 開業も人生の選択も、お金や生活のためだけでなく、「子供の頃の自分がワクワクしたこと」を思い出して、それを軸に差別化していけば、絶対に後悔しないし成功すると思いますよ。

Profile

理事長 関口 由紀

医療法人LEADING GIRLS「女性医療クリニックLUNAグループ」理事長。1989年山形大学医学部卒業後、横浜市民病院での臨床研修を経て、1991年横浜市立大学医学部泌尿器科助手となる。2003年より同大学病院で女性泌尿器外来を担当。2005年4月に「横浜元町女性医療クリニック・LUNA」を開設し、2007年に医療法人LEADING GIRLSの理事長に就任。同年に横浜市立大学大学院にて医学博士号を取得し、客員准教授となる。その後、多角的な視点から医療経営を行うため、2009年に日本大学グローバルビジネス研究科を修了、経営学修士(MBA)を取得。2012年にはLUNA骨盤底トータルサポートクリニック院長を兼務し、2013年に横浜市立大学大学院医学部客員教授に就任。2017年からはグループの理事長職に専念となった。2019年にクリニックグループを統廃合して、閉経前の女性を対象にした女性医療クリニックLUNA横浜元町と、閉経後の女性を対象にした女性医療クリニックLUNAネクストステージをオープン。さらに2026年にアクティブシニアクリニックLUNA沖縄を開院して院長となり、現在中高年女性のQOL向上や、美と健康、さらにはパートナーシップに関わる先進的な女性医療を牽引し続けている。

会社情報

医院名

女性医療クリニックLUNA

設立

2005年4月