Interviewインタビュー

メンタルドクタークリニック院長・紫藤佑介先生が語る、開業のリアルと患者さんに寄り添う診療

メンタルドクタークリニック

院長 紫藤 佑介

精神科医として10年以上にわたり、延べ1万人以上の患者さんに向き合ってきた紫藤佑介先生。 高校時代、同級生の自死をきっかけに人の心の奥深さに興味を抱き、精神科医の道を志しました。現在は「メンタルドクター」としてSNS総フォロワー15万人を超える情報発信を行い、精神疾患に対する偏見をなくし、早期受診の大切さを伝え続けています。 そんな紫藤先生が開業した「メンタルドクタークリニック」は、安心して通える心療内科・精神科として地域に根ざしています。 今回のインタビューでは、開業までの道のりや診療で大切にしていること、そして経営者としての想いと今後のビジョンについて伺いました。

心に寄り添う精神科開業医のリアル

医師を志したきっかけと開業までの道のり

まずは、先生が精神科医を目指されたきっかけを教えてください。

高校生の頃は、正直医学部に行くつもりはなかったんです。父が精神科医だったので、進路を考えるときに「選択肢のひとつ」くらいにはありましたね。そんなとき、高3の受験期に同級生が自殺で亡くなったんです。衝撃的な出来事で、人の心や「なぜそうなってしまうのか」という心理に強い興味を持つようになりました。医者になりたいというより、最初から「精神科医になりたい」と思ったことが、今につながっています。

そこから開業に至るまでの経緯を教えていただけますか?

大学病院に入局し、資格や学位も取得しました。海外留学にも興味はあったのですが、コロナ禍に入ってしまいタイミングが難しくなったんです。さらに教授の交代で医局の雰囲気も変わりそうだなと感じました。大学病院でやれることは一通り経験したので、ここで一度外に出て、自分のスタイルで診療してみたいと思ったことが開業のきっかけですね。

普段の診療で意識していることはありますか?

精神科は、とにかく患者さんに寄り添うことが大切です。診察ではまず話をしっかり聞き、絶対に否定しないことを意識しています。薬による治療も行いますが、薬だけでは改善しにくい部分も多いので、生活習慣や心の環境を整えることも一緒に考えています。

開業後に感じたやりがいと苦労

開業してからこれまで、何か苦労したことはありますか?

開業医になって一番感じるのは、患者さんとのちょっとした行き違いがそのままクリニック全体の評価につながることです。雇われ医師のときは自分の対応だけに注意すればよかったのですが、開業するとスタッフやクリニックの印象もすべて自分の責任です。意図が伝わらずにマイナスの評価をいただくと、やっぱり落ち込みますね。

逆に「やっていてよかった」と思う瞬間はどんなときでしょう?

患者さんの表情が変わる瞬間ですね。初診ではとてもつらそうだった方が、通院を重ねるうちに「また頑張れそうです」と言ってくださると、本当に嬉しいです。精神科医としてのやりがいを実感します。

患者さんとの出会いと一人体制での診療

現在、患者様はどのような経路で来院される方が多いですか?

まだ取り組み途中ですが、ざっくり言うと広告やホームページ経由が3割、Googleマップなどの口コミ検索が3割、そしてSNSを見て来てくださる方が3割くらいですね。SNSは自分でも情報発信していますが、早期受診のきっかけになれば嬉しいです。

今は先生お一人で診療されているのですか?

はい、医師は僕ひとりで診ています。スタッフさんはサポートしてくれていますが、ドクターは僕だけですね。

実際、一人でクリニックを回すのは大変ではありませんか?

もちろん大変なこともありますが、まずは一人でやれるようになることが大事だと思っています。父も精神科医で、30年以上ひとりでクリニックをやってきました。僕も最初は「一人でやるのが普通なのかな」と思っていましたし、まずは自分だけでしっかり回せるようになってから、将来的には他の先生にもお願いしたいと考えています。

無理をしないクリニック経営とこれからの展望

クリニック運営で大切にしていることは何でしょうか。

自分のメンタルをすり減らさないことです(笑)。やることはたくさんありますが、無理をしすぎると診療に支障が出ます。患者さんも、余裕のない先生には診てもらいたくないと思うんですよね。だから、プライベートではサウナに行くなどしてしっかりリフレッシュしています。

今後2〜3年で目指すクリニック像はありますか?

奇をてらうことはせず、安心して通えるクリニックですね。僕自身も診療に立ちながら、少し余裕をもって運営できる体制にしたいです。患者さんもスタッフも無理せず、自然と回るクリニックが理想です。

ここ最近で、「導入してよかった」「他のクリニックにもおすすめしたい」というようなシステムはありますか?

電子カルテと予約システムですね。今は医療以外でも、思い立ったときにスマホで簡単に予約できるのが当たり前になっていますよね。飲食店や美容院もそうですが、医療も同じで、電話だけしか対応できないと患者さんの選択肢から外れてしまう可能性があります。 その点、オンライン予約があると患者さんにとっても便利ですし、こちらとしても予約の管理がしやすくなります。やはり、今の時代には最低限必要な仕組みだと感じています。

人生を楽しむことを忘れずに

これから開業を目指す先生へのメッセージをお願いします。

最近は若い先生でもすぐに開業される方が増えていますが、昔のように「開業すれば何とかなる」時代ではないと思います。大切なのは、開業して何をしたいのかを明確にすることです。利益だけを目的にすると難しい時代です。やりたいことをしっかり見据えて、その実現に向けて準備することが成功への近道だと思いますね。

最後に、先生にとっての夢や目標があればお聞きしたいです。

精神科医として思うのは、人生の幸せは「自分をどれだけ楽しませられるか」だということです。仕事で疲れ切ると、何が楽しいか分からなくなる方も多いですからね。だから僕自身も、楽しむ心を忘れずに生きることを目標にしています。夢というより、生き方の指針ですね。

Profile

院長 紫藤 佑介

「自分をどれだけ楽しませられるかが、人生の幸せにつながる」という紫藤先生の言葉には、精神科医としての経験と、人としての温かさがにじんでいます。 診療では患者さんの声に耳を傾け、無理をせず、心に余裕を持ちながら向き合う姿勢を大切にされていました。 その穏やかで誠実な対応は、患者さんに安心感を与えるだけでなく、医療に携わる私たちにとっても学びとなるものです。 無理をせず、自分らしく働く姿勢の先に、患者さんの笑顔がある――。 紫藤先生の生き方と診療スタイルは、多くの人の心に寄り添い続ける力を持っていると感じました。

会社情報

医院名

メンタルドクタークリニック

設立

2022年11月

従業員数

4名