あなたの甲状腺と、一生のパートナーに
2025.07.29
命のはじまりに責任を持つ
札幌西レディースクリニック
院長 馬場 征一
札幌市西区にある「札幌西レディースクリニック」で診療を行う馬場征一院長は、産婦人科の専門医として母体・胎児医療に携わる一方、厚生労働省での行政経験やへき地医療での実践など、多様なフィールドで経験を積んできた医師です。インタビューでは、豊富な臨床と制度の両面を見てきた視点から、これからの産婦人科医療のあり方について、穏やかな口調で丁寧に語ってくださいました。その言葉の端々からは、命に向き合う責任と、地域とともに医療を未来へつなげていく強い意志がにじみ出ていました。この記事では、馬場院長の医師としての原点から、診療に込めた理念、スタッフとの信頼構築、そして「22世紀へつなぐ医療」というビジョンまでを紐解いていきます。
—医師を目指したきっかけって、どんなところにあったんですか?
親族に医師がいたことと、医師は努力次第で自分も目指せると感じたのが出発点です。また、医師という仕事は枠にとらわれず、自分の信念で道を切り拓いていけるところに強く惹かれました。
—開業に至った経緯・理由は何ですか?
このクリニックは、継承するかたちで引き継ぎました。たまたま継承の話が出たことがきっかけですが、ちょうど産科のクリニックが地域から減っている状況もあり、自分の資格とも合致していたため、決断しました。
—先生の専門分野について、あらためて教えていただけますか?
私の専門は産科になります。
—これまでで一番大変だったことや、苦労したエピソードがあれば教えてください。
最も苦労したのはやはりスタッフとの関係性の構築でした。このクリニックは継承した形で、それまで私と一緒に働いた経験のあるスタッフはいませんでしたので、当然ながら不安もあったと思いますし、私自身も一人ひとりの人となりを理解するのに時間がかかりました。
—先生が「この仕事をやっていてよかったな」と感じる瞬間って、どんなときですか?
継承前の話になりますが、このクリニックでは一時期お産の取り扱いを中止していた時期がありました。私が継承するタイミングで、お産の診療を再開することにしたのですが、そのとき患者さんから「お産を再開してくれて本当によかった」と声をかけていただいたんです。その言葉が本当に嬉しくて、今でも印象に残っています。この地域ではお産を扱う医療機関が少なく、現在は月に20件ほどの出産に立ち会っています。地域の方々のニーズに応え、貢献できているという実感が、私にとってやりがいにつながっています。
—改めてになりますが、クリニックの経営理念を教えていただけますか?
私の経営理念は「22世紀時代へつなぐ医療」です。今まさに生まれてくる子どもたちは、これから22世紀を生きていく世代です。その子たちにとっての最初の一歩が“お産”であり、そのスタートが安全で安心なものでなければ、未来にはつながっていきません。だからこそ、私はこれからの時代を生きる子どもたちのために、その第一歩となるお産を、確かなものとして支えていきたいと考えています。
—今後2〜3年くらいで、こんなふうにしていきたいなっていうビジョンはありますか?
今後は無痛分娩に対応していきたいと考えています。また、分娩件数の増加によっては、新たに医師を採用することも視野に入れています。最終的には、私自身が現場を離れても安定して運営できるクリニックを目指し、チーム全体の体制づくりを進めていく予定です。
—導入された中で、これはよかったなというシステムや取り組みがあれば教えてください。
やはり、電子カルテや予約システムの導入でしょうか。業務の効率化はもちろん、患者さんにとっても利便性が向上したと感じています。また、ミキハウスさんとコラボして、オリジナルのキッズスペースも設置しました。小さなお子さま連れの方でも安心して通っていただけるよう、環境づくりにも力を入れています。
—先生自身がこれから実現したいこと、夢があれば教えてください。
私にとっての夢は、家族もスタッフも、患者さんも、関わるすべての人がそれぞれの幸せを感じながら日々を過ごしていけることです。何か大きな目標を追いかけるというよりも、日々の暮らしの中にある小さな幸せを一つひとつ噛み締めながら生きていけたらと思っています。
—これから開業を考えている先生や、同じような立場の方に向けて、ひと言アドバイスやメッセージをお願いします。
院長という立場になると、スタッフが本音を言いにくくなる場面もあります。だからこそ、表に出ない気持ちを汲み取ったり、相手の立場を理解する姿勢が大切だと感じています。また、経営には時に即断が求められる場面もあります。そのときに迷わず決断できるように、日々の生活の中でさまざまな経験を積み重ねておくことが大切だと思います。
Profile
院長 馬場 征一
札幌西レディースクリニックの理事長・院長を務める馬場征一先生は、産婦人科専門医としての豊富な経験に加え、厚生労働省での行政官や離島医療での勤務など、多様な経歴を持つ医師です。順天堂大学医学部を卒業後、母体・胎児専門の周産期医療を中心に研鑽を積み、医学博士号も取得。妊娠・出産を担う現場だけでなく、制度や地域にまで目を向けた広い視野を持つ先生は、取材中も言葉を丁寧に選びながら、患者さんや医療の未来に真剣に向き合う姿勢をにじませていました。時折見せる穏やかな笑顔と、自らの信条を大切にする芯の強さが印象的で、「22世紀時代へつなぐ医療」を理念に掲げる姿勢には、確かな信念と未来への優しさが感じられました。