医師を志した原点から、地域に根差すクリニック開業までの歩み
2025.08.01
脳と眠りを守り、より良い生活を支える医療をめざして
のむらニューロスリープクリニック
院長 野村 哲志
脳や睡眠に関する悩みは、日常生活の質を大きく左右します。「信頼できる先生に診てもらいたい」と多くの方が願う中で、のむらニューロスリープクリニック院長・野村哲志先生は、患者さん一人ひとりに誠実に向き合い、安心できる医療を届けています。 医師を志したのは幼い頃に祖父が脳卒中で倒れた経験がきっかけでした。「脳の病気を救いたい」という思いから脳神経内科の道へ進み、さらにパーキンソン病と深く関わる睡眠障害の研究へと広げてきました。診断によって患者さんの未来を変えられる可能性に魅力を感じ、早期発見・早期治療を信念に掲げています。 野村先生が大切にしているのは、目先の利益ではなく患者さんのより良い生活を支えること。クリニック名に「ニューロスリープ」と掲げたのも、その強い想いの表れです。 本記事では、野村先生の歩みと診療への想い、そしてこれから描く未来についてお話を伺いました。
—先生が医師を志されたのは、どんなきっかけだったのでしょうか?
小学校1年生の時、祖父が脳卒中で倒れました。右半身が動かなくなり、言葉も話せなくなってしまったんです。3年の闘病を経て他界しましたが、その姿を目の当たりにして「脳の病気は人の人生を一変させてしまう」と痛感しました。そこから「脳の病気を救いたい」と強く思うようになりました。
—子どもの頃の経験が医師を目指す原点になったのですね。専門に神経内科を選ばれたのはどうしてですか?
大学時代の研修でパーキンソン病の患者さんを受け持った経験が大きかったです。動きの違和感を訴えて受診された方でしたが、診察の中で初期症状だと気づき、治療につなげることができました。その時「診断が人の未来を変える」と実感しました。祖父の脳梗塞の経験からも、予防や早期治療の重要性を強く感じていて、それを実現できるのが神経内科だと考えました。
—そこから睡眠障害にも関心を持たれたのですね?
はい。鳥取大学でパーキンソン病を研究していた時、睡眠障害が病気の前段階になることが分かってきたんです。特に「レム睡眠行動障害」はパーキンソン病やレビー小体型認知症へ移行する可能性があることが明らかになってきました。そこで「早期発見ができれば人生を変えられる」と考え、睡眠医学の研究に力を入れるようになりました。オーストリアのインスブルック医科大学に留学して多くの症例を学んだことも、大きな糧になっています。
—クリニックではどのような診療をされていますか?
神経内科を軸に、睡眠外来や一般内科を行っています。頭痛やしびれ、パーキンソン病、認知症、不眠症や睡眠時無呼吸症候群など、幅広く診ています。睡眠の悩みは一人ひとり違いますので、薬や生活習慣、既往歴などを丁寧に伺い、その人に合った治療を進めます。睡眠薬だけに頼るのではなく、改善が見られれば薬を減らし、最終的には不要になることを目指しています。
—患者さんにとって安心できる診療を心がけているのですね。ちなみに最近、新しく導入されたシステムや機械などはありますか?
はい。「ミレボ」という認知症を調べる機器を試験的に導入しました。ゲーム感覚で検査ができるので、患者さんの不安や負担を軽減できます。検査や治療はできるだけ苦痛を与えないことが大切だと思っています。
—開業してみて分かったこと、学んだことはありますか?
医療機器は「必要だ」と思って買っても、ほとんど使わないものもあるんです(笑)。開業してみて初めて分かることですが、本当に必要かどうかをよく考えて導入するのが大事だと思います。
—経営をされる上で、大切にしているポリシーを教えてください。
目先の利益を追わないことです。経営者である以上お金のことを考えないわけにはいきませんが、まず私は医師です。不必要な治療はせず、患者さんが困った時に必要な医療を提供する。それによって生活の質を高め、健康寿命を延ばすことを大切にしています。
—今後、クリニックをどうしていきたいとお考えですか?
脳に関する疾患が起きないように予防に力をいれていきたいです。不要な治療はしないけれど、必要なことはきちんとやる。患者さんがより良い生活を送れるよう、クリニック全体で支えていきたいと考えています。
—先生にとっての夢を教えてください。
レム睡眠行動障害を早く見つけ、早期に対応できる医師でありたいです。早期発見ができれば、その後の人生を大きく変えられると信じています。
—最後に、これから開業を目指す先生方にメッセージをお願いします。
自分はこの分野の専門だ、と言える柱を持つことです。専門分野を持てば診療の軸がぶれず、開業後の苦労も減ります。専門性を生かして患者さんに貢献できることは、開業医にとって大きな強みになると思います。
Profile
院長 野村 哲志
のむらニューロスリープクリニック院長の野村哲志先生は、小学生の頃に祖父が脳卒中で倒れた経験をきっかけに医師を志しました。島根医科大学(現・島根大学)を卒業後、鳥取大学医学部附属病院で脳神経内科を中心に研鑽を積み、パーキンソン病や睡眠障害の研究にも携わりました。さらにオーストリア・インスブルック医科大学への留学を経て、幅広い症例を経験。2018年に米子市でクリニックを開業し、神経内科と睡眠外来、一般内科を通じて地域医療に貢献しています。野村先生は「目先の利益ではなく患者さんの生活を支えること」を信条に、脳疾患や睡眠障害の早期発見・予防的医療に取り組み、安心して相談できる医療を目指しています。