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2025.09.25
「地域に根差し、心とからだ診る」清風会ハートクリニック院長が目指す、新しい医療の形とは?
清風会ハートクリニック
院長 松本 健嗣
兵庫県丹波市氷上町に開院した「清風会ハートクリニック」。その院長を務めるのが、松本健嗣先生です。松本先生は、大阪公立大学医学部を卒業後、循環器内科医として研鑽を積み、アメリカのコロンビア大学でも研究活動を行うなど、国内外で幅広く活躍されてきました。都会での最先端医療に携わる道もありながら、地域に密着した医療の提供を決意された背景には、どのような思いがあったのでしょうか。清風会ハートクリニックは、先生の専門である循環器内科・内科に加え、精神科・心療内科の診療も行うという、珍しい特徴を持っています。心とからだの両面から患者さんを支えたいという松本先生の医療に対する真摯な姿勢と、地域医療の未来にかける熱い情熱について、詳しくお話を伺いました。
—医師を志されたきっかけについて教えていただけますか?
もともと負けず嫌いな子供で、スポーツでも勉強でも負けたくないという思いを人一倍強く持っていました。将来は人の役に立つ仕事をしたいという思いと、医学部という難関に挑戦したいという思いが合致したことが医師を志したきっかけです。また、母親が実は医学部に行きたかったけれども叶わなかったという話を聞き、その無念を、「私が叶えたい」という思いもありました。
—先生の専門分野と、予防医療への意識について教えてください。
初期研修が終わってからはずっと循環器内科医として、心臓や血管の分野を専門としてきました。最初は救急医療や重症患者さんを診ることに憧れ、急性期医療に邁進して参りましたが、臨床を続けるうちに、予防医学の重要性を痛感しました。「そもそも、こんな重症な状態になる前に治療を受けていればよかったのに…」という思いです。予防医学をライフワークにしていきたいという思いも、今回の開業のきっかけの一つになっています。
—開業されたきっかけや経緯についてお聞かせください。
私の妻の家族が、90年近くにわたり、丹波の地に根差した精神科医療を続けていることをずっと尊敬していました。ご存じの通り、地方では人口減少が加速しております。しかし、人口減少を上回るスピードで医療の担い手が減っているという問題が顕在化しつつあります。そこで、この地で地域医療の一役を担うことは、非常に意義のある選択肢ではないかと考え、開業を決意しました。
—診療において、特に意識されている点や大切にされていることは何ですか?
大切にしていることが二つあります。一つ目は、自分が本当に良いと信じている医療を実践することです。自分が良いと信じている医療を、自信を持って患者さんに提案したいと思っています。二つ目は、患者さんと一緒に治療方針を決めていくことを大切にしています。
—患者さんと一緒に治療方針を決める上で、具体的にどのようなことをされていますか?
医療には様々な選択肢があり、患者さんの信条や経済的な背景、ご家族の状況など、あらゆる面を総合的に考慮する必要があります。「この病態が考えられるから、この薬で治療しましょう」と一方的に決めるのではなく、いくつかの考えられる選択肢を提案し、患者さんやご家族との「合意形成」を大切にしながら、一緒に治療方針を決めていきたいと考えています。
—クリニックを経営していて、どういった時に「嬉しさ」や「幸せ」を感じますか?
患者さんが良くなって「良くなったよ」「ありがとう」と喜んでくださったときは、やはり嬉しいですね。また、クリニック経営は「自分の手の届く範囲にすべてがある」という感覚が強いんです。すべて自分で決めて、完結していくという感覚が、私にとっての大きなやりがいです。
—どのような患者さん層に来てほしい、もしくは幅を広げていきたいと考えていますか?
やはり一番得意としているのは生活習慣病の管理です。健診で異常を指摘された方にはぜひ受診いただきたいです。また、薬が多いので減らしたいという相談や、他のクリニックで悩みを言い出せなかった方も歓迎します。気軽に相談できるクリニックにすることで、より多くの方にアプローチしたいです。
—開業されてから、最も苦労されたエピソードをお聞かせください。
日々、試行錯誤の連続ですが、勤務医時代とは違い、開業医は「ジェネラリストとしての幅広い診療スキル」が必要であることや、「経営者」としての役割も担わなければならない点ですね。これまでは専門外としていた病態にも対応するため、日々勉強し、あらゆる角度から降ってくる課題を解決していくのは大変だと感じています。経営面においては、コスト管理や地域のニーズに合わせた設備投資のバランスといった、経営者としての経験値を高めていくことに苦労しています。
—職員の採用は順調でしたか。また、人材育成で意識されている点はありますか?
全スタッフで10人未満の小さな規模ですが、幸いにも非常に良いスタッフに恵まれました。人材育成については、スタッフの「自律性」を大切にしたいと考えています。自分で解決できることは、自分でその場で動いて解決する。そういった自発的に動ける風潮を作っていくことを意識しています。
—クリニック経営における「経営理念」があれば教えてください。
経営において一番大切なのは、持続可能な経営をすることと考えています。「自分が良いと思える医療」を貫くことで、地域からの信頼を得ることこそ、結果的に経営が成り立つ道だと思っています。
—最近導入したシステムやサービスで、特に役立っているものはありますか?
クラウドカルテは非常に便利だと感じています。サーバーを置かずに済み、システムのアップデートもタイムリーです。システム連携も優れており、患者さんに「もうデータが飛んでいるんですか」と驚かれることもあります。また、ウェブ予約・ウェブ問診システムも役立っています。事前に患者さんの情報を把握することで、質の高い診療を落ち着いて提供できるようになりました。
—2〜3年後のクリニックのビジョンをお聞かせください。
まずは、当院の存在をまだ知らない地域の方々に、「丹波市なら、ハートクリニックがあるよ」と選択肢の一つに挙げていただけるような場所にしたいです。そして、地理的な距離感を克服するため、オンライン診療などを取り入れ、診療圏を広げていきたいと考えています。
—これから開業を目指す先生方へ、アドバイスをお願いします。
開業医は、以前と違ってなんとなくやっても経営が成り立つ時代ではなくなりました。「何がしたいのか」というビジョンやポリシーを明確にする必要があると思います。また、診療報酬やそれを取り巻く制度は常に変化するため、あらゆる角度から常に勉強し続けないといけません。
—先生のクリニックが持つ強みについてお聞かせください。
当院の強みは、循環器内科と精神科・心療内科という二つの「ハート」を組み合わせた診療体制です。心臓や身体が悪い人も、心が病んでいる人も、どちらか分からない人にもリーチできるのが強みです。内科医がアプローチしにくい心の悩み、精神科医がアプローチしにくい体の悩み、ハートクリニックではどちらもカバーできます。
—最後に、松本先生の夢をお聞かせください。
私の夢は、丹波市で健康に関することでお困りの時に「それならハートクリニックに行こう」と、自然に言ってもらえるクリニックにすることです。心と体の不調に、当院が「相談にのってくれる場所」として地域に定着し、長く地域に貢献していくこと。これが私の夢です。
Profile
院長 松本 健嗣
清風会ハートクリニックの松本健嗣院長は、2008年に大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科を卒業されました。その後、大阪掖済会病院や大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部附属病院での初期研修を経て、2010年から2018年まで大阪市立大学(現:大阪公立大学)循環器内科に入局し、関連病院で臨床と研究を重ねられました。2018年から2020年には、アメリカのコロンビア大学医療センターで高血圧と心血管イベントの関連について研究に従事。帰国後は、2020年から2024年まで和泉市立総合医療センターで循環器内科部長として、豊富な経験と知識を活かし臨床・教育・研究に尽力。そして、2024年からは医療法人社団清風会 香良病院の内科副院長を兼任しつつ、地域医療の充実に貢献するため、2025年に清風会ハートクリニックの院長として新たな挑戦をスタートされました。