こころに寄り添い続ける医療を–こころサポートクリニック 平山 貴敏 院長インタビュー
2025.10.29
あなたに寄り添う、もう一つの「家族」のような医療
しんどう内科・消化器内科クリニック
院長 進藤 久美子
山梨県中巨摩郡昭和町に位置する「しんどう内科・消化器内科クリニック」は、地域の方々の身近な健康相談所として、信頼を集めています。特に女性医師である進藤久美子院長が、女性特有の悩みに配慮した丁寧な診療や内視鏡検査を提供している点も大きな特徴です。患者さん一人ひとりに誠実に向き合い、専門性を活かした質の高い医療と、温かい人間味あふれるサポートを両立されています。今回は、長年の経験と地域医療への熱い思いを持つ進藤院長に、医師を志したきっかけから、クリニック開業への経緯、そして今後の展望について詳しくお話を伺いました。地域の方々の健康を第一に考える進藤院長が描く「かかりつけ医」の理想像に迫ります。
—先生が医師を志された、一番のきっかけを教えていただけますでしょうか?
おそらく、小学校に入った頃の体験が原点だと思います。1年間という短い間に、祖父や叔父、叔母など、可愛がってくれていた親戚が立て続けに3人亡くなった時期がありました。その時、お葬式が続く中で、純粋に「どうしてこんなに人が亡くなってしまうのだろう」と感じたんです。また、その翌年には40代の叔父が亡くなったのですが、当時、入院には必ず付き添いが必要でした。私は学校が終わると電車で病院まで通い、夜に母と交代するまで付き添いを続けていました。その経験を通して、「病気はこんなにも人を苦しめるものなのか」「大好きだった叔父が弱り、痩せていく姿を見て、何とかできないものか」と強く思いました。これが、医師を志す大きなきっかけになったと思っています。
—長い医師生活の中で、特に地域医療に尽力されてきた背景には何があるのでしょうか?
私は地域医療の貢献を目的とした大学(自治医科大学)の出身ですので、卒業後は自分の出身県にあるへき地など、医師が少ない地域での勤務が義務付けられていました。私の場合は9年間、診療科を問わず、そこで求められる全ての基本的な医療を担うという教育を受けてきました。その結果、20年以上にわたり地域での診療に携わることになったのですが、そこで患者さん一人ひとりの家族の一員のように深く関わり、「体調のことは何でも一番に相談してもらえる」という環境で医療を提供できることに、大きなやりがいを感じていました。
—長年の地域での勤務を経て、ご自身のクリニックを開業しようと決断された経緯をお聞かせください。
地域での医療はとても充実していたのですが、私自身の家族、特に子どもの教育や生活を考えたときに、どうしても住居を都市部に移す必要が出てきました。引っ越した後も同じように地域医療を続けようとしたのですが、以前のへき地とは異なり、患者さんの自宅まで片道30分以上、場合によっては1時間以上かかってしまう状況になりました。これでは、「往診の依頼にすぐに駆けつけられない」「困ったときに一番に頼れる」という、自分が理想とするかかりつけ医としての機動力が失われてしまうと感じたのです。
—それで、ご自宅の近くで新たにクリニックを開設されたのですね。開業場所はどのように決められたのでしょうか?
はい。患者さんが困ったときにすぐに駆けつけられるように、自宅から近くて、地域密着の医療を提供できる場所にクリニックを開設することを決意しました。保険診療上の往診可能エリア(診療所の所在地から半径16km以内)に住居が入るよう、細かく場所を探しました。これが当クリニックのコンセプトである、「真のかかりつけ医」としての医療提供に繋がっています。
—開業される上で、スタッフの採用はスムーズに進みましたか?また、教育面で意識されていることは何でしょうか?
幸いなことに、優秀な方々が集まってくださり、採用は順調でした。ハローワークを通じて声をかけた方や、ご縁があった方ばかりです。スキル面では全く問題ないので、私自身が意識して行っているのは、「人として」の教育です。患者さんを単なるお客様としてではなく、一人の人間として、優しい気持ちで接してほしいと伝えています。当院は人対人の医療を提供する場ですから、思いやりを持った接遇が最も大切だと考えています。
—逆に、医療の現場で「この仕事をしていてよかった」と幸せを感じる瞬間はどのような時ですか?
当クリニックは「消化器内科」を標榜していますので、胃カメラや大腸カメラの検査を積極的に行っています。女性の患者さんの中には、男性医師による検査に抵抗を感じる方も多く、当院が女性医師による内視鏡検査を全面的に打ち出していることで、遠方からわざわざ来てくださる方がたくさんいらっしゃいます。検査後に「今までで一番楽だった」「女性に検査してもらえてよかった」というお言葉をいただくことが、何よりも嬉しい瞬間です。女性特有のデリケートな悩みに寄り添い、少しでも検査のハードルを下げることができたと感じています。
—開業されてまだ日は浅いですが、現在、経営者として特に苦労されていることはありますか?
診療に関することは長年の経験があるので全く苦労はありません。ただ、慣れない行政関係の書類作成や事務手続きといった「経営者としての仕事」に日々悪戦苦闘していますね(笑)。あとは、導入した予約システムのクレジット決済機能に、多額の手数料がかかってしまうことが分かって、後悔している点でもあります。
—女性医師として、集患や患者さんに配慮するために工夫されていることはありますか?
女性が内視鏡検査を敬遠する理由には、「恥ずかしい」「怖い」といった要因があります。そのため、ホームページでは女性医師であることや、女性に配慮した検査環境をアピールしています。その結果、遠方から検査を受けに来てくださる患者さんがいるので、この取り組みは続けてよかったと思っています。また、診察券や診察なしでの会計機能などは便利ですが、現段階では患者さんとのコミュニケーションを大切にするため、システム導入による利便性と、人との関わりのバランスに悩んでいます。
—今後、2〜3年で「しんどう内科・消化器内科クリニック」をどのようなクリニックにしていきたいか、ビジョンをお聞かせください。
最終的には、この地域の方々の「人生全体を支えるかかりつけ医」になりたいと考えています。今、たまたまお腹の不調で来院されている患者さんも、他の持病で別の病院にかかっているケースがほとんどです。しかし、患者さんの健康全てをトータルで把握し、内科のことは何でも相談してもらえる、言わば「家庭の健康相談窓口」のような存在になりたいですね。特定の病気だけでなく、どんな悩みでも「まず、しんどう内科・消化器内科クリニックに相談してみよう」と思ってもらえるような、信頼できる環境を築いていきたいです。
—具体的には、患者さんとはどのような関係を目指されていますか?
この地域の患者さん全員を診られるようにしたいです。お子さんからお年寄りまで、三世代、四世代にわたって、生まれてから在宅での看取りまで、全てを任せていただけるような、地域と一生を共にする医療を提供していきたいと考えています。
—最後に、これから開業を目指す、あるいは若手医師に向けてメッセージをお願いします。
開業を考えているのであれば、「やってみたい」と思ったその気持ちを大切にして、一歩踏み出してみることが一番だと思います。そのために費やす努力は、きっと楽しいものになるはずです。また、医師としての専門的な準備を怠らないことも大切です。私は、子どもから高齢者まで、内科疾患全般を深く診てきたという経験が、今大きな自信になっています。もちろん、経営的な課題は後から出てきますが、まずは「目の前の患者さんのために」という熱意と、それに裏打ちされた確かな医療技術があれば、道は開けると信じています。
Profile
院長 進藤 久美子
しんどう内科・消化器内科クリニック 院長。一般社団法人日本内科学会 認定医・総合内科専門医、一般社団法人消化器内視鏡学会 上部消化管内視鏡スクリーニング認定医、大腸内視鏡スクリーニング認定医。大学卒業後は地域医療に貢献するため、医師が不足するへき地を含む山梨県内で約20年以上にわたり総合診療医として研鑽を積む。多くの患者さんやそのご家族に寄り添い、内科全般から専門的な消化器診療まで幅広く対応する中で、より地域に密着し、困ったときにすぐに頼れる「真のかかりつけ医」の必要性を痛感。その思いを実現するため、2025年に「しんどう内科・消化器内科クリニック」を開業。現在は、地域の方々にとって何でも相談できる身近な存在となるべく、日々診療にあたっている。趣味は幼少期から続けている水泳。