経営は品質の「後方支援」ではなく、品質を成立させる条件づくりそのもの–医療法人優美弘仁堂 常務理事 松本 琢也 氏インタビュー
2026.01.14
患者様一人ひとりに丁寧な医療を。印藤内科クリニック・印藤直彦院長が紡ぐ、地域医療の新たな形
印藤内科クリニック
院長 印藤 直彦
香川県高松市高松町、かつて地域医療に心血を注いだ一人の医師がいました。その遺志を継ぎ、2022年に「印藤内科クリニック」を開院したのが、印藤直彦院長です。印藤院長は大阪の第一線で消化器内視鏡のスペシャリストとして研鑽を積み、分院長として経営の舵取りも経験してきました。 「いつかは故郷の役に立ちたい」という想いを形にしたクリニックは、最新の内視鏡技術と、患者様の心に寄り添う温かなホスピタリティが融合した場所となっています。今回は、開院までの苦労や診療へのこだわり、そして未来への展望をじっくりとお伺いしました。
—さっそくですが、印藤先生が医師を志したきっかけを教えてください。
私の父が開業医をしていたことが最大の理由です。自宅のすぐ隣が診療所という環境で育ちましたので、父が地域の方々に頼られ、日々奮闘している姿を間近で見てきました。大きな事件があったわけではないのですが、物心ついた頃から、自分もいつか父のように「地域の人たちの役に立てる医師」になりたいと自然に思うようになっていましたね。
—大阪での病院勤務を経て、なぜ今、故郷の高松で開業しようと思われたのですか?
私は医師になった当初から、最終的には地域医療に携わると心に決めていました。大阪で長く消化器内視鏡の専門医として経験を積んできましたが、父が亡くなってからその場所が空いていたこともあり、自分の培ってきた技術を故郷の皆さんに提供したいと考え、2022年の開院に至りました。
—「分院長」を経験されたことも、現在の運営に活かされていますか?
はい、非常に大きな経験でした。大阪で分院長を任せていただいたことで、医療技術だけでなく、クリニックをどう運営し、どうスタッフと連携していくかというノウハウを学ぶことができました。右も左もわからない状態で始めるよりも、一歩先を見据えた準備ができたと思っています。
—開院当初、最も苦労されたエピソードを教えてください。
やはり、全くのゼロから患者様との信頼関係を築くことですね。大阪から戻ってきて、誰も私のことを知らない状態でのスタートでした。開院して数ヶ月の間は、患者様が一人も来ない日もあったんです。朝、スタッフに挨拶をして、そのまま誰とも話さずに一日が終わる。あの時の不安と厳しさは今でも忘れられません。
—患者様が「ゼロ」の日もあったのですね。そこからどのように周知を広げたのでしょうか?
ちょうどコロナワクチンの接種時期と重なっていたこともあり、まずはワクチン接種で来院してくださる方々を全力で受け入れました。内視鏡という私の専門分野だけでなく、まずは「印藤内科に行けば安心だ」と思っていただけるよう、一人ひとりに丁寧に向き合うことから始めました。
—最近では、患者様もかなり増えてきているようですね。
ありがたいことに、少しずつ口コミで広めていただけるようになりました。一度来てくださった方が「あの先生なら安心だよ」とご家族やご友人に勧めてくださったり、1〜2年経ってから再び相談に来てくださることも増えました。地道な積み重ねが、今の信頼に繋がっていると感じています。
—先生がスタッフ教育において、最も重視しているポイントは何ですか?
何よりも「接遇」です。医療技術が高いのはプロとして当然ですが、患者様がクリニックの扉を開けた時の印象、スタッフの声掛け一つで安心感は大きく変わります。特に内視鏡検査は不安を抱えて来られる方が多いので、事務も看護師も、思いやりのある言葉遣いや対応を徹底するようお願いしています。
—理想のチームを作る上で、採用に関するお悩みなどはありますか?
正直なところ、採用は今でも課題ですね。働いてみて初めてわかる相性もありますし、地方では特に良い人材と出会うのが難しい側面もあります。ただ、今残ってくれているスタッフは本当に優秀で、私の理念を理解して動いてくれるので、非常に助けられています。
—集客という面では、デジタルツールも活用されているのでしょうか?
ホームページやSNSも活用していますが、最近特に重要だと感じているのはGoogleの口コミですね。当院は非常に高い評価をいただいており、それを見て遠方から来てくださる方もいます。デジタルな評価であっても、その根底にあるのは対面での「丁寧な医療」だと思っています。
—2〜3年後、印藤内科クリニックをどのような場所にしていきたいですか?
香川県で「内視鏡検査といえば印藤内科」と言っていただける、圧倒的な信頼を得るのが目標です。胃がんや大腸がんは、早期に発見すれば確実に防げる病気です。私の専門性を活かして、一人でも多くのがんで亡くなる方を減らしたい。将来的には、志を共にする先生がいれば、さらに地域を支えるための分院展開も考えていきたいですね。
—最近導入を検討されている「医療DX」などの新しい取り組みはありますか?
WEB問診や自動精算、オンライン診療などは既に取り入れていますが、今後は生成AIを活用した議事録作成なども試していきたいですね。テクノロジーを駆使して事務作業の負担を減らし、その分、患者様と向き合う時間をより多く確保したいと考えています。
—最後に、これから開業を目指す先生や、地域の皆様にメッセージをお願いします。
開業は想像以上に大変なことも多いですが、迷ったらまずは「やってみること」が大切だと思います。仕事も遊びも、全力で取り組む。ダメだったらまた考えればいい。私はこれからも、この高松の地で、情熱を持って「がんを未然に防ぐ医療」と「全身のトータルケア」を提供し続けていきます。
Profile
院長 印藤 直彦
2001年に香川県立高松高校を卒業されました。2007年に大阪医科大学を卒業された後は、市立豊中病院や淀川キリスト教病院などの基幹病院にて、消化器内科医として数多くの内視鏡症例を経験されています。 2019年には康心会消化器内視鏡クリニック大阪福島院の院長に就任され、クリニック経営の最前線を担われました。そして2022年、故郷である香川県高松市に「印藤内科クリニック」を開院されました。内視鏡専門医としての高度な技術と、患者様一人ひとりを大切にする温かなホスピタリティを両立させ、地域医療の質の向上に日々尽力されています。