地域医療への熱い想いと新たな挑戦「天童ファミリークリニック」矢萩舜 院長インタビュー
2025.09.30
地域を支える医療と未来へのビジョン
天童ファミリークリニック
院長 矢萩 舜
山形県天童市にある「天童ファミリークリニック」の院長、矢萩先生は、自治医科大学を卒業後、山形県内の地域医療に長年尽力されてきました。その経験から、お子さんからご高齢の方まで、誰もが安心して相談できる「かかりつけ医」として、天童の地に新たな一歩を踏み出されます。地域の方々が心身ともに健康でいられるよう、全世代を対象とした幅広い診療と、訪問診療、そして予防医療にも力を入れていくという矢萩先生。開業に至るまでの経緯や、診療にかける想い、そして今後の展望について、詳しくお話を伺いました。
—まずは、医師を目指されたきっかけを教えていただけますか?
実は、医師を目指したのには特別なきっかけがあったわけではないんです。昔パイロットになりたいという夢はありましたが、視力の関係で断念しました。その後、たまたま受験して合格したのが自治医科大学でした。周囲に医療関係の家族がいたわけでもなく、本当に"たまたま"のスタートだったんです。
—そうだったのですね。そこから、開業という道を選ばれたのはなぜでしょうか?
自治医科大学出身者は、卒業後9年間は出身県の指定された地域で働く義務があるのですが、その義務年限の経験が大きく影響しています。最初の2年間の初期研修の後、私は3年目から山形県内の僻地の病院で、一人で内科医として働き始めました。そこで、地域医療の面白さに気づいたんです。 その後、県立中央病院に戻って後期研修で消化器内科の専門医資格を取得しましたが、また別の僻地の病院や診療所へ行きました。特に、卒業後8年目、9年目に勤務した大蔵村診療所は、人口3,000人ほどの村で唯一の医療機関でした。 そこでは、本当に『何でもみる』必要があったんです。予防接種から、外来診療、訪問診療、施設での準病棟業務、そして看取りまで。その地域に根差した医療が楽しかった。『これなら、将来的に開業して、自分のやりたい医療を追求できるかもしれない』と考えるようになりました。
—その大蔵村での経験が、今のクリニックの診療方針の核になっているのですね。
はい。その地域での経験から、クリニックの最大の特徴として、『年齢制限を設けずに0歳から100歳超えまで何でもみる』という方針を掲げています。小児科領域から高齢者医療、予防接種、訪問診療まで、幅広く対応できる『ファミリークリニック』として、地域の方々の健康をトータルでサポートしたいと考えています。
—数ある候補地の中で、ご自身のクリニックを開業される場所に天童市を選ばれた理由を教えていただけますか?
私はもともと隣の山形市出身ですが、6年前に自宅を天童市に建てました。天童市は現在、子育て世代が多く、子どもが非常に増えている地域です。この地で地域医療に貢献したい、そして将来的には『天童に骨を埋める』覚悟で地域に貢献したいという想いがありました。また、天童市には『ファミリークリニック』のような、全世代を対象にしたクリニックがなく、地域に求められている医療だと感じたことも大きな理由です。
—天童市の新しい医療を担っていくという強い使命感を感じますね。では、今後のクリニックのビジョンについてお聞かせください。
私は、地方での開業において、持続可能性が非常に重要だと考えています。特に山形県内で30代で継承ではなく新規開業をする医師は珍しく、ロールモデルや相談できる先輩がいない中での船出でした。情報を集めるのは大変でしたが、その中で気づいたことがあります。 今の地方の病院は、高齢の医師が多く、若手医師がストレートに入職するには厳しい環境になりつつあります。私は、かつて自分がそうであったように、自治医科大学出身で地域医療に情熱を持つ医師たちの『受け皿』になりたいと考えています。 医師が複数いれば、訪問診療にもより手厚く対応できますし、私自身も家庭での時間を大切にしながら、より質の高い医療を提供できます。そして、働くスタッフたちにとっても、休暇を取りやすく、福利厚生も充実させられる。スタッフファーストの環境づくりを徹底し、長く働いてもらえる職場にしたいと考えています。
—天童ファミリークリニックでは、患者さんがより便利に受診できるような工夫はありますか?
はい、都会で導入されている最新のシステムを積極的に取り入れています。内科のクリニックとしてはまだ珍しいですが、Web予約やWeb問診を導入し、院内での待ち時間を減らす工夫をしています。 また、特に地方の高齢者の方々にも簡単に使っていただけるように、最近発売された予約不要で紙の保険証も読み取れる無人受付システムを導入しました。これは山形県内では初導入となります。他にも、セミセルフレジやクレジットカード決済、そして公式LINEを活用した健診や内視鏡検査の自動リマインド機能など、患者さんの利便性を高めるためのIT技術を多数導入しています。
—最新の設備が充実しているのですね。最後に、今後を見据えた、矢萩先生の夢や目標をお聞かせください。
まずは、10月1日の開業を無事に迎え、目の前の診療に全力を尽くすことです。そして、天童ファミリークリニックを、地域の方々にとってなくてはならない、かかりつけ医として確立させたい。 また、私自身の経験から、若いうちから『将来を見据えた働き方』をすることが重要だと感じています。私にとって、それは『病院がなくても、どこでも同じように診療ができる消化器内科』という専門分野を選ぶことでした。若手医師には、キャリアを考える上で、将来の自分の理想の働き方を実現できるようなスキルや経験を積んでいってほしいと思っています。 そして、最終的な目標は、地域医療の担い手を育て、医療が持続的に提供できるクリニックにすることです。天童ファミリークリニックが、山形県の地域医療を支える一つの柱になれるよう、挑戦を続けていきます。
Profile
院長 矢萩 舜
天童ファミリークリニックの院長、矢萩舜先生は2015年に自治医科大学医学部を卒業され、医師としてのキャリアをスタート。卒業後は、自治医科大学の卒業生としての責務として、9年間にわたり地域医療に従事されました。山形県立中央病院での初期・後期研修を経た後、最上町立最上病院、山形県立中央病院(後期研修)、西川町立病院、そして大蔵村診療所にて、地域の中核を担う医療活動に尽力されました。特に大蔵村診療所では、地域唯一の医療機関として「何でもみる」総合診療の経験を積まれました。義務年限を終えた2024年には、やまと在宅診療所仙台北にて在宅緩和ケアを学ばれ、そして2025年に地元山形県天童市にて天童ファミリークリニックを開業されます。地域への強い想いを胸に、全世代の健康を支える「ファミリークリニック」の実現を目指す矢萩先生の、今後の活躍に期待が高まります。