Interviewインタビュー

患者様とスタッフの幸せを追求する医療--つしだ糖尿病内科・眼科クリニック院長の思い

つしだ糖尿病内科・眼科クリニック

院長 長澤 幹

つしだ糖尿病内科・眼科クリニックは、岩手県盛岡市津志田に2025年4月に開院した、糖尿病と眼科を併設する珍しいクリニックです。患者様の利便性を最優先に考えた独自の診療スタイルと、地域に根差した医療提供を目指す長澤 幹 院長の熱い思いに迫ります。大学病院での豊富な臨床・研究・教育経験を経て、「地域で最も選ばれるクリニック」を目指す長澤院長は、常に患者様との対話を重視し、スタッフの幸福度向上にも力を入れています。本インタビューでは、医師を志したきっかけから、開業に至るまでの経緯、診療におけるこだわり、そして今後のビジョンについて詳しくお伺いしました。

地域の糖尿病医療を支える、対話を重視したクリニック–つしだ糖尿病内科・眼科クリニック 長澤 幹 院長インタビュー

医師を志したきっかけと専門性への道

さっそくですが、医師になろうと思われたきっかけについてお伺いできますでしょうか?

実は、最初から強く医師を志していたわけではありません。私の父は医師ではありましたが、外科の勤務医であり、家業を継ぐ必要も無いため、当初は別の道を目指していました。いろいろな周り道をした結果、私も医学部を受験してみようかという流れで大学に入りました。ですから、お恥ずかしい話ですが「人を救いたい」とか「立派な医師になりたい」というような大きな志があったわけではないというのが正直なところです。ただ、「別に医者にならなくてもいい。」と言っていたはずの父が、医学部入学が決まった時に涙を流して喜んでくれたことは一生忘れられません。

医師になられてから、数ある診療科の中で糖尿病内科を専門とされた理由についてお聞かせいただけますか?

医師になった経緯とも少し繋がってくるのですが、私は他の先生方のように高尚な志を持って医学部に入学したわけではありません。しかしながら、強いプロフェッショナリズムを持って、仕事に臨む心構えはできておりました。自分のような人間はどのような科が向いているかと考えたときに、鮮やかに治療を完遂できる科より、できる限り普通の感覚を持って患者さんと人生を歩んでいけるような科を選びたいと考え、慢性疾患の中でも、患者さんと最も多く対話できるであろう糖尿病内科を選択しました。

糖尿病内科の中で、特に先生の得意とされている分野や、力を入れてこられた専門領域について教えていただけますか?

糖尿病内科全般が専門ですが、中でも特に力を入れてきたのは、血糖変動を見る「持続血糖測定(CGM)」という検査を活用し、個々の患者様に合わせた治療方針を立てていくことです。大学病院時代も、この分野に最も時間をかけて取り組みました。皆さんが心電図を読むような感覚でCGMを読む時代が来てほしいと思っています。

開業の決意とクリニックの理念

長く勤務医としてご活躍された後、開業という道を選ばれたのはなぜでしょうか?

大学病院では、臨床、教育、研究と多岐にわたる業務に携わっていました。教育などにも魅力を感じていましたが、日々を重ねていくうちに何よりも直接患者さんを診る臨床に、もっと時間を注ぎたいという思いが募ってきました。開業することで、より多くの患者さんと接する機会を増やし、患者さんの人生を共に歩む診療を実現したいと考えました。

患者様への思い以外に、何か開業を決意された個人的な理由があればお聞かせください。

実は、大学の同級生だった妻と一緒に働きたいという思いも大きな理由の一つです。勤務医時代は夫婦で一緒にいる時間が少なかったため、クリニックを一緒に経営することで、家族との時間を大切にしたいという気持ちもありました。

クリニックを運営される上で、長澤院長が最も大切にされている経営理念、またはポリシーは何でしょうか?

当院の理念は、患者さんだけでなく、スタッフにも幸せであってほしいというものです。「診る側も幸せでないと、意味がない」と考えています。患者さんへの質の高い医療提供はもちろんですが、スタッフが生き生きと働ける環境を整えることが、結果として患者さんの幸せにもつながると信じ、実際にこの理念を文書化して共有しています。

診療へのこだわりと患者様への思い

日々の診療において、患者様とのコミュニケーションや治療方針を立てる上で、特に大切にされていることは何でしょうか?

特に生活習慣病の診療では、対話を最も重視しています。糖尿病などは数値が悪くてもほとんど症状がないため、患者さんには「病院に行きたくない」という気持ちが潜在的にあると思っています。そのため、一方的に治療を押し付けるのではなく、「バキッと治すお医者さん」ではなく、「医者のお兄さん」のような存在として、患者さんとたくさん話し合い、共に生活を改善していくことを目指しています。

先生は薬による治療だけでなく、対話による改善も重視されているとのことですが、それはなぜでしょうか?

生活習慣病は、薬だけでなく日々の生活の改善が不可欠です。症状がない病気だからこそ、頭ごなしに指導するのではなく、対話を通じて患者さん自身の「治したい」という気持ちや、生活背景を深く理解することが重要だと考えています。患者さんとの信頼関係を築き、話し合いだけでも血糖値が良くなるような診療を目指しています。

開業されてから、特にやりがいや喜びを感じたエピソードがあれば教えてください。

遠方、県内外のかなり遠いところから、わざわざ紹介状を持って当院に通うために来てくださる患者さんがいることです。その患者さんが「まさかここ(地域クリニック)まで来てくれるとは」という思いで来てくださったことに、非常に大きなやりがいを感じました。 また、1型糖尿病の患者さんの妊娠・出産を、大学病院での連携しつつ、ぎりぎりまで当院で診ることができたのも喜びでした。以前は大学病院でないと難しかったことも、地域で実現できたことに大きな達成感を感じました。

経営者としての立場で、特に開業後から現在まででご苦労されたエピソードをお聞かせください。

最も苦労したのは、やはりスタッフの採用と定着です。スタッフの退職があり、人員補充と教育に大変な労力を費やしました。現在は落ち着いていますが、開業医にとって、経験のある事務スタッフの確保や、スタッフ同士の人間関係の構築は、最も難しく、かつ重要な課題だと痛感しています。

クリニックの優位性と今後のビジョン

糖尿病内科と眼科が併設されていることは、患者様にとってどのような大きなメリットがあるのでしょうか?

最大のメリットは患者さんの利便性です。糖尿病の患者さんは、合併症予防のために眼科受診が必須ですが、通常は別の病院に行かなければなりません。当院では内科の診察の合間に眼科も受診できるため、通院回数を減らせます。また、眼科側も眼底カメラを導入し、散瞳(目を開く処置)せずに検査が可能になったため、車で来られた患者さんもそのまま帰宅できます。「時間を大切にしたい」という患者様のニーズに応えることができます。

予約システム以外に、診療の質や効率、または患者様の利便性向上に繋がった導入機器やサービスがあれば教えてください。

通常は外部委託する生化学検査の機器を導入したことです。これにより、血液検査の結果が約30分で当日に出せるようになりました。生活習慣病は自覚症状がないため、1ヶ月前の検査結果を聞いても患者さんの実感が伴いにくいですが、当日結果を共有し、すぐに指導に反映できるのは大きな強みです。患者さんの通院回数や待ち時間の短縮にも繋がっています。

今後、長澤院長が目指されるクリニックの姿やビジョンについてお聞かせください。

今後2~3年で、この地域で「糖尿病なら、つしだ糖尿病内科・眼科クリニック」と、一番最初に選んでいただけるクリニックになることです。地域に根差したクリニックとして、患者さんの利便性を高めつつ、質の高い専門医療を提供し続けることで、揺るぎない信頼を得られるような基盤を築いていきたいと考えています。

これから開業される先生方に、経営の視点から特に重視すべきアドバイスをお願いします。

開業する場所の地域のニーズを徹底的に見極めること、そして長期的な視点で経営を考えることです。短期的な成功に惑わされず、持続可能なクリニック運営を意識することが重要です。 また、特に大学病院などで勤務経験が長い先生は、事務・経理・人事など、経験したことのない業務が非常に多くなります。そのため、経験豊富な事務スタッフを必ず採用するなど、専門分野でフォローしてくれる人材を確保することが成功の鍵になると思います。

Profile

院長 長澤 幹

長澤 幹 院長は、2005年3月に岩手医科大学医学部医学科を卒業された後、同大学の内科学講座糖尿病代謝分野で研鑽を積まれました。2010年3月には同大学院医学研究科内科学講座糖尿病代謝分野を修了。その後、かづの厚生病院消化器科での勤務を経て、岩手医科大学に戻り、内科学講座糖尿病代謝分野の助教を歴任。2018年4月からは岩手医科大学医学部内科学講座糖尿病代謝内分泌分野助教、そして2023年5月には同特任講師として、長きにわたり大学病院で臨床・教育・研究に尽力されてきました。そして2025年4月、地域医療への貢献を目指し、「つしだ糖尿病内科・眼科クリニック」(岩手県盛岡市津志田15地割50-1)を開院されました。患者様との対話と利便性を大切にし、質の高い専門医療を提供されています。

会社情報

医院名

つしだ糖尿病内科・眼科クリニック

設立

2025年