こころに寄り添い続ける医療を–こころサポートクリニック 平山 貴敏 院長インタビュー
2025.10.29
“どんな不調も、まず相談できる場所に” ── 渋谷区・港区エリアの土日祝日夜間で総合診療を目指すかかりつけ医のこだわりとは?
やさしいクリニック 広尾 白金
院長 鈴木 崇文
今回お話を伺ったのは、同院の院長であり、麻酔科医・集中治療医として長年第一線を歩んできた鈴木崇文(すずき たかふみ)先生。 急性期医療の現場で数多くの重症患者を治療してきた鈴木先生が、なぜ都市型のプライマリケアに挑戦し、渋谷区・港区エリアに根ざす医療を展開しようと考えたのか。 そこには、「病気の早期発見・早期治療を通じて、命を守るだけでなく“生活の質(QOL)を支える医療”を提供したい」という明確な理念があります。クリニック名に込めた“やさしさ”の意味、患者と真摯に向き合う診療スタイル、そして多忙な医師生活から得た気づきや哲学まで――今回はそのすべてをじっくり伺いました。
—鈴木先生が医師を志された原点について、お聞かせいただけますか?
医師という職業を意識するようになったきっかけは、大きく二つあります。一つは、母が麻酔科医だったことです。幼いころから大学病院の医局や手術室の空気を肌で感じながら育ち、白衣姿の大人たちが患者さんと向き合う姿が自然と心に焼きつきました。家にはいつも医学書や専門誌が積まれていて、ページをめくるたびに「人の体の中で何が起こっているのか」「命をどうやって守るのか」という興味が湧きました。「医療」という世界が、私にとっては特別なものというより“生活の一部”だったのかもしれません。 もう一つの原点は、幼少期に祖父をがんで亡くした経験です。小学校入学前後の頃でしたが、その出来事は幼心にも強く印象に残っています。病気の前では、家族がどれほど無力になるのか――その現実を目の当たりにして、「誰かの痛みを減らす力を持ちたい」「人の役に立てる存在になりたい」という想いが芽生えました。この二つの体験が、医師として生きることを自然な選択肢として私の中に根づかせたのだと思います。
—麻酔科医・集中治療医として経験を積まれた中で、地域医療への貢献を意識された背景を教えてください。
私が地域医療へ目を向けるようになったきっかけは、集中治療室(ICU)での日々にあります。ICUでは、命の瀬戸際にいる患者さんを24時間体制で診ています。麻酔科医や集中治療医の仕事は、心臓や呼吸だけでなく、血圧・酸素濃度・腎機能など全身の状態を俯瞰的に捉えて最適な治療方針を立てることです。一方で、その現場では「もう少し早く医療につながっていれば助けられたのでは」というケースにも多く出会いました。 たとえば、高血圧を“なんとなく放置”していた結果、大動脈解離や脳出血など命に関わる緊急事態を起こしてしまう方。糖尿病のコントロール不良から重症感染症を発症する方。そうした“防げたはずの重症化”に日々直面するたびに、「もっと早い段階で、正しい医療につなげる仕組みが必要だ」と強く感じるようになりました。 この想いが、現在の「やさしいクリニック 広尾 白金」を開業する上での大きな原動力となりました。“発見の遅れ”を減らし、軽い症状のうちに正確な診断を行い、最適な医療へ導くこと。その使命を果たすために、私は「病院の最前線から、地域の入り口へ」と立ち位置を変えました。
—集中治療室での経験は、現在の診療にどのように活かされていますか?
集中治療の現場で培ったのは、「一つの症状だけを診ない姿勢」です。人間の体はつながっています。たとえば咳ひとつ取っても、単なる風邪か、アレルギーか、睡眠時無呼吸か、時には心不全のサインであることもあります。集中治療医として、全身を俯瞰的に見ながら治療の優先順位を判断してきた経験は、地域の外来診療でもそのまま活きています。 当院では、内科・皮膚科・アレルギー科・ペインクリニック内科(疼痛診療)・睡眠時無呼吸症候群・肩こり注射など、生活の質(QOL)に直結する領域を総合的に扱っています。それぞれの症状を別々に見るのではなく、「なぜこの不調が起きているのか」「背景に何が隠れているのか」を総合的に捉え、必要に応じて専門機関と連携する。この“全人的に患者さんを診る視点”こそ、大学病院・集中治療室での経験から得た、私自身の医療の軸になっています。
— クリニック名である「やさしいクリニック 広尾 白金」には、どのような思いが込められているのでしょうか?
「やさしい」という言葉には、二つの意味を込めています。一つは、患者さんにとって“やさしい”医療を届けたいという想い。病気や体調不良を抱えている時、人は誰でも不安や孤独を感じるものです。だからこそ当院では、診察や検査の前に“安心して話せる空気づくり”を大切にしています。難しい医学用語をできるだけ使わず、わかりやすい言葉で丁寧に説明すること。「ここなら自分のことを理解してくれる」と思っていただけるような距離感で、患者さんの気持ちに寄り添う医療を心がけています。 もう一つは、働くスタッフにとって“やさしい職場”であることです。良い医療は、現場で働くチーム全員の信頼関係と笑顔から生まれます。安心して意見を言い合える雰囲気、学び合える環境、そして誰かが困っていたら自然に助け合える職場づくり。そのすべてが「患者さんに届く“やさしさ”」に直結すると考えています。医療はチームプレーです。スタッフが心から誇りを持って働ける場所であることが、結果的に最も患者さんの安心につながる――その想いが、クリニック名の“やさしい”という言葉に込められています。
— 幅広い診療を提供されているのはなぜですか?
地域の方々にとって、医療機関はもっと身近で自由な存在であるべきだと思っています。多くの人が「どの科に行けばいいのかわからない」と迷ったまま受診を先延ばしにしてしまう。その“最初の一歩”をためらう時間こそ、症状悪化や重症化の原因になります。だからこそ当院では、内科・皮膚科・アレルギー科・ペインクリニック内科(疼痛診療)・睡眠時無呼吸症候群など、幅広いプライマリケアを一つのクリニックの中で包括的に提供しています。「発熱」「咳」「喉の痛み」「肌荒れ」「腰痛」「いびき」「眠気」など、一見バラバラに見える症状も、実は体全体のバランスや生活習慣の乱れが関係していることがあります。そこで症状を部分的に切り取るのではなく、全身を総合的に評価する“全人的診療”を重視しているのです。 「やさしいクリニック 広尾 白金」は、“〇〇科”の枠を超えた地域の総合診療拠点”として、患者さんの不調の「入り口」から「解決」までを一貫して支えることを使命としています。 “ファーストタッチのクリニック”としての役割を果たし、必要に応じて専門病院や大学病院へスムーズに橋渡しする―― そのような医療の中継点が地域にあることで、発見の遅れを防ぎ、命を守ることができると考えています。
—渋谷区・港区・恵比寿・広尾・白金・麻布・白金台のエリアで、土日や祝日、夜間も診療されているのは、地域のニーズを踏まえた取り組みなのでしょうか?
はい。私たちは「困ったとき、すぐ相談できる場所でありたい」という思いで、平日だけでなく土曜日・日曜日・祝日や夜間も診療を行っています。また、年末年始・大晦日・元日も診療します。これは、単に便利だからではなく、明確な社会的ニーズに応えるための体制です。 たとえば、「平日は仕事で病院に行けない」「子どもが夜に熱を出した」「急に肌が荒れてきた」など、大きな病院の救急に行くほどではないけれども、今すぐ診てほしいという方は非常に多い。しかし救急外来は重症患者を優先するため、軽症の方が長時間待たされるケースが少なくありません。結果として、患者さんも医療従事者も疲弊してしまう構造があります。 そこで当院は、その“中間の医療ニーズ”を受け止める役割を担っています。軽症でも安心して受診できる環境を整え、適切なタイミングでの受診を促す。これにより、地域の医療機関全体の負担を軽減し、同時に患者さんが「体調不良を放置しない文化」を根づかせることにもつながっています。 東京都立広尾病院、日本赤十字社医療センター、北里大学北里研究所病院、東京大学医科学研究所附属病院、NTT東関東病院などの高度医療機関と連携を取りながら、“やさしさを軸にした医療”を届けるために日々診療を続けています。
—特にやりがいや喜びを感じる瞬間はどのような時でしょうか?
一番のやりがいは、やはり患者さんが良くなって笑顔で帰られる瞬間です。症状が改善し、「先生、本当にありがとう」と言っていただける時、それまでの努力がすべて報われるような気持ちになります。特に印象的なのは、他院で治療を続けてもなかなか改善が見られなかった方が、当院で方針を変えたことで症状が落ち着いていくケースです。「もっと早く来ればよかった」と言っていただけることも多く、地域に根ざした診療の価値を実感します。 また、当院が力を入れている疼痛診療(ペインクリニック)では、ブロック注射後に「嘘みたいに楽になった」と笑顔を見せてくださる患者さんもいます。その表情を見た瞬間、医師としてこの道を選んで良かったと心から思います。
— クリニックの運営において、導入して良かったシステムやサービスはありますか?
当院では可能な限りシステム導入を進めているのですが、最も導入効果を感じているのは、LINEを活用した予約システムとオンライン診療が患者様には好評です。多くの方にとってLINEは日常的な連絡手段であり「少し相談したい」という時にも抵抗なく利用していただいています。予約・問診・診療・決済をスムーズに一気通貫で行えるこの仕組みは、患者さんの利便性だけでなく、スタッフの業務効率化にも貢献しています。
— 今後2〜3年で目指すクリニックのビジョンをお聞かせください。
これからも「やさしいクリニック 広尾 白金」は、患者さんもスタッフも笑顔でいられるクリニックであり続けたいと考えています。患者さんにとっては、単に病気が治る場所ではなく、「来てよかった」「気持ちが軽くなった」と感じていただけるような場所に。体の不調が整うだけでなく、心が落ち着く、前を向ける――そんな“心身の回復”まで支えられる医療を目指しています。 そして、スタッフにとっても、ここで働くことが誇りであり喜びであるように。医療はチームで成り立つものです。それぞれが自分の役割を理解し、尊重し合える関係性があってこそ、“やさしい医療”が患者さんへ届くのだと思います。そのために、長く働ける安心感と、成長を感じられる職場づくりを続けていきたいと考えています。
— 最後に鈴木先生にとっての「夢」とは何でしょうか?
地域医療の発展に貢献することはもちろんですが、もう一つは、これから開業を目指す医師を支援することです。私自身、開業までの道のりで多くの壁に直面しました。「何から始めればいいのか」「どんな設備を選ぶべきか」「どういう人を採用するか」―― そのすべてを手探りで進めるのは、現場で診療を続けながらでは容易ではありません。 同じ志を持つドクターたちが、同じ苦労を繰り返さなくて済むように、自分の経験やノウハウを共有し、少しでもスムーズに理想の医療を形にできるよう支援したい。「時間をかけて得た“最適解”を、これから挑戦する医師に最短で届けたい」と考えています。もしお力添えできることがあれば、当院ホームページからお気軽にご連絡をいただけると幸いです。
Profile
院長 鈴木 崇文
東京都の広尾・白金台・麻布・恵比寿のちょうど中間に位置する「やさしいクリニック 広尾 白金」は、地域の方々が体調の不安を感じたときに、「まず相談できる病院」を目指して誕生しました。 内科・皮膚科・アレルギー科・ペインクリニック内科(疼痛診療)・睡眠時無呼吸症候群(SAS)など、複数の診療領域を総合的に扱いながら、患者一人ひとりの全身状態を丁寧に評価し、最適な診療を総合的に行うことに強みを持つクリニックです。 近隣には恵比寿ガーデンプレイスや広尾商店街、白金台プラチナ通りなど、多様なライフスタイルを持つ人々が暮らしています。 「仕事や育児に忙しく、体調不良を後回しにしてしまう方」「どの診療科に行けばよいか分からない方」――そんな患者さんが“気軽に立ち寄れて、全身をまるごと診てもらえる”医療の拠点として、地域住民やビジネスパーソンからも厚い信頼を得ています。