Interviewインタビュー

日本初の乳房再建専門クリニックとして、患者様と向き合い続ける。医療法人社団ブレストサージャリークリニック・岩平佳子院長が語る「メスを握る覚悟」

医療法人社団ブレストサージャリークリニック

院長 岩平佳子

乳がんによって失われた乳房を取り戻す「乳房再建」。今でこそ多くの病院で選択できるようになりましたが、かつては専門の治療を受けられる環境は極めて限られていました。そんな中、2003年に日本初となる乳房再建専門のクリニックとして開設されたのが、東京都港区にある「医療法人社団ブレストサージャリークリニック」です。 今回は、同クリニックの院長を務める岩平佳子(いわひら よしこ)先生にインタビューを実施しました。大学病院でのキャリアを経て、なぜ専門クリニックの開業に踏み切ったのか。そして、日々患者さまと向き合う中で大切にされているポリシーや、これから開業医を目指す若手医師へのメッセージまで、余すことなくお話を伺いました。

患者様の人生を変える選択肢を。ブレストサージャリークリニック岩平佳子院長が若手医師に伝えたい外科医の重責

医師としての原点と、日々の診療にかける想い

先生が医師を志したきっかけからお聞かせいただけますでしょうか。

親が医師だったことが一番大きなきっかけですね。幼い頃から身近で医療の現場を見て育ちましたので、自然と「人を助ける」という仕事の尊さを実感するようになり、自分も同じ道へ進みたいと思うようになりました。クリニックの開業前に上梓した『ブラック・ジャックになりたくて』という本にも、そのあたりの原点となる思いを詳しく書いています。

患者様の「望み」を叶えるために、外科医として最も重要視していることは何ですか?

私は外科医ですので、患者さまの想いを最終的に「手術のクオリティ」という形で結びつけていくことが何より大事だと考えています。技術を磨き、満足していただける結果を出すことが、外科医としての最大の誠意です。

診察の限られた時間の中で、患者様の本音を吸い上げるための工夫などはされていますか?

患者様によっては、医師である私には少し話しにくいと感じるご要望をお持ちのこともあります。そういった場合は、信頼できる看護師を通じて丁寧に意見を吸い上げてもらうなど、スタッフ全員で連携して患者さまの理想の形を追求しています。

日本初の専門クリニック開設と、独立が生んだ強み

大学病院で長く勤められた後、2003年にブレストサージャリークリニックを開設されました。開業に踏み切った経緯について教えてください。

大学病院には約20年勤め、准教授(当時の助教授)も務めさせていただきました。しかし、役職が上がるにつれて診療や手術以外の業務が増えてしまったんです。私はあくまで「乳がん患者さまの乳房を作ること」に専念したかった。ちょうどその頃、ビジネスマンである夫から「それなら自分で専門のクリニックをやればいいじゃないか」と言われ、当時はまだ日本になかった乳房再建専門のクリニックを立ち上げることにしました。

国内初の試みということで、当時は周囲の反対や不安もあったのではないですか?

教授からも心配されましたし、当時はすべて自費診療でしたから「本当に患者様が来てくれるのか」という不安はありました。ですが、それ以上に「手術がしたい、患者さまの胸を作りたい」という情熱の方が勝っていましたね。結果として、その挑戦を朝日新聞などのメディアにも大きく取り上げていただき、全国から多くの患者様が足を運んでくださるようになりました。

専門クリニックだからこそ実現できた、患者様にとっての最大のメリットは何でしょうか。

当クリニックでは、初診から外来、手術まですべて同じ看護師が担当する一貫体制を整えています。これによって効率的な診療が可能になり、患者さまに負担の少ない「日帰り手術」が実現しました。また、いつも同じメンバーがチームとして固定されているため、患者様にとっても大きな安心感に繋がっていると思います。

保険適用による転換期と、守り抜いたクオリティ

クリニックを開業されてから、現在までに最も苦労されたエピソードを教えてください。

大きな転換期は、約10年前に乳房再建が「保険適用」になったときです。患者様の経済的負担が減ったのは非常に良いことですが、クオリティを問わなければ全国どこの病院でも受けられるようになったため、当クリニックへ通う患者様の数が一時期ガクンと減ってしまいました。

保険適用化によって、クリニックに相談に来られる患者様の層や内容にも変化はありましたか?

はい、他院で手術を受けたものの、満足のいく結果にならなかった方の「修正手術」を引き受けるケースが目立って増えるようになりました。変形してしまった胸を綺麗に直すのは、一からの再建よりも難易度が高く、当時は対応に苦慮しました。

最も苦労した時期を経て、手術のやりがいや喜びを改めて感じる瞬間はどんなときですか?

手術によって綺麗な胸が仕上がったとき、患者様が涙を流して喜んでくださる姿を見る瞬間です。また、乳腺外科の先生から「本当に上手だね」と褒められた患者様が、誇らしげにその報告を私に伝えてくださるときも、この上ない喜びを感じます。

医療法人を率いるポリシーと、次世代へのメッセージ

岩平先生が医師として、またトップとして最も大切にされている「ポリシー」を教えてください。

「真摯に、謙虚に」この2つだけです。一貫してこの姿勢を崩さずにいることが、患者様に対しても、一緒に働くスタッフに対しても一番大切なことだと考えています。

これから開業医を目指す先生や、手術の専門性を極めようとしている若い医師に向けてアドバイスをお願いします。

最近は「楽に稼げるから」という理由で、自由診療の美容医療などへ進む若い医師が増えているように感じます。しかし本来、外科医というのは「他人の体に傷をつけても罰せられない唯一の職業」です。それだけの重い責任を背負っている以上、患者様に対して休みも夜中も関係ないという世界。その覚悟を持って臨んでほしいですね。

最後に、先生からこれだけは読者に伝えておきたい、というメッセージはありますでしょうか。

乳がんで胸を失ってしまった患者様に対して、「乳房再建という選択肢がある」ということを、もっと多くの方に知っていただきたいのです。 胸を取り戻すことは、単に見た目をきれいにすることだけではなく、生活の質を高め、その後の人生を前を向いて生きていくために、本当に大きな力になります。もし皆さんの周りで、胸のことで悩まれている方がいらっしゃったら、治療法があるというお話をぜひ伝えてあげてください。それが私の一番の願いです。

Profile

院長 岩平佳子

医療法人社団ブレストサージャリークリニック院長。 1984年東邦大学医学部卒業後、同大学付属大森病院第2外科にて研修を開始。1986年に慶應義塾大学医学部形成外科学教室の研究生となり、翌年より東邦大学医学部形成外科学講座にて助手、講師を歴任。1993年には米国マイアミ大学およびエモリー大学の形成外科へ留学し、最先端の乳房再建技術を学ぶ。帰国後、1996年に東邦大学医学部形成外科学講座の助教授に就任。大学病院での豊富な執刀経験を経て、2003年に日本初となる乳房再建専門の「ブレストサージャリークリニック」を開設。常に患者さまに寄り添い、真摯かつ謙虚な姿勢で質の高い乳房再建手術を提供し続けている。

会社情報

医院名

医療法人社団ブレストサージャリークリニック

設立

2003年