医師を志した原点から、地域に根差すクリニック開業までの歩み
2025.08.01
患者様の生活と人権を最優先に。まゆ こころのクリニック 竹内真弓院長が目指す地域に根ざした精神科医療
まゆ こころのクリニック
院長 竹内 真弓
地域の中で「こころの不調」を感じたとき、誰もが安心して相談できる場所を目指して東京都渋谷区幡ヶ谷に開院した「まゆ こころのクリニック」。院長を務める竹内真弓先生にお話を伺いました。竹内真弓先生は、永年にわたり総合病院や保健福祉センター、地域医療の最前線で患者様の精神保健相談や診療に深く携わってこられました。インタビューでは、竹内真弓先生が精神科医を志した原点から、診療において最も大切にしている「人権」への思い、そして「まゆ こころのクリニック」が描く地域医療の未来像について、じっくりと語っていただきました。
—まず始めに、竹内先生が精神科医を志したきっかけについて教えていただけますか?
幼少期に容姿をからかわれた経験があり、それ以来「人権」や「人の心」について深く考えるようになりました。そうした思いを持ち続ける中で、小学校に上がる頃には自然と「将来は精神科医になりたい」と強い意志を持つようになっていましたね。
—幼少期からの強い想いがあったのですね。これまで多様な医療現場を経験された中で、開院を決意された背景にはどのような経緯があったのでしょうか?
直前に勤務していた総合病院の精神科での経験が大きなきっかけです。精神科の外来診療は医師一人だけで成り立つものではなく、看護師や事務スタッフなどのサポートや患者様に対する深い理解があってこそ質の高い医療が提供できます。しかし現場の環境変化に伴い、スタッフの頻繁な異動やノウハウの喪失が起こり、納得のいく診療を維持することが難しくなってしまいました。
—現場の課題に真摯に向き合われた結果だったのですね。
はい。このままでは自分自身も疲弊してしまい、患者様に十分な医療を届けられなくなると感じました。患者様としっかり向き合える環境を守るためには、自身のクリニックを開院するしかないと決意したのです。
—竹内先生が日々診療を行う上で、最も意識されている軸や大切にしている考えは何でしょうか?
一貫したキーワードは「人権」です。私がこれまで関わってきた医療機関は、患者様の権利や生活を非常に重視する風土がありました。単に短時間の診察でお薬を処方して終わりにするのではなく、患者様一人ひとりの「実際の生活」をしっかりと見据えた診療を行うことを何よりも心掛けています。
—実際の診察では、どのような点に時間をかけていらっしゃいますか?
初診の際には約1時間かけて丁寧にお話をお伺いするようにしています。お困りごとの背景にある生活環境や歴史も含めてじっくりお聞きすることで、患者様との間に確かな信頼関係を築いていきます。
—初診にそれだけの時間をかけてもらえるのは、患者様にとっても安心ですね。
患者様から「こんなにしっかり話を聞いてもらえたのは初めてです」と言っていただけることも多く、対話を重ねることの大切さを日々実感しています。
—クリニックを開院されてからこれまでの間で、ご苦労されたエピソードなどはありますか?
開院して最初の数ヶ月は、本当に予約の電話が掛かってこなくて不安になりましたね。当院の存在を地域の方々に知っていただくための周知にはとても苦労しました。
—その状況はどのように乗り越えていかれたのでしょうか?
InstagramなどのSNSでの発信をコツコツ続けたり、口コミなどを通して徐々に知っていただけるようになり、今では予約のお電話をいただけるようになりました。
—SNSも活用されているのですね。今後「まゆ こころのクリニック」をどのような場所にしていきたいか、ビジョンをお聞かせください。
渋谷区や地域の精神保健福祉センター、地域包括支援センター、訪問看護ステーション、福祉機関など、多職種・他機関と深く連携できる拠点として根付かせていきたいです。症状が改善するだけでなく、安心できるようなサポートを目指しています。
—診療ではお薬以外のアプローチも取り入れられているのでしょうか?
はい。当院ではお薬による治療だけでなく、栄養状態からこころの不調にアプローチする「栄養精神医学」や、芸術療法などもご紹介しています。精神疾患は単に心理的な問題だけではなく、日々の食事や生活環境など多様な要因が影響し合っているためです。
—患者様への温かいご診療姿勢が伝わってきます。それでは受診を迷われている方々への一言もいただけますか?
精神科や心療内科と聞くと敷居の高さを感じるかもしれませんが、「こんな小さなことでも相談していいのかな」と思うようなことでも構いません。どうぞ気軽な気持ちでご相談に来てください。
—最後に、竹内先生と同じようにこれから開業医を目指す先生方や、若い医療者の方へ向けたメッセージをお願いいたします。
現在、医療を取り巻く環境には厳しい面もありますが、医療の多様性は確実に広がっています。誠実な思いと独自のアイデア次第で、しっかりとやりがいを持てる医療は実現できます。これから開業を目指す先生方はもちろん、お若い世代の方々にも「医療者になることや自分らしい診療を行うこと」を決して諦めないでほしいですね。志を持った熱い発信や取り組みが、これからの医療をより良く変えていくと信じています。
Profile
院長 竹内 真弓
初期スーパーローテート修了後、みさと協立病院精神科研修を経て、総合病院にてリエゾン診療を担当。元東京都多摩総合精神保健福祉センター勤務、元代々木病院精神神経科科長。保健所の精神保健相談や症例スーパーバイズなど、地域精神医療の現場でも豊富な経験を積む。長年の臨床経験を生かし、患者様一人ひとりの「人権」と「生活」に寄り添う医療を提供するため、東京都渋谷区に「まゆ こころのクリニック」を開院。