Interviewインタビュー

ささがわ女性クリニック院長・笹川 寿之 先生が語る、医師としての原点とこれからの地域医療

ささがわ女性クリニック

院長 笹川 寿之 

石川県金沢市荒屋に新たに開院した「ささがわ女性クリニック」。長年にわたり大学病院や研究機関の最前線で産婦人科医療の発展に尽力してきた笹川 寿之 院長が、満を持して地域医療の現場に立ちました。最先端の研究や役職を経験してきた笹川先生が、なぜ今、クリニックを開院することを決意したのか。そして、先生が理想とする「医療のあり方」とは何なのか。今回は笹川 寿之 先生に、医師を志した少年時代の原点から、これからのクリニック経営、切なる地域医療への想いまでをじっくりとお伺いしました。

「患者目線」の医療で地域に貢献する。大学教授としての研究を経て、今、新たな一歩へ。

医師の原点と開業への決意

はじめに、先生が医師を志した最初のきっかけからお教えいただけますか。

医者を目指した原点というと、実は子供の頃の少し不思議なエピソードがあるんです。私の実家には、姓名判断などで出入りされていた占い師のような方がおられました。男三人兄弟なのですが、その方が私の名前がつく時に「お兄さんはこうなる、弟はこうなる、そしてこの子は医者になる」と予言されたみたいなんです。子供心にそれをずっと聞いて育った、というのが最初の背景にありますね。

ご家族から強制されたわけではなく、自然と意識の中にあったのですね。その後、さらに医師への想いが強くなった出来事はありますか。

小学校の頃だったと思いますが、黒澤明監督の『赤ひげ』という映画を観に行ったんです。山本周五郎原作の、江戸時代の小石川養生所を舞台にした医師の物語ですが、それを観て「医者というのはなんと素晴らしい仕事なんだろう」と心から感動しました。「将来はあのような赤ひげ先生のような医者になりたい」と思ったことが、私にとっての本当の原点であり、医療への強い憧れの始まりです。

その後、長年大学病院や研究の最前線で教授職まで務めてこられましたが、なぜこのタイミングで開業を決められたのでしょうか。

私はこれまで40年ほど大学病院に籍を置き、研究や教育、最前線の高度医療に携わってきました。一時は開業ということは頭にない時期もあったのですが、大学の主任教授を退任した後に、これまでの研究成果や特殊な治療・知見をもっと広く一般の患者さんに還元したい、極めたいという気持ちが湧いてきたんです。そんな時に、たまたま先輩の先生がクリニックを辞められるというお話を伺い、この場所を引き継ぐ形で2026年4月に開院することを決意しました。

初めてのクリニック経営と理想の環境づくり

大学という大きな組織から、一転して「経営者」という立場になられたわけですが、どのような心境の変化がありましたか。

大学にいた時は、秘書や助手、組織のシステムがありましたから、ある意味では自分の仕事に集中していれば勝手に回っていくところがありました。しかし、開業して経営者になると、資金繰りから内装業者の選定、銀行とのやり取りまで、すべてが自分の責任になります。そういう意味では露骨に責任の重さを感じますし、自分の年齢を考えますと、将来いつまでできるかという不安はあります。

開業にあたって、スタッフの採用などの面はいかがでしたか。

スタッフの人材採用に関しては、周りの専門家の方々にもアドバイスをいただきながらチームを作って進めました。基本的にはハローワークに求人を出した形ですが、非常に幸いなことに、優秀な看護師や事務員が来てくれましてね。みんなベテランの方ばかりで、私自身もとても助けられていますし、今のところは問題なく順調に進んでいます。

看護師や事務員の皆さんが働きやすい環境づくりとして、意識されていることはありますか。

大したことではありませんが、スタッフがしっかりとリフレッシュできるよう、専用の休憩場所や台所スペースを作りました。お水や紅茶、コーヒーなどは自由に十分に飲めるように用意しています。クリニックには小さな庭もあるので、将来的にはスタッフの家族も集めて、みんなでバーベキューパーティーでもできたらいいな、なんて考えています。スタッフが笑顔でいられることは、患者さんへの良い医療にも繋がると信じています。

専門領域の強みと医療のデジタル化

先生の専門領域や、このクリニックならではの強みについて教えてください。

私の専門は産婦人科、特に婦人科です。大学時代から子宮頸がんなどの「婦人科腫瘍」の治療や、その手前の段階を見つけるための子宮頸がん検診などの「細胞診」、そして「性感染症」の診断・治療の専門医として長年やってきました。当院では、そうした専門的な視点から、質の高い確かな診断と治療を提供できることが強みです。

採用の際、看護師の方の「技能」や「これまでの経歴」を重視されたとお聞きしましたが、そこにはどのような理由があるのでしょうか。

いくらベテランの看護師さんであっても、私の専門領域(婦人科腫瘍や細胞診など)の経験が最初から豊富にあるわけではありません。だからこそ、まずは「これまでちゃんとした病院で長く勤めてきたか」という基本の技能や人間性を見ました。その上で、私の専門的な医療の進め方や補助については、今、現場で一つひとつ個別に伝えていくようにしています。

クリニックの診療をスムーズにするために、システム面などで新しく取り入れられた工夫はありますか。

初期投資の費用はかかりましたが、クラウド型の電子カルテシステムを導入しました。当院では、私が診察をしながら患者さんの話をしっかり聞く横で、事務員や看護師がカルテ入力をサポートしてくれる連携システムをとっています。これによって、私自身が「患者さんの目を見て話をじっくり聞くこと」に100%集中できる環境が整いました。このシステムは本当に取り入れて良かったと感じています。

地域医療への貢献と未来へのビジョン

開院されて数ヶ月が経ちましたが、これからのクリニックの直近の目標についてお聞かせください。

開院したばかりで、まだお薬代などの収入が入ってくるタイミングのズレもあり、経営的な不安が無いと言えば嘘になりますが、まずはしっかりと軌道に乗せたいですね。そして少し先の話としては、収益をさらに新しい医療機械の導入へと回し、より精度の高い医療を患者さんに提供していくことが、最初の数年間の目標です。

笹川先生がこれからの医療人として抱いている、一番大きな「夢」は何でしょうか。

私はやはり元々が研究者ですから、ただ目の前の診療をするだけでなく、自分がこれまで培ってきた知見や、いま当院で行っている日々の治療の成果を、学会で発表したり論文として形にしていきたいと思っています。それが認められて、さらに世の中の医療の発展に繋がっていくこと、そして同時に、この地域の医療にしっかりと貢献できること。この両方を達成していくことが私の夢です。

最後に、これから開業を目指す若い医師の方々や、地域の患者さんへ向けて、メッセージをお願いします。

若い先生方には、お金儲けのためだけでなく、確かな技術を磨き、ちゃんとした理念を持って開業してほしいですね。日本の医療は大病院だけでなく、我々のような開業医が一人ひとりを丁寧に診ることで支えられていると考えています。私のスタンスは「押し付けない医療」です。「こうしなさい」というような言い方はできるだけ避けています。医者は神様ではありませんから、患者さんの話をよく聞き、治るためのお手伝いをする。謙虚になることで、逆に患者さんから教えられることもでてきます。これからもその「患者さん目線」を何より大切に、金沢の地域医療に貢献してまいります。

Profile

院長 笹川 寿之 

金沢大学医学部卒業。医学博士号取得。大阪大学医学部産科学婦人科学、同大学微生物病研究所にてHPV(ヒトパピローマウイルス)による発がんモデルの研究に従事。日本産科婦人科学専門医、日本臨床細胞学専門医、日本女性医学専門医、日本性感染症学認定医。2023年まで金沢医科大学産科婦人科学主任教授を務め、現在は同大学の客員教授も兼任。2026年4月、これまでの豊富な臨床・研究経験を地域に還元すべく、石川県金沢市に「ささがわ女性クリニック」を開院。専門領域である婦人科腫瘍の早期発見・治療や、性感染症、細胞診の専門知識を活かし、一人ひとりの患者に寄り添う医療を提供している。

会社情報

医院名

ささがわ女性クリニック

設立

2026年